28 僕等(ぼくら)の
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―大和君の戦闘後―
[大和君とハロを見送っての感慨に浸る間もなく、柊木君から告げられた>>0のは、事情を何も知らない私にとってはどうにも不可解だった。]
呼ばれてない…けど、呼ばれたって。 柊木君が?
[柊木君は何か色々な事を胸の内に考えていそうで>>15、きっとやりたい事があるのかなと思って、その日私からは声をかけずに解散した*]
(16) 2023/08/19(Sat) 01時半頃
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[私はもう少し生きる時間が増えたらしい。 だからといって、先か後かの違いでしかない。 どうせ死ぬとわかっていくなら後に残っていくほど辛いのだろうか。 天道君はどんな気持ちだろう。大和君がいなくなって後、部室には来ているだろうか。
乾君は… 多分私から彼に逢いに行くことはない。 というより、彼はもう今それどころじゃないだろうし。]
(17) 2023/08/19(Sat) 01時半頃
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[校舎の被害はまたも大きくて、学校はまたしばらく休講になりがちで、私は、加賀先生にはなかなか会えなかったかもしれないけれど。 ネクタイと校章をつけたままでなら、機会を見つけて会う事もしばしばあったと思う。
ただ、学生ではない私として会うのは、本当に限界になった時。 そうとだけは決めていた。 だから、学校ではあくまでも今まで通りという感じで。 学校以外の場で顔を合わせる事があればいいな、なんて思う事がないでもなかったけれどね。
見知った人達が少しずついなくなり、残った生徒も次の被害を恐れて、次々と転校…というより疎開し始めていたかもしれない。 私はと言えば、少し違う事をしていた。]
(18) 2023/08/19(Sat) 01時半頃
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―幕間―
ねえ、ハロ。もし暇なら、 相談したい事があるんだけれど。
[大和君がいなくなったら、ハロは少しは手が空いたりするのだろうか。そんな風に、時間がありそうな時を縫って尋ねてみる。]
今回は戦いの仕組みとかじゃなくて…もっと簡単な話。 たとえば、アストロの全長とか、 腕、肘から先、手のひらの長さ… そのぐらいで十分だけど、把握しておきたいの。 戦闘が終わるとすぐに消えちゃうし、 試しに動かすわけにもいかないから、 何かいい方法ないかなって。 最悪、ただ出してさえくれたら私の方で 凡その値だけでも出せるとは思うんだけど… どうかな?それともハロが把握してたりする?
[最後のは難しいと思いつつも、とにかく聞いてみた*]
(19) 2023/08/19(Sat) 01時半頃
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― 幕間>>19 ―
んっ? 大丈夫だよ。 何も……頼まれてないしね。
[少し前まで、色々な頼み事をしてきた人の事を思うと、 少し言葉が詰まってしまったけれど。]
全長は、500m位、って言ってた人が居たかな? 腕の長さも、同じ位? 多分。 でも大き過ぎて、私は、具体的な長さは分からない。
見たかったら、出してあげるよ。 でも、出したらみんな驚くよね。 軍の人には連絡しておいて、 海に出す、とかがいいのかな?
[どう思う?って、本郷さんに意見を聞いてみた。*]
(20) 2023/08/19(Sat) 02時半頃
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心の中って、普通は見えないしわからない。 俺は割と単純だし、言ってることが大体全部答えだし本当だし正解だけど。 ちょっとだけ補足しとく。
自慢にもならないけど、死に掛けた回数ならこの中の誰より多い自信があるんだ。俺。 両親から貰ったものだし、あんまりこういう言い方したくないけど……生まれ持った俺の心臓は、わかりやすく言えば欠陥品だった。 止まり掛けた回数は、記憶にあるものだけを数えても両手両足を超える。実際止まったのは片手くらい。 今はもうずっと止まってるから、“回数”って表現するのも変な話だけどな。
死に掛けた回数がバカみたいに多いから、死にたくないとは思わなかった。 ……って言うか、人が死ぬ条件が“心臓が止まること”なら、俺は四年前にもう死んでる。 そして、生きてるのは父さんだ。そう考えてた。 父さんの心臓は、父さんの身体が無くなった今も、ずっと休まずに動き続けてるから。
俺の中で。
だから、俺は絶対に死ぬわけにいかなかったんだ。 死にたくないだとか、死ぬのが怖いだとかは思えなくても。 この身体が死ぬってことは、俺に今の人生をくれた父さんを死なせてしまうということだから。
(21) 2023/08/19(Sat) 02時半頃
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俺の人生は、何もかも全部父さんから貰ったものだ。 父さんが居なければ、俺は病院から出る事無く一生を終えるはずだった。 友達の誰とも、出会うことさえなく終わってた。 だから俺は、父さんと共に生きて、父さんを少しでも喜ばせたい。 母さんはもちろん、それ以外の人を一人でも多く幸せにしたい。笑顔で居てもらいたい。 父さんが後悔しないような、父さんが誇れるような生き方をしたい。
……そう思ってたのに俺、契約>>1:24>>1:25しちゃったんだ。 俺が先頭に立って契約なんてしなければ、誰も死なずに済んだのに。 ごめん、みんな。ごめん、父さん。 どれだけ謝ったって>>1:477>>1:478、きっと足りない。
とっくに死んでた俺が、みんなのこと殺しちまった。 カガセンに言われる>>3:@10まで、俺はずっとそうやって自分のこと責めてたんだ。
(22) 2023/08/19(Sat) 02時半頃
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まあ、俺の椅子(てかベッド)もあったの確認してからは、俺も生きてたのか〜ってなったけどな。 まだうちに在る父さんの椅子を、俺が見間違えるはずない。あれ特注らしいし。 ベッドの方が一般的な物だったから、最初に聞いて>>2:348誰か名乗り出ないか待った>>2:365んだ。 でも誰も名乗り出なくて、ベッドは間違いなく俺の椅子>>2:436だった。
俺も生きてたってなると、パイロットの数が合わない>>2:#2>>2:437。 だから、父さんの椅子に今座ってるやつは契約してないってこと、俺は知ってる>>3:28。 俺が死んだら、多分バレるってこともわかってる>>3:29。 それでも、文字通り棺桶まで秘密持ってこうとしてるのは────多分、俺のエゴだ。
(23) 2023/08/19(Sat) 02時半頃
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そのこと自体は悩みの種だけど、俺と父さんが二人とも生きてるんだって知れたのは、よかったって思ってる>>3:133 ずっと父さんと生きて来たってのは、俺の妄想でも何でもなかった。 時々父さんに話し掛けてた>>1:253>>3:118のも、多分全部聞いてくれてる。
カガセンの言ってた通り>>@39、俺はいつも父さんが力を貸してくれてる気がしてて。 だから、ちょいなんかあったりしても、割とすぐ立ち直れるんだ。 多分、すごいファザコンってやつ。
しょうがないよな。父さんが全部を俺にくれたんだから。 父さんが居なかったら、ケイやみんなに会うことも、世界がこんなに綺麗だって知ることも、なかったんだから。*
(24) 2023/08/19(Sat) 02時半頃
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─大和命戦のあった日・柊木からのLINE─
💬>>15 ん。 僕もちょっと柊木に聞きたいことあったから、丁度いい。 そうだな……。内容的に会って話したい。
部活のない日の天文部とかでもいいけど、人に聞かれるリスクあるし他のとこでもいいよ。誰もいないから僕の家でも。
[大和戦の直後、>>0柊木は妙なことを言っていた。
──『呼ばれてないけど、次は俺。』
普通なら首を捻る内容だけど、僕は何となく、柊木の番が来たら、そんな言い回しをしてくるかもしれない、とある程度の予測を立てていた。]**
(25) 2023/08/19(Sat) 02時半頃
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公安部 カガは、メモを貼った。
2023/08/19(Sat) 03時頃
公安部 カガは、メモを貼った。
2023/08/19(Sat) 03時頃
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─大和命戦のあった日 縁士へのLINE─
[返信を確認すると、康生はすぐにスマホへと指を走らせた。]
『んじゃ、縁士んち行っていいか?』 『うちもダメってくらい、人に聞かれたくない話だからさ』 『最寄り駅、どこ? そこで待ち合わせようぜ。明日でいいか?』 『時間はそっちに合わせる』
[康生の母親は、絶対にこの話を聞かれてはいけない人物の一人だろう。彼女にとっては、息子と夫を同時に喪うという事に他ならないのだから。]
[スタンプも何も無い簡素な文面は、随分と康生らしくはなかったが。これから彼と話す内容を考えれば、無理も無い話ではあった。]
(26) 2023/08/19(Sat) 03時頃
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─大和命戦翌日 縁士の家─
[その翌日、康生は天道縁士と待ち合わせをし、彼の家を訪れていた。個包装の菓子が入った袋を手土産代わりにして。康生は、彼の家庭の事情をよく知らない。彼もまた、そうだろうが。「お邪魔します」等のお決まりのやり取りの後、康生は口を開いた。]
……縁士んちって、今誰も居ねーの? や、話に入る前に確認はしとこうと思って。 俺は、母さんに聞かれたくなかったりするからさ。この話。
[確認が取れれば、康生はまずLINEの内容>>25について尋ねた。]
先に、縁士が俺に聞きたいことって何か、聞いていいか?*
(27) 2023/08/19(Sat) 03時頃
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ーーコックピットーー
[それは、とても奇妙だった。 それは、とても遠く響いた。
そして、愉しかった恋人ごっこの終わりを告げていた。]>>0
(28) 2023/08/19(Sat) 07時頃
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――珊瑚さん――
[珊瑚と一緒に居るとすごく温かくなれる。 心も身体も幸せに包まれているような、そんな感覚。 出来る限りの時間を一緒にいて、それでも足りなくてもっとって願える人。
>>+7花火の日の帰り道。 初めて見る空に昇る火の花に驚いて興奮していた大和は楽しそうに珊瑚と語りながら歩いていた。 隣を歩く珊瑚を見つめているとこの先もずっとこうしていたいと願っていて、少し前から気づいていたのはこれが恋とか愛だと言う感情だと言うことだった。 相手の幸せを想うことが愛ならば、それは確実に愛と言えた。
告白は大和からした。 立ち止まって、手を引いて。 驚いた珊瑚に『ずっと一緒に居て欲しい』って『どうしようもなく好きだ』って伝えたらすごく真っ赤になって照れてくれていた]
(+10) 2023/08/19(Sat) 07時半頃
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[お付き合いはそこから始まったけれど、大和 命は貧乏だった。 貧乏に暇はなくて危険なことをしてもお金を貯めていきたかったのは珊瑚と一緒に専門か大学に進学して同棲するためだった。
労わってくれる珊瑚には感謝しかなかったけれど、寂しい想いをさせていたと思うと胸が苦しくなる。 本当はもっと傍に居たいのに現実が許してくれなかった。
そんな日々は絶対その場所だけは残さないという強い意志を感じる――実際はなんでか寝ていて気づかなかったのだけれど、ロボットの攻撃で負の拠点だったアパートが吹き飛んだことで解放された。 手に持てるものだけ持っているけれどそれだけで、一体どれくらい呑気に寝ていて>>+8それで如何ほどに珊瑚に心配をかけたことか。
復興支援どころかロボットたちのあまりの広範囲の戦闘に巻き込まれて自分自身が被災者になってしまったのは笑えない]
(+11) 2023/08/19(Sat) 07時半頃
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[早く会いたい、早く声を聞きたい。 ご飯をまた食べたいしお菓子も食べたい。 『ずっと一緒に居る』って約束したんだって想いだけで歩きにくい不整地となった瓦礫の上を歩き通してフラフラになっていたけれど強い意志を宿す瞳は変わらなかった。
>>+9電話で珊瑚が泣いていた。 死ぬわけにはいかないじゃないかって珊瑚の家までいくつもりだったのに、どうしてかこちらに向かってきているらしい。 復興支援をしていく中で地図を頭に叩き込んでいたので珊瑚に近いほうの災害時の集合地点に使われるポイントを教えて大和は歩き続けた。
集合地点は耐震性や災害に強い場所とされている場所が設定される。 珊瑚に伝えたのは公園で倒木はあっても倒壊はないから安全と言えた。 その場所に近づいていくと遠目にも珊瑚が立っているのが分かって、大和は手を振って走って近づいていった]
(+12) 2023/08/19(Sat) 07時半頃
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おーい! 珊瑚さーん! 大丈夫ー? 僕は無事だよー!
[大きく手を振って近づく程にどうしてか目元が熱くなっていった。 生きている、動いている珊瑚を見て胸も熱くなっていて、目の前に到着する頃にはぼろぼろと涙を零して身体を抱きしめてしまった。 汗をすごいかいていて、服も汚れていたのにそのままだったから嫌がられたりしなかっただろうか]
珊瑚さんが、ひっ、ぐう……いきてて、よかった。 僕の住んでたとこ、潰れたし。
[一しきり抱きしめて温もりを感じてからそう切り出した。 珊瑚の家が無事で良かったと思う。 大和はこれから被災者登録をして避難所に行かないといけないから――また離れないといけないのかと思うと悲しそうに苦笑いするしかなかった**]
(+13) 2023/08/19(Sat) 07時半頃
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ー幕間>>20ー
そっか。今は空いてるんだね。
[ハロがそう言うから、大和君はどれだけハロを酷使してたんだろうってちらっと思ってしまった。]
腕がほとんど地面につきかけだから 体と大体同じくらいなんだろうとは思ってたけど、 そっか。500メートルくらい…
その2つは影でも使わないと、測るにはちょっと大変すぎるからね。 あとは手のひらだけど、海に出すって、その辺に浮かべるの? というか浮かぶの?
[浜に寝そべらせるなら…座礁したクジラみたいになるな。]
(29) 2023/08/19(Sat) 07時半頃
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もし海に浮かべられるなら、 そうしてもらって私を上に転送してくれれば なんとかできると思う。
……っていうかハロ、軍にコネとかあったんだね。 それでお願い。
[何のためにと聞かれたら、距離を測るんだよ、と私からは答えたはず*]
(30) 2023/08/19(Sat) 07時半頃
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─大和命戦翌日・縁士の家─
[柊木に返事をすると、僕の家で話すということに決まり、翌日。 彼は手土産っぽいものを手にしていて。家に上がる時も"お邪魔します"なんて律儀に言う。誰もいない、ちゃぶ台と和箪笥、座布団だけが置いてある1階の和室を横目に、2階へ上がり、僕の部屋に通した。
僕の部屋と言っても。机も何もなく、ただ隅っこに布団が畳んでおいてあるだけの、生活感皆無の部屋だ。]
>>27 うん、誰もいない。 少し前まで祖父母がいたけど、大和に言われてから色々考えて。九州の遠縁の家に避難してもらうことにしたんだ。 だから何も気にせず話せる。
[銘仙判の座布団を柊木に差し出して、彼から手土産を受け取った。お菓子なのであれば、その場で開けて一緒に食べようと言うかもしれない。
ここまでで、既に色々と僕の状況はおかしいと気付かれるかもだけど。]
(31) 2023/08/19(Sat) 08時頃
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ーー海辺デート/結婚式ーー
[話は遡る。
暫し、夢のように幸せだった恋人ごっこの続きを綴ろう。
ーー僕と、彼だけの為に。]
(32) 2023/08/19(Sat) 08時頃
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[僕は知っていた。彼に僕への恋心がないことを。
それはむしろ当たり前でしかない。
僕らは高校入学から部活仲間としての仲良し、親友だった。 二年間友達としてふざけあい、傍にいて、笑い合った。
親友にまで昇華した素晴らしい友情だった。
僕の中でそれが恋愛に変化した方がイレギュラーだ。 そして、普通の人間は受け入れない。
つまり、彼がとても広い心で僕を受け入れてくれたから今日のデートが実現しただけで。
彼は僕に好意以上などない。 恐らくだが、他の友人だって彼は等しく大切なのだ。
ただその中で僕が強く彼にアプローチした結果が今に過ぎない。]
(33) 2023/08/19(Sat) 08時頃
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[>>27 先に聞いていいか?と聞かれ、頷く。 どうせ話したい事は似たような内容ではないかと考えていたので、さほど順番は問題ない筈。 しかし何から切り出そうか。少し間を置いてから、口を開いた。]
……そうだな。 まず、僕が柊木に対して思ってる、……というか 予想していることがいくつかあって。
ちょっとセンシティブな話になるけど……。
、、、 [あの話をしに来たのであれば、彼は正直に答えてくれる筈だ。]
(34) 2023/08/19(Sat) 08時頃
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[僕は彼の特別ではない。
だから、彼は照れることはないのだ。恋をせずにそれをする人間はいない。
答えを知っている僕は少し寂しそうに笑うしかない。]
そうだね。いつか君も。
[でもそんな風に言い、僕は微笑む。 それでいいはずだ。]
(35) 2023/08/19(Sat) 08時頃
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[貝殻を握り締める。その感触が僕にどれだけ尊いか、彼は知らない。
それでも僕は幸せだ。
僕はティッシュを借りて涙を拭っただろう。
僕は幸せだ。]
(36) 2023/08/19(Sat) 08時頃
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[佐藤さんとの面会や、なんちゃってとはいえ結婚式と聞けばいくら彼でももう少し動揺するかと思ったが、そうでもない。
勿論僕は彼の内面にいるお父さんの複雑な心中は知らないのだが。
彼の拒否の基準は恐らくだが、自分の身体を著しく損なう行為ぐらいなんだろう。
僕が喜ぶなら。 自分が困らないなら。
僕は手順を確認する彼にちょっと笑う。]
牧師さんは呼んでないから、そんな厳密でなくていいよ。
雰囲気、雰囲気!
[なんて明るく言う。 それにしても、着替えをこの段階、彼はどんな衣裳と想定していたのか。
まさか、僕が用意したのがあんなにもお姫様チックな可愛らしいウェディングドレスとは夢にも思わないはずで。]
(37) 2023/08/19(Sat) 08時頃
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[意外だったのは、彼が式の内容に興味を示し、とても積極的に意見を出したこと。
驚いて目をパチパチする。
いや、キスに関しては前回あんなに体調を崩したから心配は当然かもなのだが、バージンロードを独りで歩きたい、と言ったのが不思議で。
バージンロードは、娘と父親が歩く道だ。
そして父親が娘を、娘の生涯のパートナーに渡す、最後の道。
そんな意味を彼が知っていて言ってるのかわからないけど、ただ僕がやりたいだけを押し付けるだけじゃないのが嬉しくて。
またちょっと涙ぐんで。]
(38) 2023/08/19(Sat) 08時頃
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うん。僕が待ってるから歩いて来てね。 君を待ってるから。
ーーキスは寸止めするよ。 僕を信じてほしい。
[わたわたアルコール消毒は流石に大変だから、エアキスを希望した。
触れ合わなくても、こんなにも僕の胸は温かい。
佐藤さんは僕らの会話を優しい笑顔で見守っている。]
(39) 2023/08/19(Sat) 08時頃
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[佐藤さんに相談した時はとても勇気を要した。
なにしろ僕は高校生、男の子同士で結婚式がしたい、なんて。
笑われるか気持ち悪いと思われるか。
しかし、佐藤さんは営業スマイルではない笑みを僕に向け。]
『恵一くんのお話を聞いて、私、とても温かな気持ちになりました。
私ね、何十組もお世話して来たんです。みんな幸せそうで、そのお手伝いを出来るのが私は幸せで。
恵一くんの顔は、そういう人たちと同じでした。
好きな人と素敵なお式をして、夢を叶えたいって。 なーんもおかしくないッ
大丈夫。私は恵一くんの想いを叶えます。いいお式にしましょうね。』
[そんな佐藤さんに支えられて今日があるのだ。]
(40) 2023/08/19(Sat) 08時頃
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ダブルタキシードも考えたんだけど、コウは顔立ち綺麗じゃん?絶対似合うと思うんだ。
[お母さん似の彼は女装が似合うタイプと、写真を見た佐藤さんも太鼓判を押してくれた。
嫌がったら諦めようと考えたが、文化祭なんかで男子が女装するようなノリか、はたまたなんでも楽しむ彼だからか、了承を得る。
ただ、着替えは大変だった。
胸がないからコルセットはいらないにしろ、広げたパニエを崩さないように着たり、背中のファスナーを上げるのに四苦八苦したり。
手袋をし、髪にティアラを飾り、短めのヴェールをつけて白い花のブーケを手にすればーー艶やかな花嫁の出来上がりだ。
鏡に映る姿に僕は息を呑んだ。]
(41) 2023/08/19(Sat) 08時頃
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