情報 プロローグ 1日目 2日目 エピローグ 終了 / 最新
[リッキィは己の話をきちんと聴いてくれていたようだった。
大好きな物事にはいつも真摯に取り組む彼女が、同じように自分の話に耳を傾けている。
――その、真っ直ぐ真剣にこちらを見つめてくれる姿が、美しいと思った。
……なんて。直接言ったら変な顔をされてしまいそうだけど。]
貴女にとって、興味深い話であったのなら。
よかったわ。
[そうとだけ告げる。まさか見惚れていただなんて、思うまい。]
でも、そうねえ……せっかくなら。ここでもっと魔法の勉強をしてみようかしら。『師』とは違う知識に触れられる機会を得られたわけだし。お店じゃあろくすっぽ修行もしてなかったからねえ。
ありがとうね。じゃあ、困ったことがあれば遠慮なく。
[まだ着いたばかりだというのに、幾度なく感謝の言葉を述べている気がする。これから、なんて。そういえば一度も考えたことが無かったなと思って。
ここで彼女達と過ごしていくうちに、少しずつ「これから自分はどうなりたいのか」を考えてみることにした。]
[夜も更けてきて。ようやく帰ってきた、リッキィの養父の開口一番に笑いそうになるのをこらえながら改めて挨拶を済ませる。
「義娘さんのそんな姿を見るのは、楽しいから大丈夫ですよ」……という言葉は飲み込んでおいた。
その後は。夕食や湯浴み等を済ませて自室へ向かう。
明日からは本格的に、リッキィの従者としての日々が始まる。少々気分が高揚していて、寝付くのに時間がかかりそうだったから。さっそく「睡眠の魔術」を実践しながら床に就く。
これからどうしたいか。そうだ、最初の給料を貰ったら、まずは占術道具を見に行こう。買える値段であれば買うし、足が出そうなら次の機会にして。
……ああでも、それよりもまずは、]**
[変な顔どころか、いつもの緊張しいの顔やら
どうしてと疑問符を山ほどつけてしまうだろうことは
想像だに難くない
だって、私が見惚れることはあっても
私を見て美しいと思う奇特な人間が
この世にいるとは思えなかったものだから。]
――それは勿論!
だって、煙さんの話だもの。
[彼が、未来の話をする。
何がしたいか。どうしたいか。
そういったことが聞けるのが嬉しい。
いつも話を、聞いてもらうばかりだったから
今度は私が力になりたい
力にはなれずとも、彼が進む一助になりたい。
そう思うのは、きっと今迄の私とあなたの
過ごした時間の長さと、知った貴方の人となり。
それ以上に、私はきっと
パルテールという温かな庭から出た貴方が
どんな風に花開いていくのか見たいのであろう。
私や、養父や、使用人の皆とともに過ごす中で]
[その後、本を読みふけってしまった私は
帰ってきた養父にあきれられ。
顔を真っ赤にしてごめんなさい。という様子は
まるで借りてきた猫がしゅんっとしているよう。
契約の書類は養父にあずかってもらい
私は部屋に戻り、諸々の整容をして床に就いた。
昨日までとは違う今日。そして明日。
彼という従者を得た私の世界は
どんな風に、かわっていくだろう。
――などと考えていたら翌日。
ついうっかり寝過ごした。
よかった、休日で**]
[決意を新たにさせられて、迎えた朝。
睡眠の魔術の効力かどうかは謎ではあるが、よく眠れたと思う。自室でできる身支度をある程度済ませてから、共用の洗面所で顔を洗う。途中ですれ違った使用人の方にも挨拶は忘れない。
さて、自分が行うべき最初の『従者としての業務』はなんだろうか……と思案しながら自室で待機していると、ドアをノックする音。
さっそくお呼びがかかったのかしらと開けてみれば、そこにいるのは養父で。「おはようございます」と恭しく挨拶したのもつかの間。
「義娘がまだ眠っているので起こしてほしい」
との言付けをされた。
……どうやら、あたしの最初の業務は。お寝坊さんなご主人様を起こす事に決まったらしい。]
おはようございます、お嬢様。
お目覚めでしょうか?
[まずは彼女の部屋をノックして、外から呼びかけてみる。他の使用人に聞こえるかもしれないので、普段の砕けた口調ではなく、丁寧な口調で。
…………しばらく待ったが、反応はない。
これは、直接部屋に入って起こすべきか。
従者(しかも元奴隷)の身分で異性の年若い主人の寝室へ入るというのは、少々憚られるとは思ったが。これも養父から頼まれたので致し方なし。]
リッキィお嬢様、失礼しますよ……っと。
[一言断ってから寝室へと入る。
すやすやと、安らかに眠っている彼女へ声をかけて起こす。
……起こされたときの顔を、自分は忘れることはしないだろう。]*
[夢を見た。
でっかいメロンパンの上で、
魔導書をしこたま読んでいる夢であった。
つまり良い夢。
夢の中でも読書。ハッピー。
――という惰眠を貪る娘が1人。
ベッドの上には読みかけの魔導書が1冊。
半分読んだところまでしか記憶はなく。
いつの間にか夢の中の世界に沈んでいた。
煙さん
しまった!とショックな顔を見せるだろうが
現在は夢の中。おふとんきもちいいです。
当然、ノックも呼びかけも聞こえていない。]
んぁ……。
[すやすや、すやすや、すや……
………。]
――――!?!?!?!
[その時の顔は、多分ネッシーに出会った人がいたら
こんな顔をするんだろうというくらいに
びっくりした顔を彼に向けたんだとか何だとか。*]
はい、おはようリッキィちゃん。
お義父様が心配していたわよ。
今日は学校がお休みだって、聞かされたから。その辺は大丈夫でしょうけれど……気をつけるようにね。
[目が覚めた彼女を確認し、身支度があるだろうから一旦部屋を出て待つ。
その後、部屋から出てきたリッキィと共に朝食の席へ。
朝ご飯も済ませたら、さあ今日は何をするのだろうか。主人の言葉を待つことにしよう。
従者としての一日は、まだ始まったばかりである。]**
うああ、またやってしまった……。
つい、本が面白くて夜更かしを。
[ごめんなさい。と起こしに来た貴方に謝罪する。
後で養父にもまたやってしまったことを謝ろう。
身支度といっても。顔を洗って服を着てと
お洒落などはほぼしない私である。
多分あまり待たせないで済んだとは思う。
朝食にバケットとスープ、サラダにカットフルーツと
結構がっつり目の我が家の食事を食べた後
私は彼の方を振り向いて。]
今日は触媒に使うものを探しに市にいくか
それとも近くの森で、薬になる草を採取するか。
どっちがいいですか?
[何方も魔法関連なところが私らしいともいえよう。
休日は、大体それにプラスして魔術の教育機関の図書館で
1日過ごすコースもあったりするが今日はこの2つである。
果たして彼はどちらに興味があるのやら*]
[店外は真っ暗で、あるのは星灯りだけ。
あなたが転ばないように歩幅は、さらにゆったりとしたものに変えたでしょう。]
···久しぶりの外の世界はいかがですか?
まだまだ風が冷たいとお聞きしましたので、少し寒いかもしれませんね。
[未だ重ねたままの手は、
いつの間にか温かくなっていて、私の手の体温は君と同じくらいにまで上がっていました。
······この手で、暖を取れれば良いのですが。]**
[寝坊の理由を聞き、「貴女らしいわ」と一言。
朝食の席は、時間帯が合わない以外では使用人達も一緒に、が許されていたため。遠慮なくご相伴に預かる。
しっかりめの朝ご飯を食べる姿が、義親子ともにそっくりで微笑ましくなる。]
(そういえば『師』も「朝食は1番大切な食事」だって言っていたっけ)
[弟子時代はここまでの量こそなかったものの、出来る限り豪勢にと持ち回りで朝食を作っていたのだった。懐かしい。]
どちらでも大丈夫よ。
今、必要だと思う方を優先で。
[与えられた業務は、市街での触媒探しか、森で薬草摘みか。基本は彼女の魔術勉強の補佐が主だった仕事になりそうだ。
……それと、スケジュール管理も。没頭すると寝食を忘れてしまう方だとの事なので、養父からは朝食の席を立つ際に念入りに頼まれてしまった。]
市街に行くのだったら、街の案内もお願いしたいかしら。あたし、この辺りを歩いた事はほとんどないからね。
[屋敷へ向かいがてら近場の建物を見たりはしたが、あの時はリッキィ宅を覚える事が最優先だったので、街の店屋の位置などはほとんど知らない。いつか常連達が教えてくれた様々な店にも興味はあったし……雇用契約には休日の外出は認められていた。
それ以外にも、おつかいとして一人で買い物をする時だってあるだろうから。近所の店屋を知っておきたかった。]*
もっと寒いかしらと思ったけど。
坊ちゃんのコートも、お手手も暖かいから
そこまで気にならないわ。
[って、坊ちゃんの手を軽く握り直して。
深夜、人の気配がほとんどしない道を歩く。
行先は多分坊ちゃんのおうちかしら。
どんな所かしらと想像をふくらませながら。]**
[一体、煙の中での私のイメージはどの様な感じなのだろう。
と、一言に思う
今問えば、藪蛇になりそうなので口を噤んでおいたが。
我が家の食事は口に合ったようだと、
一緒に朝食を摂りながら思う。
料理長さんのごはん、美味しいもの!と
呑気に此方は、考えていた。
朝食が終われば、今日の外出を何方にすればよいか
彼に投げかけてみると。
今必要、となると。……市街の触媒探し、かな。
薬草類は、まだ余裕があったから。
あ、確かにそうか。
煙さんにとってはこの周囲はあまり、
馴染み、ないものね。
[案内は任せて。とにっこりしているが
諸々を養父から念入りに頼まれた娘が、こちらになります。
まず街の入り口近くのパン屋さんのはちみつパンが
とてもおいしくて、などと行く道で説明する様子から
街の幾つかの店が馴染みになっていることは伝わるか。
大体説明する店の殆どが食べ物か魔術関連か
そういった店なので、お洒落やら、年頃の
女の子のいきそうな店がゼロなのは、ご愛敬。
市に行く前にどこかよってみる?と尋ねるのだった。**]
···ふふっ、それは良かった。
今日はもう夜遅いですし、冷えてしまわぬうちに帰りましょうか。
[私のお屋敷は、この町の東の方。
この『パルテール』からも見える位置に建っていました。
数十分ほど歩けば、目的の場所につくでしょう。]
着きましたよ。
こちらの屋敷が、今の私の住んでいるところになります。
[その建物は、灰と黒の煉瓦で造られており。
屋敷の外を高い塀が、ぐるりと取り囲んでいました。]
[各階の部屋ごとに、大きな窓が取り付けられていて。
私たちみたいな夜更かしさんがいれば。
蝋燭の灯りが揺らめいてるのが見えたかもしれませんね。]
[正門から敷地内に足を踏み入れますと。
鼻腔をくすぐる草花の香り、その場所に広がっているのは小さな庭園でした。]
母の趣味が花を育てること。
このお庭は母を喜ばせる為に、父が作ったものだそうです。
···今は少し侘しいですが。
春になれば、たくさんの花々で埋めつくされるんですよ。
[他にも花は咲いていますが。
弱々しい月灯りの元、今の私たち目に見えるのは。
足元に咲くスノードロップくらいでしょう。]
···それでこちらが玄関です。
[正門を真っ直ぐ歩いた先にある、大きな扉を手で指すと。
人差し指だけ残し、唇に当てました。]
実は、こんなに夜遅くまで出歩くのは初めてのことなんです。
見回りのものに見つかったら、怒られてしまうかもしれませんね。
······ですので、バレないように、静かに行きましょう。
[しっー。くすくす。
君に、悪戯を企てている子供みたいな笑みを向けました。]**
[夜遅くに歩くことは、基本なかった。
夜はパルテールの中でお客の相手をしていたし
家にいた時も、夜は寝る時間だったから。
だから暗い道を歩くのには、新鮮な気持ちを抱いて]
夜の外を歩くのも、楽しいのね
[って、白い息を吐きながら。]
[誰かと歩くのも楽しい。
隣の人の足音が聞こえるのもたのしい。
暖かい手を繋ぐのも。
久々、そんな感覚も思い出す。]
お店から見えてたの……貴方のおうちだったのね?
大きいわね……。
[あの、建物の合間から見えていた家が今は目前に。
いざ近くで見ると、家ももちろん大きいけれど。
お店からは見えなかった、庭園もあって。
土地も広いのねと、少し圧巻された。
夜更かしさんの灯すあかりが、カーテン越しにゆらめく。
生垣や花壇を都度見つつ、歩きながら相槌を打つ。
おとなしげな白い花弁を持った花は、
月に照らされて、少し神秘的な様を見せている。]
夜もお花が楽しめるなんて、素敵。
奥様、趣味が良いのね?
[私の指輪に咲いているのも、ここにあるかしらって
指輪を月の光に照らし見て思った。
……後で聞いてみるか、なければねだってみようと。
貴方の、月の光でより白く煌めく、その姿を見て思う。]
へぇ?見張りさんが居るの。
[怒られてしまうというのに、それは嫌ねぇと眉を下げて相槌。
悪戯心が芽生えたらしい坊ちゃんに、
にこりとして見せた。……賛成するって。]
バレたら私、全部坊ちゃんが企ててましたって言うから。
[続いていたずらっぽく笑って返したのはそんな事。
先達にお目通りはしたかったけど、こんな夜中ではね。
夜明かりでぼんやりと顔を照らした
顔も知らない新米が来ては、
侵入者と疑われて、業務の妨げになるでしょうと考えて。
……それに、坊ちゃんが楽しそうだもの。
たまにはそうやって、遊びたい時もあるわよねって。
可愛い坊ちゃんの顔を見るのは大好きだから……
水をさすのは、今日はやめておいてあげる。]**
[彼女に対するイメージを問われれば。「いつでも好きな事に真っ直ぐで、おっちょこちょいだけど優しい可愛い子」と答えただろう。
……正直に告げればきっとまた赤くなってしまうかもだけど。
「照れなくてもいいのに、好ましいって意味よ。」と付け加えれば、更にその頬は赤みを増したりするのだろうか。]
触媒探しね。じゃあ、そちらにしましょうか。
ご主人さまの言う通りに。
そうそう、街に来てからはずーっとお店の中だったからね……お客様から外の話は聞けても、直接行く事はできなかったから。
案内してくれるなら、どこでも大歓迎よ。貴方の行きつけのお店とかも知りたいし……少し贅沢を言わせてもらうなら。
前にお客さんが教えてくれた、ビスケットの美味しいお店と、占術の道具が売っているお店に行きたいわ。
……でもこの辺には東方式の用具はあるのかしら……ま、無いなら無いで代用品でもいいわ。
[彼女と街を散策するのは、それだけできっと楽しいだろうから。どんなお店を紹介されたって構わないだろう。
しいていえば休日になったら、久しぶりに占術に興じたくなったのと。かつての顧客が教えてくれた店々を巡ってみたい、という気持ちがあった。]
[これは余談であるが。
……無論、性的奉仕を求めてではなく『会話相手』としての常連である。
なんでも、職場の同僚に「癒される店を教えてほしい」と頼んだら『パルテール』を紹介されてしまったとか。「思ってたのと違う」といった表情で怯え切っていた上に、やってきたドールが長身の怪しい男だったので、可哀想なほど震えていたのをよく覚えている。
いざ席に座れば、仕事の愚痴や家族の話などで会話が弾み、良い常連さんになってくれた。
……彼の家の側にある店で、よくそこで買い物をすると言っていたから。運が良ければ会えるかもしれない。]*
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