14 冷たい校舎村10
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[普通とは違うおかしなところのある私が、 それでも今まで、「あっ死んじゃおう」って思わなかったのはどうしてか。
一番に、ただ運が良かったから。 どうしようもないことはあったけど、 完全に見捨てられてはいなかった。
…………]
(169) 2021/11/09(Tue) 22時頃
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[時は巡る。 和歌奈の中にそういう思い出があったから、>>1:337 卵料理の分担を巡る話の最中、 ばっちり嬉しがっていいですとも、と親指を立てた]
できれば私の目に映る不知火ちゃんはこういうやつだって、 多くの人に伝わってほしい所存よ。
[それからちょっとだけ遠くに視線を泳がせた。 あの時彼女が伏せた瞳の向こうに何かを隠したように、 その数瞬で、告げられない思いを強くした]
(176) 2021/11/09(Tue) 22時頃
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[ねえ、私は貴女の隣に立てるんだろうか。 心から、対等に。
隣に立ちたい、ただそれだけを純粋に願うには、 色んな不純物が混ざっているんだ。 目玉焼きが作れないのだってどうしようもない]
(177) 2021/11/09(Tue) 22時頃
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そっかー。
[練習しておく、と彼女は言った。>>1:342 そっか。こくこくと頷く。でも、どうだろうね。 目玉焼きをリクエストする日なんて来るのかな。
だって、たかが目玉焼きされど目玉焼き。 彼女が思うほど単純な話ではなかったんだ、これは。
……でも、そういうのないと思うから練習はしなくていいよ、とは言えなかった。 かといって不透明な未来に期待することなく口を塞いで。
静かに苦みを飲み下して、 私はこれからも変わらない関係を続けたんだ]
いやあ文化祭が楽しみだね。 私達も準備をがんばろうか、不知火ちゃん。
(178) 2021/11/09(Tue) 22時頃
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[もしも私に彼女の思ったことが読めてたなら、>>1:344 そうだね、 ……たいした差はないよ、って頷くだろう。
私は自分が異物だと気付かれたくないから、 自分の荷物を渡したくないから、せめて誰かの荷物を持ちたがる。
荷物を渡すことに、 何やら思うところがあるって意味では、 そんなに違いはないよね。
でも、だったらなおさら貴女には、 私の荷物をたかが目玉焼きでも渡したくない、なんて。
そんなことも思わないまんま、 現実の和歌奈は冬を迎えてしまったというわけ*]
(179) 2021/11/09(Tue) 22時半頃
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[ちょっとだけ、家族の話をしよう。
和歌奈と妹は10個歳が離れている。 もうすぐ妹の誕生日が来てその差がちょっと縮まる。 それでも和歌奈に妹ができたのは五年前のこと。
再婚の話を知ってからも、姉になるというのがどういうことなのか、 ピンときていなかった。 物語の世界のおねえちゃんの中には強い人もいて、 そういう風になれるか心配だった。
せめて普通でいられればじゅうぶんだ。 そういう、ええと、努力はしようと思ったし。 これまでには十分してきたつもりだ]
(283) 2021/11/10(Wed) 13時半頃
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[妹は雪景色に犬かってくらいはしゃぎはするけど、 実際は猫派だ。 かわいい服を着て、片耳にリボンをつけた猫のぬいぐるみ。 河合家の一員になったばかりの頃はぴっかぴかだったそれを、今でも大事にしている。
ひとりでお絵描きなどして遊んでいる時に、 話しかけているのを何度も見かけた。 ぬいぐるみの声は聞こえないけど、どこか心が通じ合っているように見えた。 それをおかしいことだとは思わずに、一個性として受け止めた。
時々、 怖いくらいに澄んだ目で遠くを眺めていることはあれど、 目立たない、クラスで浮いてるなんてこともない、普通のおんなのこ]
(284) 2021/11/10(Wed) 13時半頃
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―― 回想・文化祭の話 ――
[和歌奈の家族は文化祭に来た。 ありふれた家族連れの一組としてやってきて、 ありふれた家族連れのまま去っていった]
(285) 2021/11/10(Wed) 13時半頃
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[家族が来る、という話は別に隠してなかった。 ある時、衣装係たる平塚莉希に頼まれて、 ちょ〜〜っと衣装づくりを手伝った時も、>>1:322 ほんのり妹の話をした。 せっかく家族みんな来るんだし私も猫耳になるー! と宣言したり、>>1:323 (主に妹のため) 妹がまさに猫派で、大事にしているぬいぐるみも猫だ、って話をしたり]
まあまだ小学生だし、 メイドさんの良さは分からないと思うけどね。 可愛いって思ってくれるといいなあ。
[そんなわけで和歌奈のちょっとした気合も、 喫茶店の衣装にはこもっていた。 和歌奈の裁縫の腕前は38点。どちらかと言えば不器用なので、 主に……こう、目立たない裏地とかに]
(286) 2021/11/10(Wed) 13時半頃
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んー、そうだ。 もし材料が余ったらさ、 猫のぬいぐるみ用メイド服って作れるかなあ。
[だいたいこのくらいの大きさで、と説明してから。 無理にとは言わないという意思も伝えた。 何せ平塚莉希は演劇部の裏方であって服飾屋さんではない。 なんとなくの期待の眼差しであった]
(287) 2021/11/10(Wed) 13時半頃
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[そうして迎えた文化祭当日。 案の定というべきか、妹がいっとう気に入ったのは、 猫耳メイド……ではなく、猫の着ぐるみの方だった。
注文を出すのも忘れてキラキラした眼差しを向けて、 即刻もふもふしに飛びついて行ってしまった。 まあわかるよ。もふもふしたくなる気持ちは。 和歌奈だって着ぐるみを見かければ、 分別を忘れずにもふりにいきたくなる時もある。
とはいえ和歌奈は、妹に飛びつかれてるでっかい方の猫の着ぐるみの中身が、 妖精さんでもプロの人でもなく、 愛想は良くないが腕っぷし的に頼れるクラスメイトの荒木春満であることを知っていた。>>1:286 知っているのでなんだか笑えてくる。 着ぐるみを着ることになった経緯を聞いた時も笑ったのにまだ足りないという]
(288) 2021/11/10(Wed) 13時半頃
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うちの妹がすまないねえ。 どうやらめちゃくちゃ気に入られたみたいで。
……そうだ写真撮ろう! 写真!
[そうしてまずは妹と着ぐるみのツーショットを撮るべくカメラを向け、 次にそれを他の人に渡して、和歌奈も合わせた三人で写真を撮った。 おお荒木くん、君の頑張りは忘れない――と、 撮れた写真を見てしばらく思っていた和歌奈であった]
(289) 2021/11/10(Wed) 14時頃
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[同じフレームにおさまった姉妹は、 歳の差を抜きにしてもあんまり似ていない。 それでも二人は姉妹という縁で繋がっている。
その繋がりをちゃんと守りたかった。 どれだけ遠くに離れていても、 よくよく光って見える星でありたかった。妹にとっての。
弱気になることはあったけれど、ずっとそう思ってきた]
(290) 2021/11/10(Wed) 14時頃
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[文化祭は楽しかった。家族も楽しんでた。 間違った方向に進まないように頑張れると、 この時はまだ思っていた**]
(291) 2021/11/10(Wed) 14時頃
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―― 回想・一寸先は……の話 ――
[“ひとりになりたい” その言葉を選んだのには意味があった。>>207 でも、和歌奈が心に抱えている荷物、 いわば本心的なところはさ、誰かに預けたくなかったから、そっと隠した。
「はやく人のいないどっか遠くへ行きたい」なんて、 あからさまに何かに悩んでるみたいじゃん。 みたい、じゃなくてそうか。 それに人と関わらないで生きるなんて、最初っから不可能なことなんだから。 その思いを口にしてもしょうがないじゃん]
(306) 2021/11/10(Wed) 20時頃
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なんか思いつくといいね。 ……私もアドバイスはするかもだけど。 でも、結局夏見ちゃんの人生は夏見ちゃんだけのものじゃん?
だから、夏見ちゃんが心から納得できるように。 私や先生ができるのはその手伝いくらい。
[まあ頑張れって感じでひらひらと手を振った。>>208 軽い気持ちだった。 もしも次に進路のことを話す機会があるなら、 彼女の好きなことが何か、訊ねてみようか]
(307) 2021/11/10(Wed) 20時頃
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[……そういえばなんだって、 「やり直したい?」なんて訊き方をしたんだろう。 「遠くへ行きたい」を噛み砕いて別の言葉にした私のように、 そこには意味があったのかな。
これは、でも……考えすぎかもなあ。 そういうことにしておいた。 でないと、あとあと突きすぎるような気がして。
突きすぎてあとで取り返しのつかないことになる。 それを、密やかに極端におそれていた]
(308) 2021/11/10(Wed) 20時頃
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[私にだけ依存するって形でココロを壊す。
そんな発想、思いつく機会さえなかった。 唯一、特別な存在になる――かもしれなかった中学校時代の“親友”は、 結局この手で突き放したし。
けっこう葛藤した末に、 手ひどくフッちゃったわけだ。
って戯言はさておき。]
(309) 2021/11/10(Wed) 20時頃
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[……あ。 「人のいない遠く」それって「死の世界」も似たようなものかもね。
でも自分で死ぬ気はさらさらなかった。 だって、それこそ、自分のおかしさに膝を屈したみたいじゃん。
普通を目指して生きることが時折苦しくなっても、 忌々しくも人生はまだ先長く、 余生を送るなんて気分にはまだ早く、
私はちゃんとやれてるはずだから大丈夫って。 その時はまだ思ってたんだ*]
(310) 2021/11/10(Wed) 20時半頃
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―― 現在・2Fエレベーター前 ――
うわっ動いた。
[なんにもボタンを押してないのに、 「1」が光ってたのが「2」になって、 中からクラスメイトの姿が出てきたのを見た。 何を話しているか……までは大して聞き取れず。>>305]
だいじょうぶ? 何にもおかしいところはない? このエレベーター。 中に入るとあやしい声が聞こえるとか。
[ちょっと慌てた様子で手を振って、 それから幾許は言葉を交わしただろうか。 2Fも文化祭の時と同じで、天文部のプラネタリウムも見られるって話はしたはずだ。 彼女たちと入れ替わるようにして、エレベーターを使って1Fへと降りる]
(315) 2021/11/10(Wed) 20時半頃
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…………。
足りないものは埋めたよ。
ちょっとでも楽しんでもらえるといいなあ。
足りないって私が勝手に思ってるだけだろうって?
そうかもね。
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―― 1F廊下 ――
[ここにも彩色された卵が点々として落ちていた。 カラフルな装飾に紛れていると、 まるであの日の一部分であるような錯覚すら抱くけど、そうではない。
結局本物じゃあない。 でも本物に限りなく近くて、だから胸がざわつくのだ]
(316) 2021/11/10(Wed) 21時頃
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お……っと、墨鳥くんじゃん。
……掃除中? 何拭いてるの? トマトジュース……にしては生臭い気もするけど。
[廊下をひとり掃除している墨鳥雄火。>>296 どうやらの赤色の“何か”が零れたのを拭き取っているようで。 マネキンのことも日食虎次郎がどこにもいないことも知らないから、 落ち着いた調子で訊いている。 ちょっとおかしいなって思うのは、文化祭の香りには混じらないその残り香だけ]
(317) 2021/11/10(Wed) 21時頃
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[邪魔にならない端っこに退きながら、 なんとなくその様子を眺めてしまう。 たぶん邪魔だし。 もしかしてバスケ部の練習風景と違ってこんなところ見られたくはないんじゃ? とは思うけどね。訊きたいこともあった]
墨鳥くんは。 この世界をつくった誰かさんは、どうして、 私達をここに呼んだと思う?
[……無意識のうちに「呼んだ」なんて言葉を使ってる。 「閉じ込めた」ではなく。 人間そういうことにはなかなか気付けないものだ**]
(318) 2021/11/10(Wed) 21時頃
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―― 現在・1F廊下 ――
トマトジュースね……。
[墨鳥雄火の答えは和歌奈をほっとはさせなかった。>>328 もしかすると変わったことが他にもあったんじゃ。 それでも掃除されてく赤が血の色と結びつくことはなかった。
卵にトマトケチャップ。 朝ごはんは卵料理が好きですか。 目玉焼きにケチャップでもかけますか。
…………意味のない問答はすぐにやめた]
(380) 2021/11/10(Wed) 23時頃
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[ともあれ本題、である。 私達みんなを“呼んだ”誰かさんの目的。 途中で、和歌奈に言うってよりは、 ひとり思考をまとめてるめいた口ぶりの時もあったけど、 黙って最後まで聞いていた。 ふうん、って頷いた]
そういう考え方もアリかもね。
[集められた面々には意味があるだろう]
何かしたかった、って……あの素晴らしい時をもう一度? くらいしか思いつかないけどさ。 私だったらそう。
(381) 2021/11/10(Wed) 23時頃
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[だから、やりたいことやれば、と言われても、>>365 すぐにはピンときていない様子]
……やりたいことかあ。
私はちょっと思い―――あ。 いや、なくはないか……でも…… わあっ!?
[思考をぐるぐる回していると突然の勢いある声。>>372 ぶっちゃけびっくりした]
猫耳作るってのはいいけど。 もう夜だよ。徹夜したいならいいけど、 誰か誘うなら明日の方がいいかもよ。
[と、アドバイスはしてみるけど。 こういうのって勢いも大事なんだっけ。 和歌奈の中にもちょっとだけ湧いてきたそれ]
(382) 2021/11/10(Wed) 23時頃
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とにかく! 私も決めた!
[びしっと虚空を指差す]
調理班になってパンケーキ作ってみたかったって思いもね、 あったりしたから、作ってみる! ただし明日ね!
[うん、迷いなく宣言したらちょっとはすっきりした。 だから話がひと段落したら、 調理室を覗くこともなくまっすぐ自分たちの教室に戻るのだろう*]
(386) 2021/11/10(Wed) 23時頃
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[勿論、卵を綺麗に割ることができないという、 ささやかなコンプレックスが露出することを危惧しなかったわけではない。 閉じ込められたこの場所で突然、卵が綺麗に割れるようになるとも思っていない。
この世界をつくった誰かさんが望めば、 そういう奇跡じみた現象が起きるなんて。>>341 この世界はどうせ本物じゃないと思うのに、 そこだけは割り切れないと思う和歌奈はいる]
(387) 2021/11/10(Wed) 23時半頃
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