10 冷たい校舎村9
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墓
少
霊
全
帰ってくることができたのか、
帰ってきてしまったのか。
その答えはまだわからない。
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[冷たい校舎の時は終わる。]
(25) Pumpkin 2021/06/16(Wed) 19時半頃
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[最初はわたしが手を引いていたけれど、 気づけば先頭は乃絵ちゃん>>5:258。 わたしたちは青空を飛ぶ鳥のように連なって、 昇降口の扉>>2:263をくぐる。
食べ残してしまったクレープ>>5:262や 冬を春にするために残したダッフルコート、 まるい銅色のいくつかは、未だわたしの過ちを残す。
そんな思い出の中にひとつだけ、 濡れたローファー>>0:666を紛れ込ませてもいいかな。 わたしの足元は上靴のままだった。]
(26) Pumpkin 2021/06/16(Wed) 19時半頃
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……さむ。
[制服姿に素足と上靴。 無防備なわたしの身体を雪風が撫でる。
最初はあんなに着込んでいたのにな。 いつの間にか、いろんなものがなくなっちゃった。]
(27) Pumpkin 2021/06/16(Wed) 19時半頃
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[わたしが横を向くと、炭蔵くん>>5:256が見えた。 ありがとうと言った時の表情は見えたかな。 ピンで留めた前髪が右に左に踊る様子はやっぱり 普段より幼い。それも、今だけのことなんだろうけど。
乃絵ちゃん>>5:260のわがままを きっと炭蔵くんは叶えるんだろう。 その真面目さで、誠実さで。まっすぐに、正しく。 わたしは風からわたしを守るフリをして目を細めた。
乃絵ちゃんの足>>5:263はもう震えていない? わたしは乃絵ちゃんの手をぎゅっと握って口を、
開いた。]
(28) Pumpkin 2021/06/16(Wed) 19時半頃
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————、——。
(29) Pumpkin 2021/06/16(Wed) 19時半頃
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[答えの見えない明日≠ヨ、進んでいく。]*
(30) Pumpkin 2021/06/16(Wed) 19時半頃
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[身体が寒くて目が覚めた。 どうやら勉強中に寝ちゃったみたい。 開けっ放しのカーテンからは、 大雪なんて降りそうにない夜空が広がっている。
冷えきった手を擦り合わせてみたら、 どうしてか左手だけがすごく温かかった。 まるで、さっきまで誰かと手を繋いでいたみたい。 わたしは反対の手に息を吹きかける。]
(111) Pumpkin 2021/06/17(Thu) 06時頃
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[見慣れた制服は朝着るようにハンガーにかかっていて、 お財布は左ポケットじゃなくて鞄の中、 胸ポケットは指で押しても布の弾力しか返って来ないし 右ポケットの中で握るわたしの手のひらは空っぽだ。]
……夢じゃない。
[それでも、メール>>3:+4を見る前から分かってた。 校舎に置いてきたことも、わたしが新たに抱えたものも、 全部、覚えていたから。
わたしは私服の上に血に染まっていない コートとマフラーを着込んで階段を下りる。]
(112) Pumpkin 2021/06/17(Thu) 06時頃
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[お父さんがリビングにいることは、 1階の廊下に漏れる明かりからすぐに分かった。]
お父さん、
[わたしがお父さんを呼ぶと、 お父さんはグラスに入った液体を揺らして振り返る。 わたしの髪みたいな色。お酒だと思うでしょ。 残念。正解は麦茶でした。 お父さんは、お母さんの前ではお酒を飲まない。
あの日>>2:600もそうだった。 お父さんはわたしへ少し恥ずかしそうな顔をするけど、 隠すつもりもなかったくせに。 わたしは迷わずお父さんの隣に座る。 顔を上げると、お父さんの大きな手がわたしに触れた。
わたしはお父さんの少し硬い手のひらにじゃれながら、 お父さんの悲しそうな顔を眺めていた。 今度はあの日>>2:601に戻っちゃったのかな……でも、]
(113) Pumpkin 2021/06/17(Thu) 06時頃
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[目元の皺、いつの間にか結構増えたね。 クマもちょっと濃くなってる気がする。 お母さんが死んで、お父さんもわたしも もう動けない、進めないと思ってたのに、 そんなことなかったみたい。
——わたしたちは、生きている。 鼓動を奏でる生者の時は止まらない。 立ち止まっているつもりでも、 わたしたちは少しずつ前に進んで、 お母さんのことを忘れていく。
夢を語る溌剌とした表情も、怒った時の鮮烈な声も、 頭を撫でてくれた柔らかい手も、味の薄かった料理も、 わたしたちの願望が、お母さんの本当を塗りつぶす。]
(114) Pumpkin 2021/06/17(Thu) 06時半頃
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お父さん、わたしね——
[やっぱり、死んだらそこで止まっちゃうんだよ。 だから生きている方がいい。 どんなに苦しくても、辛くても、生きて足掻く方がいい。
そのためならわたし、ワルモノにもなれるよ>>5:222。
心臓がバクバクしてる。声を出す喉も上手く動かない。 それでもわたしは、お父さんと話をした。]
(115) Pumpkin 2021/06/17(Thu) 06時半頃
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[月が朝焼けの空に掠れる頃、 何かが破裂したような音がした。]*
(116) Pumpkin 2021/06/17(Thu) 06時半頃
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[わたしの乗ったタクシーが病院の前に停まったのは、 他の車>>8より後のこと。
目覚めた時見た夜空はもうどこにもなくて、 わたしは朝焼けも過ぎようという早朝に 病院へ足を踏み入れることになった。]
(117) Pumpkin 2021/06/17(Thu) 06時半頃
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— 病院・待合室 —
[乃絵ちゃんの手術は既に済んでいて、 今は乃絵ちゃんの生命力に託した状態。 集中治療室に入ることは当然叶わず、 わたしは待合室にいる。
面会時間外だというのに、 病院の中には見知った顔がたくさんあった。 みんなはどこにいたかな。
たとえばそこに一日限りの相棒>>8がいたなら、 挙げた片手にこたえるように、 わたしの右手の人差し指はわたしの前髪の縁を伝う。 毛先に触れるたび、指の皮膚がじんと痺れた。]
(118) Pumpkin 2021/06/17(Thu) 06時半頃
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[炭蔵くんの前髪はすっかり元通り。 昨日の今日どころかさっきの今だ。 約束が果たされるのはもう少し後のことなんだろう。
そう思ってもわたしはいつものように、 炭蔵くんへ個人的に声をかけることはない。 だってもう、二人じゃない。
止まった一日は終わった。 わたしはまた民衆に埋もれていく。]*
(119) Pumpkin 2021/06/17(Thu) 06時半頃
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— 病院・集中治療室前 —
[わたしたち以外に、見慣れない女性がひとりいる。 集中治療室の向こうを見るその人が、乃絵ちゃんの お母さんだってことはさすがのわたしもすぐに分かった。
顔立ちに乃絵ちゃんと似ているところはあったかな。 乃絵ちゃんに毎日お弁当を作ってくれるお母さん。 お菓子も手作りにこだわっていたお母さん>>3:205。 苺が好きだった話>>4:469、わたしは理由を聞けたかな。 夜食>>4:309のエピソードはどうだろう。
少なくとも、わたしの知る乃絵ちゃんのお母さんは 乃絵ちゃんを傷つけたりしなかった。否定も、何も。
でも乃絵ちゃんはお母さんのこと、諦めてた>>5:209。 お母さんは、乃絵ちゃんの救いにはならない。 だからわたしも家族の話をやめた>>5:225。
でも、ここに乃絵ちゃんのお父さんの姿はない。]
(120) Pumpkin 2021/06/17(Thu) 06時半頃
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……乃絵ちゃん、苺がすきなんです。
[なんで声をかけたのかって言われたら、 わたしたぶん納得のいく答えを出せない。
いきなり隣に来て声をかけてきた子どもに、 乃絵ちゃんのお母さんはどんな顔をしたんだろう。 必要ないって、害になるって、馴れ合いだって、 そう決めつけられた>>5:1乃絵ちゃんの友達が 何人も駆けつける光景を、どう見てるんだろう。
乃絵ちゃんのこと、どう、思ってるんだろう。
わたしは細める前の目で乃絵ちゃんのお母さんを見る。]
(121) Pumpkin 2021/06/17(Thu) 06時半頃
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乃絵ちゃんを見てください。
……乃絵ちゃんは、ここにしかいないので。 生きているので。
[見知らぬ子どもが急に生意気なこと言ったんだもの。 怒られたって睨まれたっていいよ。
こんなことしたら、乃絵ちゃんに迷惑をかけちゃうかな。 でも、ここには乃絵ちゃんのお父さんはいないから。 逆らえない、お母さんしかいないから。
わたしが知っているのは、乃絵ちゃんとお父さんのこと。 お母さんの意思は乃絵ちゃんからも聞いてない。]
(122) Pumpkin 2021/06/17(Thu) 06時半頃
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突然、すみませんでした。 ……失礼します。
[わたしじゃなくて『乃絵ちゃんの友達』が 悪く言われるのはヤだから、わたしはちゃんと謝った。 ちゃんと謝って、ちゃんとお辞儀をして、離れる。
乃絵ちゃんのお母さんが何をしたところで わたしは振り返らなかったし、 わたしの耳が何かを拾おうとしてもすべて手放した。]
(123) Pumpkin 2021/06/17(Thu) 06時半頃
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[こんなこと言う必要、なかったんだけどね>>5。 わたしのやることってやっぱりどこかズレてるのかも。
コートのポケットに適当に突っ込んだお財布の中、 たった1枚がひどく重く感じた。]*
(124) Pumpkin 2021/06/17(Thu) 06時半頃
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— 帰還 —
[それから暫くは待合室にも寄りつかず、 病院の片隅にある椅子に腰掛けてぼーっとしていた。 早朝と夜の境目にある空を眺めていると 変な時間に目覚めたせいで瞼が重くなってくる。 右手のピリピリとした感覚がどうにか留めてくれた。
不安は思ったより大きくない。 乃絵ちゃん>>5:211は自分の現状を教えてくれて 事実、そうだったんだけど、 最後に聞いた言葉>>5:264が再会を望むものだったから。
望んでも叶わないことはいっぱいいるけど、 たまにはその通りになってもいいでしょう。 自動販売機の飲み物、 これからずっと違う物が出てきたっていいから。
わたしはただ、乃絵ちゃんの明日を信じたいだけだ。]
(125) Pumpkin 2021/06/17(Thu) 07時頃
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[わたしにその答えを教えてくれたのは、 消灯したランプ>>19じゃなくて微かに聞こえた声>>23。
音の先を覗き込むと、ひとみちゃん>>23が 薄暗い病院の中を歩き回るのが見えた。 もし出会うことができたなら、わたしは思わず ひとみちゃんの手をとろうとする。
左手を底に据えて、ほかほかの右手で蓋をする。 おにぎりを作ろうとしているのか、手のひらでぎゅっと。
わたしの右ポケットは空っぽで>>111、 何度も力を借りたぼたんは見当たらなかった。 ひとみちゃんに手を払われでもしない限り、 傷のあった側面>>2:13を指で辿って探ろうとする。
そこに傷があってもなくても、わたしのところへ 帰ってきていた紺色のハンカチを重ねようか。]
(126) Pumpkin 2021/06/17(Thu) 07時頃
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……よかった。
[こうしてちゃんと話せたのは、 お菓子パーティー>>+0以来かな。
持ち寄ったお菓子を並べて、どんな話をしたんだっけ。 趣味以外の話>>0:713? あの時みたいに知らない仲じゃない。 明るい我らが看板娘の声があれば、 また違った話もできたのかもしれないけど。
すごく離れていた気がするのに、 あの世界でもたった2日、ここではもっと少ない。 わたしが零す言葉はどっちに向けられていたんだろう。]
(127) Pumpkin 2021/06/17(Thu) 07時頃
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よかったよ。
[じゃあ、どっちもにしよう。 わたしはもう一度同じ言葉を繰り返した。
それ以上は引き留めたりしない。 ひとみちゃん>>24が長く一人でいられないことは 分かっているつもりだから。]
また学校でね。
[わたしはひとみちゃんの背中を見送る。 その光景が、見慣れた日々と重なった。]*
(128) Pumpkin 2021/06/17(Thu) 07時頃
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[一緒に帰ってきたからかな。 わたしが来てから乃絵ちゃんが目覚めるまで、 そう時間はかからなかったと思う。 待合室の時計がそれを教えてくれた。 乃絵ちゃんのお母さんの姿はない。 家族だから、一足早く側にいけたんだろう。
みんなも朗報に集っていたかもしれない。 少なくとも鳩羽くん>>11はたぶんその一人。 さっきまで別の場所にいたんだろう。 わたしも人気の少ない場所でぼーっとしていたから、 わたしたちの再会はたぶんこの瞬間だ。]
(129) Pumpkin 2021/06/17(Thu) 07時半頃
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……うん。
[困ったな。 明日≠フない一日は終わったから、今のわたしには もう、背に手を当ててくれる相棒>>5:71がいないのに。 いつもみたいに笑ったつもりなんだけど、 眉だけが乗り遅れて眉尻を落としちゃった。 右手の人差し指で下がった皮膚を押し上げる。 指先の触れた場所だけ熱かった。]
どうしたの、それ。
[眦への絆創膏チャレンジは成功していたかな>>5:212。 傷を示すついでに、わたしは片眉の救出に成功した。 ぐりぐりと温かい指を押しつけたまま、 わたしは丈ぴったりのダッフルコート>>5:+53を見る。]
(130) Pumpkin 2021/06/17(Thu) 07時半頃
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[持ち帰れなかったこと気になってたから、 置いてきぼりにしてなくてよかったなって。 これで誰も寒くない。隣同士、顔のない人形を思う。]
ありがとね、鳩羽くん。
[傷の理由を聞けた後かな。わたしはそれだけ告げた。 何にとかそういうことじゃないから、それだけ。
鳩羽くんの前にしては口数の少ないわたしだけど、 作り物じゃない顔でニッて笑うから、 今はそれで許してほしいな。]*
(131) Pumpkin 2021/06/17(Thu) 07時半頃
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夜笑国 メイは、メモを貼った。
Pumpkin 2021/06/17(Thu) 07時半頃
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— 明日を知る今日:病院で —
[わたしの沈黙に鳩羽くん>>132は不思議そうな顔をする。 当然だ。わたしは困り眉の世話を焼きつつ目を細める。
わたしは黒板の言葉>>4:497の意味を知らないし、 意味を共有した親友と交わした思い>>5:+38も 本気に傾きかけた冗談>>3:+42も知らない。
鳩羽くんが運命に向き合ったこと>>5:+59も、 たった一度だけ見た泣き顔>>5:+168のその先に ふつうの言葉で特別を伝えられたことも>>5:+143、
昨日の8:50≠ゥらほんの少しの空白を 勿論、わたしが、知るはずなんて、ない。
これまでもそうだった>>0:240。 クラスメイトとの関わりなんてそんなもの。 普通でしょ。悪いことなんかじゃない。]
(218) Pumpkin 2021/06/17(Thu) 17時頃
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[だから、]
さみしかったよ。
[また逢えた今日>>12くらい、 ちゃんと気持ちを言葉にしようと思った。 伝われば、傾げた首も元に戻せるでしょう。
我の強い月だからひとりでも輝けるけど、 やっぱり、お日様が見えないと長くは保たないんだよ。 ……ってね。
わたしの世界は音楽とそれ以外。 こんなことを言う日が来るなんて思ってなかったよ。 乃絵ちゃんが作った世界で、わたしも変わったんだ。
弱くなったなぁって呟いた。 でもいつかそう思った時>>4:501よりヤじゃないから、 わたしの表情は曇らない。]
(219) Pumpkin 2021/06/17(Thu) 17時頃
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[ニセモノの名残なんだって鳩羽くん>>134が言う。 わたしはニセモノを知っていたから、 一瞬ハッとした顔をした。
刃で彫られたあんまり上手くない赤い笑顔>>4:496。 抜け殻みたいだって思った>>5:63傷の一端。 眦の見えない切り傷は涙みたいだなって思ったけど、 ホンモノの顔がわたしの先にあるから。 生きて、いるから。
もしありがとうに理由をつけるとするなら、 そんなところかな。 わたしもよく分かってないから言葉にできなくて、 鳩羽くん>>135のなんではそのままになっちゃうけど。]
なんでも。
ホンモノ [ニッて笑う顔が同じだから、それでいーやって思った。]
(220) Pumpkin 2021/06/17(Thu) 17時頃
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[その流れで、鳩羽くん>>136わたしの頭を撫でる。]
なんで……?
[次に疑問を抱いたのはわたしの方だった。 鳩羽くんの手によって、わたしの髪は乱れていく。 セクハラだとかそういうの、そもそも考えないから、 わたしの頭の中はなんででいっぱい。犬みたいなもの?
痛くない以上拒む理由もなくて、 そうしたら嬉しい気持ちしか残らなかった。 わたしは手の心地よさに身を任せ、目を閉じる。
わたし、乃絵ちゃんたちと一緒に帰ってきたよ。 ちゃんとできたかなぁ。これからも力になれるかなぁ。
お母さんの柔らかくて綺麗な手とも お父さんの少し硬くて大きな手とも違う。 鳩羽くんの手に認めてもらったみたいで、 わたしはその影に隠れて一度だけ深く息を吸った。]
(221) Pumpkin 2021/06/17(Thu) 17時頃
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[滲みかけた雫を宥めてから目を開けて、 わたしは鳩羽くんの方に両手を伸ばす。]
……ちょっと、屈んでもらっていいですか。
[思わず敬語になっちゃった。
しゃがんだ状態で机へ腕を乗せるためには、 背伸びしなくちゃいけないんだよ>>2:526。 この前お返しできたのだって、 鳩羽くん>>4:146が横たわる向井くんの側にいたからだ。
背伸びすれば届かないこともないけど、 オカマウこと>>4:172になってもいいならそれでも。]
ん。
[わたしにも褒めさせてよ。 少し赤い右手で、わたしは鳩羽くんを手招いた。]*
(222) Pumpkin 2021/06/17(Thu) 17時頃
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— 病院・鳩羽くんと —
[鳩羽くん>>238が「元々強かったの?」って聞くから、 わたしは「無敵だったよ」って答えた。]
わたしがわたしでいられるなら、 他はなんでも良かったからね。
[いつか話した役割>>3:132は、そのままわたしのこと。
わたしがわたしのまま何かができるなら力を貸すよ。 そうじゃないなら自分で頑張って。 結果がどうなろうと、あとは知らないけどね。
わたしが大切なのはわたしと夢ばかりで、 周りがどうなろうとどっちでもよかった。 周りにどう思われようと何でもよかった。
ま、それがいけなかったんだけど、今は置いといて。 許容に見せかけた無関心はわたしから友達を奪う。]
(268) Pumpkin 2021/06/17(Thu) 23時頃
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[わたしは友達が少ない。
深く関わろうとしても行き先は諦めと苛立ちで>>0:525、 それを生み出しているのはわたし自身>>3:125。
友達なんかいらないって思ってたわたしが今更、 誰かをそう呼んでいいとは思ってないよ>>0:964。]
(269) Pumpkin 2021/06/17(Thu) 23時頃
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[……思ってなかったんだけどなぁ。
鳩羽くんに精神世界のことを教えてもらった時>>3:11、 わたしは乃絵ちゃんならって思った。 乃絵ちゃんなら、わたしでも力になれるかも。 友達のためなら、わたしもがんばれるかも。 わたしにもワルモノじゃない役割が許された気がした。
ひとみちゃんといた時>>2:227もそう。 鳩羽くんの声>>2:192がひとみちゃんと一緒に わたしの恐怖を拭ってくれた。
鳩羽くんは、いつだってわたしに道を教えてくれる。]
(270) Pumpkin 2021/06/17(Thu) 23時頃
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ちょっとどころじゃなくて、 わたしの中で、鳩羽くんはずっとなにかだったよ。 だから寂しかったんでしょ。
[音の前に休符がついた返答>>237へ補足するように、 わたしは鳩羽くん>>238の言葉へ頷いた。
わたし以外不要だった内側。 いつの間にか役割を許せる人が増えていたんだなって。 ようやくわたし、気づけたの。
わたしだけがいつの間にか変わったところで わたしに対する印象は変わらない訳だから、 勇気のないわたしは未だ関係に名前をつけない>>0:343。
軽口の返答にしては少し重かったかな。 へらりと笑うことでバランスを取ってみるつもり。]*
(271) Pumpkin 2021/06/17(Thu) 23時頃
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[そんな風に思ってたのに、ホンモノも軽い笑みも 唐突な手のひらに飛んでっちゃった。 鳩羽くん>>239がわたしを真似る。]
ふーん……。
[見上げたところで鳩羽くんの考えが分かる訳もなく、 わたしは手の心地よさに身を任せることにする。
わかんないよ。 わかんないけど、
ずっとどこか張り詰めていたものが緩んだ気がした。 涙腺まで緩んじゃったから目を開くのが遅れて、 わたしの表情を見られてるなんて気づかなかったよ。]
(272) Pumpkin 2021/06/17(Thu) 23時頃
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[今日何回目のなんで、かな。 わたしは鳩羽くん>>240の疑問に答えるため、 屈んだ頭に手を伸ばす。]
わたしもやりたいから。
[近づいた視線、 生存確認した時>>2:406みたいだなって思ったけど、 どちらかといえば鳩羽くんが頬杖をついた時に>>3:68 似てる。だからわたし>>3:127はまた近いなって思った。
鳩羽くんの顔がひとみちゃんより遠く、 乃絵ちゃんより近い位置にあって。 わたしは望み通り両手を伸ばした。
タオルもコートも介していない手で、 わたしは鳩羽くんの明るい髪を撫でる。]
(273) Pumpkin 2021/06/17(Thu) 23時頃
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……ゴールデンレトリバー。
[実際触れたことはないけどそんな感じ?
じんと痺れた右手は最初ぎこちなかったけれど、 次第に髪に指を通すのにも慣れて、 わたしはきっと楽しそうな顔をしていたと思う。]
(274) Pumpkin 2021/06/17(Thu) 23時頃
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……痛かった?
[一頻り撫でた後、わたしの指先は鳩羽くんの眦を漂う。 さすがに触れることはしないけれど、 どうしてもニセモノが頭に浮かぶのは事実だ。]
おかえり。
[頑張ったねとか大変だったねはなんか違うから。 ホンモノの鳩羽くん、おかえり。
わたしはもう一度だけ、労うみたいに髪を梳いた。]*
(275) Pumpkin 2021/06/17(Thu) 23時頃
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— 後日・学校 —
[HRを終えれば、わたしは今日もすぐに席を立つ。
そういえば、同じクラスになっても ひとみちゃんとは教室から連れ立つことは少ない。 約束をしないわたしたちらしい、3年間培った習慣だ。
家に帰っても特にできることはないんだけど、 今は受験勉強ってものがある訳だし。]
……どうしたの?
[頭の中で組んだ計画はすべて白紙に戻る。 でもわたしは目の前の彼じゃないから動揺したりしない。 机の前に向井くん>>249が立つのを見て、 わたしは持ち上げた鞄を机に戻した。]
(280) Pumpkin 2021/06/17(Thu) 23時半頃
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[拳が開いて、短い爪を持つ指が解けていく。 中に入っていた燻んだ銅色にわたしの心臓が跳ねた。 わたしが視線を上げると、向井くん>>250と目が合う。 どうしようもない罪悪感>>4:11を思い出す前に、 わたしは吸った息を喉の奥に詰めた。]
……いいよ。 せいさん、しにいこっか。
[これはいつ頃のことだったかな。 もしまだ乃絵ちゃんが入院しているなら、 置いていった10円分>>3:590も買っていくつもり。
わたし、駄菓子には疎いから誰かいてくれると助かる。 二人寄ればどんな知恵が出るかな。]
(281) Pumpkin 2021/06/17(Thu) 23時半頃
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向井くん自転車だよね。 わたし徒歩だから、誰かに借りれたりしないかな。
[自転車の話をすると、材料の買い出しを思い出す。 あの時は別々に分かれたけど、今度はそうもいかない。 わたしは教室の外へ歩きながら向井くんへ尋ねた。]*
(282) Pumpkin 2021/06/17(Thu) 23時半頃
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— 病院・ひとみちゃんと —
[わたしが伸ばした手は、 無事にわたしより小さなひとみちゃんの手を包む。 ひとみちゃん>>251の指にあの傷はもうなくて、 それに安堵しながらもわたしは同じハンカチを重ねる。]
ひとみちゃん。
[ひとみちゃんの明るい声が懐かしくて、嬉しくて。 わたしはハンカチの上からひとみちゃんの手を撫でた。]
(301) Pumpkin 2021/06/18(Fri) 00時半頃
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[不意にひとみちゃんが見えなくなったと思ったら、 わたしの身体に衝撃が伝わる。 ひとみちゃん>>252が抱きついたんだって理解するのに 少し時間がかかった。
ほとんど身長の変わらないひとみちゃんで良かった。 不意打ちを喰らったわたしは何歩か後ろに下がる。 行き場を失った手をおそるおそる背中に当てた。
ひとみちゃん。数少ないわたしのともだち。 明るい声に涙が滲んでいたら気づけたけどどうだろう。
わたしはひとみちゃんの言葉にうん、うん、と 何度も頷きながら背中を撫でた。]
(302) Pumpkin 2021/06/18(Fri) 00時半頃
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[離れたひとみちゃんが笑っていたら わたしは迷ってからちょっとだけ近づいて、 今度はわたしの方からひとみちゃんに抱きついてみよう。
ぎゅって。音にしたらそれくらい。 挨拶に似たハグで、わたしはひとみちゃんを解放する。
ひとみちゃんの手に改めてハンカチを差し出したら、 その間から薄青いぼたんがころんと飛び出した。]
わたしが頑張れたの、お守りのおかげだよ。 力を貸してくれてありがとう。
……ただいま。
[わたしは手のひらで受け止めたお守りを指で撫でた。 ひとみちゃんに返そうとするけどどうかな。
離れていった子どもの足跡を思う。 ひとみちゃんが望むならわたしの手のひらは閉じる。]
(303) Pumpkin 2021/06/18(Fri) 00時半頃
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[わたしたちの高校生活は残り少ない。 あとどれだけひとみちゃんへ声をかけられるだろう。 そう考えると少しだけ切なくなるけど、 今は全員で取り戻した日常を噛み締めようと思う。
手始めに、あの時の約束>>2:335を、 夕日に染まった通学路で。
わたしは笑顔でひとみちゃんの背を見送った。]**
(304) Pumpkin 2021/06/18(Fri) 00時半頃
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— 病院・鳩羽くんと —
[鳩羽くんは明るくてノリのいい、元気なクラスメイト。 わたしは鳩羽くんのことをずっとそう感じていて、 鳩羽くん>>293もわたしのこと知らないって思ってた。
だからわたしたちの会話はいつも楽しくて、 表面をなぞるようで>>0:240。 そのつもりだったのはわたしだけかもしれないけど、 鳩羽くん>>3:67も踏み込まないでいてくれたと思う。
気づいたらいつの間にか名前を呼ばれていて>>0:269 そのことに気づいたわたしは驚いた>>0:236。 結果、置いてきぼりを喰らった呼び名>>0:343と同じで わたしの認識は鳩羽くん>>294の数歩後ろを歩いてる。]
(354) Pumpkin 2021/06/18(Fri) 19時頃
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[ずっと「なにか」だったって自分で言ってるのにね。 勇気のないわたしは、それ以上の名前をつけられない。
鳩羽くんが笑って、また声が振ってくる>>295。
手のひらと言葉にわたしの内側が認められたみたいで。 わたしが目を開くのに時間がかかったのはそのせいも あるんだから、犬扱いは照れ隠しってことにしといて。]
あはっ、ごめんごめん。 わんちゃん触ったことないからさ、 こんな感じかなぁって思っちゃって。
[わたしは鳩羽くんの>>296ツッコミに破顔しながら、 あの時>>4:146届かなかった髪>>297を梳いて撫でる。 力加減が分からないから、指先は前より優しいものだ。 わたしの声は半音下がるどころか跳ねてすらいた。]
(355) Pumpkin 2021/06/18(Fri) 19時頃
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[眦>>298へ指を伸ばす頃には声音も落ち着く。 絆創膏が貼られているとはいえ直接触れたりはしない。 ただ見えない傷を想像するように、指が横に流れた。]
……うん。 それなら泣いてる方がいいよ。
笑ってる方がもっと悪くないかもしれないけどね。 もう、もやもやしない?
[鳩羽くんの方が先に帰って来たのに、 わたしが「おかえり」って言っても ちゃんと「ただいま」って返してくれた。
寄り添うことが苦手で、伝えることも不器用で。 つまりは人と向き合うことが下手なわたしだけど、 意味がきちんと届いたなら、それ以上望むことはない。 わたしはもういーよって鳩羽くんの頭から手を離した。]
(356) Pumpkin 2021/06/18(Fri) 19時頃
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[……ん、だけど>>299]
……いーよ、それは。
[鳩羽くんがわたしまで出迎えてくれるものだから、 わたしは落ち着かなくなって目を逸らす。 その上簡単に壁を踏み倒すものだから>>300、 わたしは自由になった手をわたしの頬に持っていった。]
別に……撫でて、とか、言ってないんだけど。
[まるで喜んでたみたいじゃん。 わたしの嬉しいこと、ちゃんと伝わってたみたいじゃん。 手よりも頬が熱くなっているのが分かった。
誰にどう思われてもいいって、伝えることを放棄して、 その結果、わたしの夢は潰えたのに。 そんな簡単にわたしの気持ち、言い当てないで欲しい。]
(357) Pumpkin 2021/06/18(Fri) 19時頃
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[弱くなったら黙ることも隠すこともできなくなって いろんなことが下手になっちゃったけど。 相手にわたしの好きが伝わるなら、
それで、いっかぁ。]
(358) Pumpkin 2021/06/18(Fri) 19時頃
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ありがとう、れんくん。
[わたしは鳩羽くんを見上げて笑った。 うん、笑ったつもり。 こんなに晴れやかな喜びは久しぶりで、 どんな顔してるのかわたしもよく分かってない。
肺の奥まで晴れやかな空気が広がって息をしている。 止まりかけの心臓も優しい音を立てて、すこし煩い。]
(359) Pumpkin 2021/06/18(Fri) 19時頃
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[名前を呼び合ったら友達じゃないけれど、 踏み倒された先にわたしも一歩進んでみたくなったから。
申し訳ないんだけど、わたし頭がいい訳じゃない。 新しい進路先、中の中>>0:762だし。 引導は読めてもみんなの漢字までは覚えてない。
でも音だけなら分かるよ。 だからわたしが呼ぶ鳩羽くんの名前は 少し幼いかもしれないけど、今はそれで許してね。
鳩羽くんが離れて、わたしたちの距離は元に戻る。 でもわたしにはこれまでよりずっと鳩羽くんが 近くに感じられて、朝焼けみたいに笑った。]*
(360) Pumpkin 2021/06/18(Fri) 19時頃
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— 病院・ひとみちゃんと —
[わたしが抱きしめたひとみちゃんは、 唯一手を血に染め触れたひとみちゃん>>4:10と違った。 柔らかくて、温かい。お腹に穴も空いていない>>3:+2。
そして、わたしの手には青いボタンがあった。]
うん……うん。
[ひとみちゃん>>306の指がお守りを摘む。 手のひらにぎゅっと握りしめる動作は、 わたしがあの校舎で繰り返し行ったものだ。
「ぎゅって握ってると、落ち着くから」>>2:197
ひとみちゃんの声を、わたしは今でも覚えている。 わたしがずっとお守りを肌身離さず持っていたのは、 何度も握りしめたのは、 ひとみちゃんという友達がいたからだった。]
(361) Pumpkin 2021/06/18(Fri) 20時半頃
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[これはただのボタンじゃない。 ひとみちゃんが託してくれた、大切なお守りだったから。
ひとみちゃんがくれるサイコーとすごいに、 わたしは共感するように頷いた。]
(362) Pumpkin 2021/06/18(Fri) 20時半頃
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[ひとみちゃんは手のひらの内側へ「おかえり」と告げる。 ぼたん。わたしは物の名以上の響きを感じて、 ひとみちゃん>>307へ首を傾げた。]
ぼたん、ちゃん。
[ひとみちゃんが教えてくれた大切な友達のこと。 約束を果たす>>2:344のではなく、 ひとみちゃんがただ教えてくれた名前。
わたしは目を閉じて、ぼたんちゃんを思い浮かべた。 子どものような小さな足跡を覚えている。
わたしは目を開いて、 ひとみちゃんの握りしめた拳へそっと触れようとした。 叶うなら、わたしの指で表を何度か撫でてみよう。]
(363) Pumpkin 2021/06/18(Fri) 20時半頃
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ありがとう、ぼたんちゃん。 おかえり、ひとみちゃん。
[わたしにはぼたんちゃんの姿は見えない。 けれど今、わたしはぼたんちゃんがいたことを ひとみちゃんと確かに共有した。]
(364) Pumpkin 2021/06/18(Fri) 20時半頃
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[わたしたちの放課後は、HRが終わってすぐのこと。 待ち合わせは昇降口。ひとみちゃんが先に来ていたら、 「一緒に帰ろう」って声をかける。
3年間、わたしたちが積み上げた時間は、 ふたりだけの日常をたくさん作った。]
うん、また放課後にね。
[ひとみちゃん>>309の“待ってる”は日常とすこし違う音。 一言目を口にするまで時間がかかるかもしれないけれど、 必ず伝えるから”待ってて”ね。
もうすぐわたしたちの3年間が終わる。 それまでには、必ず。
わたしは終わるまでのことを考えてた。 寂しいなぁって、ひとみちゃんの背を見てた。]*
(365) Pumpkin 2021/06/18(Fri) 20時半頃
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— 後日・向井くんと —
[自転車に乗ったのはいつ振りだろう。 向井くん>>321が声をかけてくれた人から借りた自転車。 (わたしそういうお願いできる人いないからごめんね) 最初こそややもたついたけど、 身体はバランスの取り方を忘れていなかったみたいで わたしは風を切りながらいつもと違う道を眺めた。
自転車でびゅんと風を切れてよかった。 徒歩だったら、 わたし何を話していいか分からなかったかも。
車道の端、一列になって、 店を知っているらしい向井くん>>323の背中を追う。]
(372) Pumpkin 2021/06/18(Fri) 21時半頃
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[商品が店内にぶら下がったり、透明な容器に詰まったり。 わたしは店内を珍しそうに眺める。
スーパーに売っているような物しか知らないわたしは 消費税がいらないってことも知らなくて、 向井くん>>323の話に1円玉を引っ込めたり、 乃絵ちゃんが苺が好きなことを話したり。
これまでのようなゆったりしたやり取りの中、 お小遣いめいた予算を握りしめ、10円の行き先を探す。]
(373) Pumpkin 2021/06/18(Fri) 21時半頃
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[やっぱりしょっぱい物より甘い物がいいな。 向井くんの声が聞こえれば>>324、 さっきの検討の続きかと思って視線を向ける。]
……うん。たぶん、そう。 そっかぁ。一枚落ちてたのかぁ。
[思ったのと違う話。 でもそのための今度≠セから、わたしは驚かない。
向井くんがただ事実を並べるように話すから、 わたしは手元のラムネを指二本で数度転がしながら 淡々と答えた。]
(374) Pumpkin 2021/06/18(Fri) 21時半頃
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[向井くん>>325のテンポは 最後まで変わらなかったような気がする。 だからこそ、わたしの息はすこし苦しい。]
……怒ったって、いいのに。 わたしが変なことしなきゃ、 苦しいことがひとつ減ってたかもしれないでしょ。
[楽しいことに水を差したくなくて、 わたしさえ黙っていれば平穏が続くならいいって。 たとえそれが事実だとしても、結果はご覧の有り様だ。 わたしはラムネを手放して向井くんの方を見る。]
ごめんね。
[わたしの口からはまた>>3:399謝罪が飛び出した。 謝るのって、罪悪感を吐き出す行為みたい。 そんなことしたい訳じゃないけれど、 わたし、それ以外に向井くんへ伝える音を持ってない。]
(375) Pumpkin 2021/06/18(Fri) 21時半頃
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[ほろりと零れた向井くん>>3:362の話を思う。 あれ以来、わたしからは話を持ちかけていなくて、 驚いたり>>3:461焦ったり>>3:634、 それから希望>>3:463に持ちかけた約束>>3:590が 微かな笑み>>3:635に受け止められるまで。
校舎の時は進んでも、この気持ちだけがあの日のまま。
言わなきゃ、伝わらない。 じゃあ、今何を伝えたらいんだろう。
ラムネを手放したわたしの両手は空っぽだった。]
(376) Pumpkin 2021/06/18(Fri) 21時半頃
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わたしが素直に報告したらよかったし、 そもそもわたしが10円に気づいたらよかったんだよ。
そんなこと言っても、意味ないんだけどね。 分かってるんだけど、
[わたしがどうしてこんなに気にするのかって言われても 正直わたしもよく分かってない。 人に関わると、わたしはよくわたしが分からなくなる。
わたしだけならもっと簡単なのにな。 そう思うけど、わたしはもう無敵には戻れないから。
ただ、望むことがあって、譲れない部分があって、 それならできる限り叶った方がいい。 一番大切にしていることのように思えたから、 わたしが勝手に守ろうとした。
これは、勘違いの果ての産物。]
(377) Pumpkin 2021/06/18(Fri) 21時半頃
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……一緒に数えてたら、すこしはラクだった?
[わたしは向井くんから視線を落として 小さなチョコをひとつ摘んだ。甘い苺味。 せいさんのための1を選び、わたしは向井くんを見る。]*
(378) Pumpkin 2021/06/18(Fri) 21時半頃
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— せいさん≠フ日 —
[自転車に乗ると、こんなに風が冷たいと思わなかった。 ピリピリと頬の上を寒気が跳ねていく。 手袋だけでもして良かったなって、わたしは思った。
話しかけようとして、わたしの中にも冬の風が飛び込む。 喉を撫でて鼻へと抜けていった。 その感覚だけは、悪くなかったかも。
わたし、口数は少なかったけれど、 向井くん>>399に気持ちいいねぇとだけは伝えられた。]
(432) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 07時半頃
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[そう、あんまり来なかったの。>>400 こういう所、友達とは来ても両親とは来ないでしょう。
わたしは向井くんと情報交換をしながら狭い通路を渡る。 うっかりすれば裾で商品を払ってしまいそうで、 時折片手でコートの裾を引き寄せた。
乃絵ちゃんが苺味が好きだって話をしてからは、 わたしも向井くんもピンク色のパッケージを探すことが 増えたんじゃないかな。
最初、わたしが一方的にぎこちなかった会話は、 次第に駄菓子屋さんの空気へ解けていく。]
(433) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 07時半頃
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[向井くんがその話をし出したのはほんの少し突然で、 けれど当然のこと。わたしは疑問を向井くんにぶつけた。 その返答>>401が思ったよりも柔らかくて、 わたしはどうにも不思議そうな顔をしてしまう。]
そう、かな。 発端はわたしなんだから。 ……って、わたしは思っちゃうけど。
[わたしがちゃんと自分の意思を伝えていたら お母さんをワルモノにしなくて済んだように。 根本から切り落とせば花は咲かないでしょう。
その行為に実のところ、 向井くんの責は一切ないと思っているものだから、 共犯者と括られてもピンと来ない顔をする。
でも、ね。]
(434) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 07時半頃
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……ふふ。それは、そうかも。 あんなにしっかり準備したのにね。
[向井くんが挙げたのは、罪なんて音よりもっと軽いもの。
大きな事件、何にもなかったのにね。>>0:623 チャート>>0:700はそれはそれは上手にできたし、 小銭入れ>>0:702だって持ち寄った道具だけで完成した。 販売係スイッチだって、ちゃんと仕事をしたはず。>>1:91 わたしたちの班は、とびきり平穏で平坦だったはず。
……だったんだけどなぁ。 わたしは苦笑まじりに向井くん>>402を見る。 手のひらにぽつんと佇むは、10円より鮮やかな駄菓子。
子どもならとびきりの宝物に見えたのかな。 今のわたしはもう子どものままじゃいられなくて、 小さいなぁって思った。]
(435) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 07時半頃
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[一定のテンポで語られる向井くんの話。 わたしは暫くの間、向井くんにボールを預けた。 相槌は合間の謝罪だけ。
向井くん>>403はゆるりと首を横に振る。 わたしも追いかけるように首を横へ振った。]
わたし……も、向井くんも、均したかっただけ。 相手に伝えていれば、気づけたこと。
……ってことで、いいの。 いや、いいのっていうか、そうなの、かな。
ただ、タイミングが悪くて、 それは誰にでも起こりうることで。 わたしたちは、人間なんだから。
[考えを解いていく様をそのまま言葉にしたみたいに、 わたしは手探りで向井くんの考えをなぞる。 同意を求めた訳じゃないから声は次第に縮んだ。]
(436) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 07時半頃
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向井くんは、おっきいねぇ。
[わたしは思った通り大きな向井くん>>404を見上げた。
わたし、あんまり失敗したことない。 わたしが優秀な訳じゃなくて、失敗の定義が少ないだけ。 小学校の頃クラスメイトを怒らせたことも、 周りがわたしのこと何て言ってても、失敗じゃない。
ね。どうでもいいことばかりが周りにあると、 エラーなんてほとんど起きなくなるでしょう。
でも、いつの間にかそうじゃないこと≠ェ増えていて、 わたしの周りにはどうでもよくないこと≠ェたくさん。
戸惑う新人のわたしとは違い、 向井くんはどこまでも穏やかだ。 どんなにわたしが抱え込もうとしても、 向井くん>>405はふわふわと半分を攫ってしまう。]
(437) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 07時半頃
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[敵わないなぁって思ったけど、それと同時に、]
いや、おっきいんじゃなくて……等身大。 ぴったり、なのかな。
[わたしから見上げたら大きく見えただけで 向井くんはずっと向井くんのまま生きてる。 わたしは腑に落ちたような心地で表情を和らげた。]
今回は、ね。内緒にしよ。
[次なんてないだろうけど、きっとそういうことじゃない。 わたしは無粋なことは言わずに、ただ頷いた。 空いた手でひとつチョコを掴み、向井くんの前でふたつ。
これは10円を置いてった世界の主さんとわたしの分。
わたしは向井くんに続いてせいさん≠終える。 向井くんの筆箱から>>250もわたしのお財布からも、 ついに10円玉が消えてなくなった。]
(438) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 07時半頃
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[帰りは歩かない? って提案したのはわたし。 でも向井くんの平穏を乱すようならやめる。 どちらにせよ、帰り道は向井先生>>407による フーセンガム講座をお願いしたかもしれない。
結構切れやすいんだね、とか、 何個かまとめて食べないと足りないね? とか。 わたしは普段の授業よりずっと真面目な生徒として 話を聞いていたと思う。
だから帰りは行きよりずっと早く着いた気がした。 いつの間にか戻ってきた学校で、 わたしは規定の位置に自転車を返却する。]
(439) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 07時半頃
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今日はありがとう。
[わたしは自転車から手を離し、向井くんの正面に立つ。 冬の太陽は短くて、夕焼けも終わりの頃だったかな。]
文化祭、楽しかったね。 本当に楽しかったの。
[わたしが向井くんに渡すのはもう「ごめん」じゃない。 まだ暫くゼロにはならないかもしれないけど、 わたしの心を満たす思い出は明るい音をしている。
沈みかけの夕陽が眩しくて、わたしは目を細めた。 そのおかげでいつも以上に笑顔になれた気がする。]
(440) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 07時半頃
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……それじゃ、ばいばい。
[この前みたいに後ずさりで逃げるんじゃなくて、 今度≠ヘちゃんと向井くんを待つよ。 それが終わったら、別々の道に進もう。
わたしは一人歩きながら お行儀悪くフーセンガムを口に入れて、 上手に膨らませる練習を始めた。]*
(441) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 07時半頃
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— 乃絵ちゃんとわたし —
[『くれいし めい』と『くろさわ のえ』。 わたしたちの出会いにこれ以上の説明はいらない。
毎年恒例のクラス替えを終えた3年9組の教室。 見知ったクラスメイトもいたし、 唯一の友達であるひとみちゃんもいた。
先生がやって来るまで、それぞれが思い思いに過ごす。 女の子の中には、 新しいグループに馴染もうとする人たちもいたかな。
わたしは自分から誰かへ話しかけに行くこともせず、 ただ自分の席でぼんやりと過ごしていた。 まだわたしが月曜の放課後に巡り会う前のこと。 わたしの音楽はもう衰え始めていて、 すべてに無気力だった新学期初日。
乃絵ちゃん>>0:143は、わたしの後ろの席だった。]
(442) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 07時半頃
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— 乃絵ちゃんのお見舞い —
[わたしは多くの視線を浴びながら病院の廊下を歩く。 ちゃんと規定の時間内だよ。怪しい人じゃないよ。 わたしは看護師さんに堂々と挨拶をしながら、 通い慣れた乃絵ちゃんの病室へたどり着いた。]
乃絵ちゃん。
[乃絵ちゃんはいたかな。 おそらく個室である部屋へ、いつものようにお邪魔する。
わたしがここに来るのはもう数回目になる。 毎日はどうしても来られないけど、 わたしはできるだけ顔を出しているつもり。 毎週金曜は必ず来るねって最初のお見舞いで伝えた。 今日はその、何度目かの日。]
(443) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 07時半頃
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今日はね、お土産を持って来たんだよ。
[わたしは荷物≠置いてベッドの横へ腰掛けると、 鞄の中からいちご味のチョコとフーセンガムを出す。 とある筋の方にご同行願った駄菓子二選だ。]
それと……これ。
[わたしは荷物≠サイドテーブルの上に置いた。 乃絵ちゃんには部屋に入った時から見えていただろう。 だってコレは、さすがに鞄には入り切らない。]
暫くはわがまま叶えられないから、 ずっとどうしようかって考えてて。
[わたしが撫でたのは小さなおもちゃのピアノ。 グランドピアノのシルエットから わたしは視線を乃絵ちゃんへ移した。]
(444) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 07時半頃
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どんな曲が、聞きたい?
[爪の短い指先を鍵盤に沈めると、 高いチープな音が病室の中、密やかに鳴る。]*
(445) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 07時半頃
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— 月曜の放課後 —
[年が明けると受験の色がより濃くなって、 わたしたちの登校日は少しずつ減っていった。
それでもわたしは毎週必ず音楽室へ赴く。 授業のない日までヨーコ先生の所へ行ったら、 さすがにちょっと苦笑されちゃった。
でも先生は約束通り部屋を開けてくれて、 わたしは残された数少ない時間をここで過ごす。]
(446) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 07時半頃
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[柊くんはどうしていたかな。 柊くんが来る日、 わたしの音楽はただ一人へ向けたものになる。 纏う空気を眺めたり、時には直接尋ねながら、 限られた時間に寄り添う音楽を奏でた。
やっぱり技術は完全に追いつきはしていないけど、 あてもなく弾いていた頃よりずっと筋の通った音がする。
そんな時間を何度過ごせただろう。 わたしは30分の終わり、柊くんへ話しかけた。]
渡したい物があるの。
[鞄からある物を取り出し、わたしは柊くんの所へ向かう。 今の観客席はどこだったかな。 いつものドアの前? それとも別の場所? どこでもテーブルはないから、手渡しするしかない。]
(447) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 07時半頃
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はい。
[ビニールの音と共に現れたのは購買のクリームパン。 いつかわたしが奢ってもらった物だ。]
最初はお金を返すつもりだったんだけど、 もうすぐ食べられなくなる物だから。 甘いの平気?
[いつの間にかカレンダーは新しいページに変わって、 わたしたちはもうすぐここに入れなくなる。 3年に上がったばかりの頃、 許可もなく迷い込んだ春が近づいていた。]
返すの遅くなってごめん。 お腹空いてたから、すごく助かったよ。
[今更だとしても心残りはヤだったから、 わたしはまるいクリームパンを柊くんへ差し出す。]*
(448) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 07時半頃
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— せいさん≠終えた日 —
[もっと子どもの頃なら走って怒られたかもしれない店内、 今のわたしたちには窮屈で、上手に身動きもできない。
大人になるってこういうことなのかな。 いろんなものに雁字搦めになって、 自由に手足が動かなくなる。 周りを壊していいならもっと自由になるけど、 わたしたちはたぶん、そういうタイプでもない。
ままならないねぇ。 わたしは向井くん>>473に頷きながら、 子どもじゃ届かない位置にある商品へ手を伸ばした。]
(537) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 16時頃
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スイッチが役に立ったなら嬉しいよ。 それでも、さ。 どうにも、ロボットにはなれないねぇ。
[わたしたちは人間だから、迷うし、間違う。 プログラミングされた行動じゃ生きていけない。
わたしの無駄だらけの言葉を向井くん>>474は待ってる。 お互いテンポはゆっくりだけど、 置いていくのはいつもわたしの方だった気がするから、 すこしだけ新鮮だなって思った。]
(538) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 16時頃
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……うん、そうだね。 もうちょっと、力を抜けたら。
[わたし、そういうところはやっぱり不器用だから、 今はまだできたらいいなって願望。
手始めに、発端を挟まったそいつ>>472に押しつけて、 その先の誰かを考えるのをやめた。
向井くん>>475が静かな声で話すから、 わたしも水が身体へ染み込むみたいに すんなり受け入れられたのかも。 あの日、校舎の果てでも思い浮かべた向井くんの声だ。]
(539) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 16時頃
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[向井くんらしいな>>476ってわたしは思う。 わたしの世界の向井くんはこういう人。
突発的な出来事に弱くて、 だから丁寧に事前に準備をして、 真っ直ぐに一直線に、自分の決めた道を進もうとする人。
時にはそれが叶わなくて足元を見失ったりするけど、 ……今の向井くんは、それでも大丈夫な気がした。
だって、「おおらかでいたい」って言う声が、 わたしの耳に優しく届いたから。 もし石橋がなくなっても、苦しくなっちゃうかもだけど、 それでも、また前に進めるんじゃないかなって。]
(540) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 16時頃
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[やっぱり全部、想像ではあるんだけど。
今のわたしは、向井くんのために泣いてくれる人が いるってこと、知ってるから。 普段、あんな顔しないのにね。初めて見たよ。 あなたは愛されてる。
だからこそ、もう誰の涙も廊下を濡らすことが なければいいなって、わたしは思う。
思いが滲んだわたしの表情は、きっと優しいものだ。]
(541) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 16時頃
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あは、お店を出ても大きいままかもよ。 向井くんに追いつくには、まだちょっと遠いけど。
[眩しそうに笑ったまま、わたしは向井くんの背中を追う。 無事せいさん≠終えたわたしたちが外に出た時、 わたしはまだ大きいままだったかな。
……結果は分かってるけど。今後に期待、ということで。 成人するまで可能性は残るって聞いたことあるし。]*
(542) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 16時頃
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[そうしてわたしたちは帰路につく。 先生>>477の作るフーセンは綺麗に膨らんで、 日没前の濃い橙色に染まっている。
わたしも挑戦してみはするけれど、 ぷすー……ってすぐに萎んじゃうから ゆっくりゆっくり、先生の声に合わせて挑戦する。
ガムの味がすっかりなくなった頃、 小さな丸を作ることには成功したんじゃないかな。 わたしたちは夕暮れの自転車置き場で向かい合った。]
そんなに全部、持っていっちゃうの?
[置いていったっていいのに。でも向井くんにとって 10円玉が喉につっかえたままの異物でなくなったなら、 楽しいって言えることになったなら>>3:362、 それでいーやって思う。それがいーやって思った。
だからわたしは向井くん>>478に、うんって頷いた。]
(543) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 16時頃
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[ばいばい。で、めでたしめでたし。 物語をおしまいにしようとしたわたしに声がかかる。
待ってたよ。待ってるよ。>>479 だからわたし、向井くんの言葉を真正面から受けた。]
……それ、誰から聞いたの。
[あ、誤解しないでね。わたしの声に咎める音はない。 答えを聞きたがっている訳でもなくて、 どちらかといえばちょっと気まずそうな、 あるいは恥ずかしそうな、そんな声。
さらに向井くん>>480が次の今度≠増やすから、 わたしが本の裏表紙を撫でることは叶わない。]
(544) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 16時頃
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…………まだ、分かんない。 けど、よかったって思えたら、いいな。
[わたしは現実に戻ってきてから初めて心情を零した。 深呼吸、二回。口の中のガムがもたつく。]
だからその今度、ちょっと先になるかもよ。 それでも、いいなら……、
また、会おうね。
[ちょっと先とか、いつかとか、 わたしが向井くんに渡せる言葉は曖昧で、 未来の予定に記入するにはあまりにも弱々しい。 でも、できたらいいなって気持ちは本当だから、 わたしは夕暮れに紛れて微笑んだ。
今度はわたしが見送ろうかな。 向井くんが小さくなって、わたしも反対へ歩き出す。]
(545) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 16時頃
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[またね、またね。 ——いつか、またね。]*
(546) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 16時頃
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— いつかの金曜日 —
[月曜の放課後は音楽室。 昇降口でひとみちゃんに会ったら一緒に帰って、 金曜日は乃絵ちゃんのお見舞い。
中学校の頃にはどれひとつなかった予定、 何なら内ふたつは3年生になってからのものだ。
わたしの世界はピアノを中心に回っていたのに、 いつの間にかそれ以外のことがたくさん増えていた。 それ以外に名前がついて、手放せなくなってた。
どうにも、困っちゃうね。]
(551) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 17時半頃
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そう、駄菓子屋さんで買ってきたの。
[待ってたって乃絵ちゃん>>489が言うから、 わたしの心は弾む。 わたしがこんな気持ちになる人、多くないんだよ。 乃絵ちゃんはそのこと、知ってるのかなぁ。
乃絵ちゃんがお土産>>490を眺めている隙に、 わたしは病室へたどり着くまでジロジロ見られていた 原因を取り出した。]
(552) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 17時半頃
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[乃絵ちゃん>>491の反応に満足したわたしは、 サイドテーブルの高さを調節して、丸椅子に腰掛ける。 乃絵ちゃんのリクエストは可愛い曲。>>492 わたしはすこしだけ考えて分かったって頷いた。]
じゃあ、いくよ。
[鍵盤も小さくて、音域も限られていて。 だからわたしが奏でるのは童謡みたいに簡単な曲。 メロディーラインばかりで演奏というには憚られたけど、 幼い頃を思い出すようにわたしは鍵盤に触れた。]
(553) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 17時半頃
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[おもちゃのピアノは音量も小さければ、伸びもない。 ちょっとオルゴールみたいだなってわたしは思った。 それでも個室とはいえ、長々と続ける訳にもいかない。 わたしのミニコンサートは本当にミニミニで終わる。 乃絵ちゃんが拍手をするから、大袈裟だよって笑った。]
おやつ?
[わたしがピアノから手を離したら、 乃絵ちゃんがおやつがあるって教えてくれた。
怪我だから、食事制限は少ないのかな。 お土産にお菓子持ってきたわたしが言える立場じゃ ないんだけどね。だって小っちゃいし。わたしは頷く。]
(554) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 17時半頃
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あ……。
[乃絵ちゃんが取り出したのは苺大福。 わたしはお店で売っている物しか見たことない。
でもわたしには思い浮かぶ出来事があった。 乃絵ちゃんが好きな苺の話。 お母さんが手作りしてくれたこと。
祈るように乃絵ちゃんの帰還を待ってた、 あの夜のこと。
確かめるように乃絵ちゃんの顔を見た。]
(555) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 17時半頃
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よかった、ねぇ。
[はじめてお見舞いに来た時とか、その次とか、 わたし、乃絵ちゃんの調子やこれからのことについて 聞けたかな。たぶんわたしから尋ねたと思う。
その中にお母さんのことも含まれてたかもしれないけど、 こうして改めて目にして、やっとほっとしたの。 わたしは気持ちを正直に表情へ出す。]
折角の苺大福なのに、わたしも食べていいの?
[わたしは乃絵ちゃんのために作ったって思ってる。 だからそう尋ねて、 届きやすいようにウェットティッシュをずらした。]
(556) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 17時半頃
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[冬の苺はちょっぴり酸っぱくて、 でもそれが甘い餡子とちょうどいいバランスになってる。 わたしはもっと甘くてもいいけど……それは好みの話。
わたしはおいしい苺大福に舌鼓を打ちながら、 途中、口の中を空にして乃絵ちゃんに話しかけた。]
……わたし、本当は去年ピアノ辞めたの。 だからどんどん弾けなくなっちゃってて。
でもね、どうしても離れられなくて、 だから、その、
(557) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 17時半頃
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…………ずっと、 満足はさせてあげられないかも、しれなくて。
[現実に帰って来て、何度明日≠ェ訪れただろう。 乃絵ちゃんも少しずつ回復に向かっている。
それでもわたしの進路希望は元に戻らない。 フツーの大学を受験して、フツーに就職する。 わたしの未来はもう、音楽だけのものじゃなかった。
食べかけの苺大福を見下ろす。]
(558) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 17時半頃
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それでも、いいかなぁ。 わたし、乃絵ちゃんのわがまま、叶えられるかなぁ。
[甘いだけでいられたらよかった。 でもわたしの未来は、この苺みたいにすこし酸っぱい。
乃絵ちゃんの未来は少しずつ乃絵ちゃんに優しくなる。 だからなかなか言い出せなかったんだけど、 乃絵ちゃんのお母さんが作った苺大福を食べたら つい本音が零れちゃった。
乃絵ちゃんはどんな顔をしてるかな。 わたしはおそるおそる苺大福から視線を移した。]*
(559) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 17時半頃
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— 女子4人のお泊まり会 —
[ひとみちゃんの家までやって来た時、 わたし少しの間、夢みたいな気持ちで扉を見てた。]
[わたしはひとみちゃんの騒動を話でしか聞いてないから、 ひとみちゃんのお父さんとお母さんに会うのははじめて。 快くお泊まりを許可してくれたらしいご両親>>560に、 わたしはアマクテオイシイお菓子を渡す。]
暮石です。今日はお世話になります。
[そんな最初の印象も、 クレープ作りで吹き飛んじゃったかもしれないけど。 ちなみにわたしが綿見さんにストップをかけられたのは 21(0..100)x1回くらいだったかな。]
(567) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 18時頃
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前にね、レシピ挑戦してみたんだけど、 緩さを上手く調節できなくて量が増えちゃって……。
[綿見さんが帰った後、わたしと乃絵ちゃんが挑んだ 夜のクレープ作りの話をしてみたけど、 綿見さんはもう知ってたかな。]
こうしてると、ちょっと試作の頃を思い出すね。
[文化祭の前、わたしが調理班をちょっとお手伝いした時。 綿見さんが作ったミルクレープ、美味しかったなぁ。
あれきりだと思っていた特別な時間が 当たり前みたいにわたしの一日にあって、 ちょっと脳がバグっちゃいそう。]
(568) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 18時頃
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……茉奈、ちゃん。これでいい?
[わたしが綿見さんを名前で呼んだのも、 わたしのバグってことにしておいて。 綿見さんと目があったら、 わたし、ちょっと照れたみたいに笑った。]*
(569) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 18時頃
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[お掃除まですっかり終わって、夜。 わたしたちはひとみちゃんの部屋の中。 借りた布団を並べたら、距離は保健室より近くなる。]
……。
[コイバナって言い出したのはひとみちゃん。>>561 サイコロが示したのは乃絵ちゃん。>>518 乃絵ちゃん>>516はわたしと一緒に買いに行った パジャマ姿で目に見えて困惑してた。
ちなみにわたしのパジャマはフツーだよ。 普段触れないから、 猫や犬みたいに動物の柄が多いかな。
そんなことは置いて、わたしは乃絵ちゃんに微笑む。]
(570) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 18時頃
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最近、何か考えてること多くない? わたしの気のせいならいいけど、 話してみるのもいいかもよ。
[意地悪じゃないからこそ逃げ場を塞いでしまうかな。 でもわたしじゃ力になれない分野だから、 ひとみちゃんがいる場の方がいいんじゃない、って。
ほら、前に咄嗟に出てきた話>>1:241も 恋に纏わるものだったから。 ひとみちゃんとの帰り道、 恋の話題がでてきたこともあったかな。
ねって、わたしはひとみちゃんに同意を求めて、 わたしは乃絵ちゃんを見てる。
そうやって、わたしの初めてのお泊まり会は、 フツーに楽しく過ぎていったんじゃないかな。]*
(571) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 18時頃
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— バレンタイン —
[当日か、あるいは少し前のことか。 受験シーズン真っ只中でも 高校生がイベントごとを無視できるはずもなく、 その日の教室は普段と少し違う空気がした。
ひとみちゃん>>424は大きな紙袋を持ってきていて、 綿見さん>>515もブラウニーを作ってきたみたい。 乃絵ちゃんはどうだろう。もう退院できてたかな。
そんな中、わたしはいつも通り民衆に埋もれる。 だって去年までわたしの友達はひとみちゃんだけで、 誰かに渡すなんてこと考えてこなかった。
わたしの鞄には、いくつかの包みが入っている。]
(575) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 19時頃
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[1個10円のチョコを数個入れただけの透明な袋。
向井くんに教えてもらって以来、 わたしは時々あの駄菓子屋さんへ寄るようになった。 あの時せいさん≠オてくれたおばあちゃんに 顔を覚えられちゃったよ。
——それが、わたしの友達の数だけある。 わたしは賑やかな声を聞きながら鞄をつついた。]
(576) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 19時頃
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[最初はひとみちゃん。
わたし、いつからひとみちゃんのこと、 友達って思ってただろう。 きっと去年のバレンタインには間に合ってたよ。 でも勇気がでなくて何も渡してなかった。]
はい。
[ひとみちゃん>>425の流れに紛れ込んで、 わたしはひとみちゃんに透明な袋を渡す。 受け取ってくれたらそれでいいから、 配布の邪魔をしないよう、すぐ離れるつもり。]
(577) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 19時頃
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[乃絵ちゃんは学校に来てたかな。 まだ入院中なら、放課後に届けに行くつもり。
乃絵ちゃんと友達になって初めてのバレンタイン。 共にクレープを焦がしたわたしは潔く既製品を選んだ。]
いつものと……これはちょっと冒険したの。
[中身はイチゴ味をメインに違う味も。 乃絵ちゃんはどれが好きだろう。 受けっとてくれるかなぁ。]
(578) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 19時頃
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[時期とかタイミングとかで、もう少し数は増えるかも。 減ることはない。わたしは最低3袋、チョコを持ってた。
わたしの耳に、力強い喜びの声>>530が聞こえる。]
……よかったねぇ。
[思わずそう呟いてしまうくらい、 鳩羽くんは嬉しそうな表情をしていた。 目の前には綿見さんがいて、 ひとみちゃんのチョコ>>450も持ってたかな。
側で話していなくても、先日の大声>>175>>178>>528は ガッツポーズ男子以外にも当然届いていて、 わたしもその中の一人だ。
誤解>>566とまではいかなくとも、 わたしはわたしを他人事に置く。 手元を見下ろした。]
(579) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 19時頃
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うーん……。
[別にいいんだけど、周りが気にするんじゃないかな……? わたしの思考はそんなところ。
結局放課後まで、 わたしの鞄には最低1袋のチョコが残り続けた。]
(580) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 19時頃
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うーん……?
[そして、あっという間に放課後が訪れた。 わたしは自販機であったかいココアを購入しながら、 未だ解決しない悩みを抱える。 何も用事がないのにすぐ帰らないのは初めてのこと。
一人になった瞬間に渡せばいいかと思ったけれど、 鳩羽くんが一人になることって少ないのかな。 少なくともわたしは今日遭遇できなかった。
その結果がこの状態だ。 わたしはココアがぬるくなるのを待って校舎を歩く。]
(581) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 19時頃
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[鳩羽くんがいたのはどこだったかな。 後生だからちょっとだけ一人でいてほしい。 わたしは鳩羽くんへ近づく。]
れんくん。
[わたしが鳩羽くんの漢字を知る頃には、 すっかりわたしの鳩羽くんを呼ぶ音が定着してしまった。 ほとんど違いはないんだけどね。
わたしは鞄から袋を取り出そうとして、 手元のココアに阻まれ動きを止めた。]
(582) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 19時頃
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じゃあ……まず、はい。 ココア買ったら、ちゃんとココアが出て来たの。
[わたしは少し悩んだ後、鳩羽くんにココアを差し出す。 買ったのは通学路の自販機じゃないけど、 何なら今回は紙コップだけど。 わたしはお茶目な神様>>0:345を思い出して笑った。]
あとこれね。
[鳩羽くんは受け取ってくれたかな。 わたしは自由になった両手で鞄を開けて、 みんなにあげたものと同じ袋を差し出す。]
(583) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 19時頃
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会えてよかったぁ。 それじゃ、また明日ね。
[これでミッションコンプリート。よかったよかった。 目的を果たしたわたしは満足そうな表情で、 そのまま鳩羽くんに明日を告げた。]*
(584) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 19時頃
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夜笑国 メイは、メモを貼った。
Pumpkin 2021/06/19(Sat) 19時半頃
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— バレンタイン・ひとみちゃんと —
[突然現れたわたしに、ひとみちゃん>>589は跳ねて驚く。 予想以上のリアクションにわたしもびっくりしちゃって お互いが硬直するっていう不思議な光景ができたかも。]
わ……こっちこそ、ありがとう。
[初めて、誰かとチョコを交換したんだよ。 だからわたしはひとみちゃんのチョコが たとえちょっぴりロックな見た目でも 全然気にならなかった。
至って普通の一日を送るつもりのわたしは、 ひとみちゃんにどう思われているか知らないまま離れる。
お昼に食べちゃおうかな。家まで持って帰ろうか。 見た目も大事だけど味も重要だよね。 結局帰ってから食べたひとみちゃんのチョコは、 75(0..100)x1点満点の味がした。]*
(607) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 20時半頃
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— バレンタインの放課後・鳩羽くんと — [わたしが鳩羽くんを見つけたのは昇降口だった。>>602 既に下校時間が迫る校内は、ほんのり薄暗い。 わたしは鳩羽くんがもう帰ったと思っていたから、 その姿を見つけた時、心が弾んだのを覚えている。
当初は慣れない様子も見せていたけど>>366、 今では気にならなくなったのか鳩羽くんはいつも通り。 少なくともわたしには、そう見えていた。>>603]
(620) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 21時半頃
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まだ口つける前だったから大丈夫だよ。
[困惑する鳩羽くん>>604の声が聞こえて、 わたしは鞄を開けながら事実をそのまま伝えた。 袋を渡したら意味は伝わるかなって思ったから。]
メインはこっちね。それはおまけってことで。
[眼鏡の向こう、鳩羽くんの目が星みたいに瞬く。 そんなに驚かれると思わなかったわたしは、 それはそれは不思議そうな顔をして頷いた。]
(621) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 21時半頃
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[星はすぐお日様に変わる。 破顔って言葉がぴったりな鳩羽くん>>605の表情に、 今度はわたしの目が星になる番だった。]
大袈裟。……でもありがとね。
そんなに喜んでもらえるなら、 もっといいヤツ持ってくればよかったかな。
[まっすぐに喜ばれるとちょっぴり照れくさくて、 わたしは瞬いていた目を細める。 ホンモノの笑顔がわたしの前に広がるから、 すごく、眩しかったんだよ。]
ん? うん、用事はもう終わったから。
[鳩羽くんの質問>>606に、わたしは 用事って伝えるのと一緒に鳩羽くんの手元を指さした。 もちろんって頷いて、わたしは靴を取りに行く。 ローファーはもうぐずぐずに濡れてはいない。]*
(622) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 21時半頃
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— 帰路・鳩羽くんと —
そういえば、一緒に帰るのは初めてだね。
[帰りはいつも、一人かひとみちゃんと一緒だったから。 途中まで一緒に帰れることは、あの日の朝が知ってる。 わたしたちは朝来た道を逆に歩いた。]
さむ……。
[2月の空気は肌を刺すように冷たい。 日が沈んでしまえばさらに気温が下がるだろう。 わたしは手袋をした両手でわたしの頬を包んだ。]
(623) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 21時半頃
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なんか、あっという間だったねぇ。
[特に校舎に迷い込んだ後から、ってわたしは呟く。 新しく知ったことがいっぱいあって、 わたしの心の中にたくさんの人が増えて。 時間って足りなくなるんだなって知った。
この寒さも過ぎれば、わたしたちの卒業は間近だ。 わたしは同意を求めるように鳩羽くんを見上げた。]*
(624) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 21時半頃
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— 金曜日のお見舞い —
[校庭の片隅のベンチが、個室のベッドに変わっただけ。 わたしは今でも乃絵ちゃんの雨を受け止める。
時間にしたらそう長くないのに、たくさんの話を聞いた。 それはきっと、乃絵ちゃんが前よりもっと わたしに心を降らせてくれるからだ。
わたしはやっぱりうん、うん、って相槌を打って、 傘も差さずに聞いている。 でも、前みたいにぎこちない友達じゃなくて わたしが望んだ関係が目の前にあるから、 わたしはそんな時間が「すき」だった。
前も別に嫌ってた訳じゃないんだよ。 でも平気ってだけだったから、わたしは変わった。 きっと、乃絵ちゃんも。]
(651) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 23時半頃
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[駄菓子をお土産に持ってきて、ミニコンサートを開いて、 今、わたしの前には、乃絵ちゃん>>613の大好きな 苺大福とほうじ茶、そして乃絵ちゃんの肯定がある。]
……そっか。
[わたしは苺大福に甘い卵焼きのサンドイッチを重ねる。
乃絵ちゃんのお母さんはお父さんに逆らえない。>>5:209 そんなお母さんが作ってくれた乃絵ちゃんのための料理。 乃絵ちゃんが病院に運び込まれた時の夜食>>3:1もそう。
わたしは懺悔みたいに打ち明けた乃絵ちゃん>>613に いつもの相槌じゃなくて、「よかったねぇ」って言った。
乃絵ちゃんのこと、 乃絵ちゃんとして愛してくれる人がいて 本当によかった。
乃絵ちゃんの世界は、乃絵ちゃんに優しくなっていく。]
(652) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 23時半頃
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[そんなお母さんが作ってくれた苺大福。 わたしの行動が乃絵ちゃん>>615に伝わったって 知った時、わたし、少しだけ動揺した。
ほら、食べかけの苺大福、餡子が漏れちゃった。 指についた分を口に入れて、手を拭って。
わたしがピアノのこと、打ち明けようと思ったのは、 乃絵ちゃんのお母さんの話を聞いたからだ。 今度はわたしが乃絵ちゃんに雨粒を落とす。]
(653) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 23時半頃
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[お父さんやお母さんの話はしなかった。 別に内緒にしたいんじゃなくて、 ただ今は必要ないと思っただけ。
わたしの話を聞いた後、乃絵ちゃん>>617が口を開く。 覚えてる? って聞かれたら、覚えてるよって答えた。]
忘れる訳ないよ。あの日のことは、ずっと。
[ピアノを聴いてみたいって乃絵ちゃん>>5:135は言った。 空っぽじゃなかった乃絵ちゃんの心の中>>5:235、 わたしの音楽が残ってた。
わたしのピアノだから、聴きたい。 そう、言ってくれた。>>5:246
それなのに「それまで」なんて言うから>>5:247、 わたしが「それまでしか」って返したんだよ。>>5:251]
(654) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 23時半頃
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[わたしが納得いく完璧な演奏ができる日までじゃなくて、 できなくても、一緒にいたかった。
「がんばる、から」>>29って言ってはみたけど、 やっぱり、どうにも難しそうだから わたしは乃絵ちゃん>>618に初めて弱音を零す。]
……本当だよ。めちゃくちゃ難しいよ。 そんなの、一生できるか、わかんない……。
[わたしの声は震えていた。 打ち明けるの、ちょっとだけ怖かったから。 嘘つきって思われたらどうしようって。 だからわたしの声には怒りじゃなくて甘えが乗る。
乃絵ちゃん>>619の手がわたしの頭に伸びた。 わたしは黙って乃絵ちゃんの手のひらを受け止める。]
(655) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 23時半頃
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難しい、けど、わかんないけど、 やっぱりね、弾くのは楽しいんだよ。 苦しいけど、たのしいの。
だから……ずっと、待っててくれる? ずっと、聴いててくれる?
[いつか、わたしの音楽に わたしが納得しても、しなくても、ずっと。
乃絵ちゃんが優しく笑うから、 わたしも涙じゃなくて笑顔が溢れた。]*
(656) Pumpkin 2021/06/19(Sat) 23時半頃
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— お泊まり会の夜 —
[わたしはそんなつもりなかったんだけど、 いつの間にか乃絵ちゃん包囲網が完成していた。>>630 そんなつもりなかったんだけどね。ホントニホントダヨ。 乃絵ちゃんが何か考えてるなって思ってたのも本当。]
バレンタイン……。
[乃絵ちゃん>>632の口から飛び出したのは少し先の イベントで、これが噂のコイバナだってわたしは思った。 残念ながら力にはなれないので、 それからは聞き役に徹することが多かったかな。
何ならその時は既製品すら買う予定がなかったから、 不参加の意思表明をしたかもしれない。]
(658) Pumpkin 2021/06/20(Sun) 00時頃
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[乃絵ちゃんの相談はどんな結論に至ったんだっけ。 すっかり夜も更けて、わたしたちは布団に入った。]
……のえちゃん。
[わたしは乃絵ちゃんに小声で話しかける。 みんな距離が近いんだから、 あまり意味はないかもしれないけど。]
その「すき」って、他とどんな風に違うの?
[こちとら最近まで友達の境界線を探ってたんですよ。 love≠ニlike≠フ違いなんてわからない。 どっちも「すき」でしょう。
恋をしたことがないのかって聞かれたら、 恋も愛も全部音楽にあったよって答えちゃいそう。 変わってるのは知ってるから、さすがに言わないけどね。
だからそれ以上追求せず、おやすみって目を閉じた。]*
(659) Pumpkin 2021/06/20(Sun) 00時頃
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— 帰り道・鳩羽くんと —
[「待ってた?」って聞かれたら>>633、 当たり前みたいな顔して「待ってたよ」って答えちゃう。 さすがに道中すべて>>601追いかける訳にはいかない。 だから、探したんだよ。れんくんのこと。
わたしたちは、乾いた靴で帰り道を歩く。]
(669) Pumpkin 2021/06/20(Sun) 01時頃
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[日が沈む前に帰るし、今日はいいかなって マフラーを置いてきたのがまずかった。 わたしの顔が寒風に悲鳴をあげるから、 両手を頬に添えてまま、鳩羽くん>>635を見上げる。]
冷めてない?
[鳩羽くんの手にまだココアはあったかな。 メインよりこっちの方がよかったかもなんて、 わたしは勝手に満足していたりする。 得意げな表情の半分を手の後ろに隠して、
もうすぐ卒業だね。あっという間だったね。 わたしたちは定番で、避けられない話題を交わす。]
(670) Pumpkin 2021/06/20(Sun) 01時頃
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鳩羽くんでも足りないのかぁ。
[なんて、わたしは呑気に返事をしたりして。
わたしだって分からないなりに気は遣えるから>>3:131、 誤解は辛うじて誤解として成り立つ。>>580 だから大袈裟>>622って言っちゃうし、疑いもしない。
わたしは友達の数だけ>>576チョコを持ってきていた。]
(671) Pumpkin 2021/06/20(Sun) 01時頃
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[話題は道なりに進んで大学の話になる。 XXXが禁句なのは相変わらず。 あっという間だけど、わたしたちはまだ受験生だ。]
うん、すぐ近くだよ。家から近いとこ。
[だってわたしの家、高校から徒歩圏内だもん。>>0:528 大学に入っても家を出るつもりはなかったから、 音大から変わったわたしの志望校はすべて近隣だ。]
お父さんにずっといろいろ任せてたから、 これからはもっと家のこと頑張ろうと思って。
[洗濯や掃除だけじゃなくて、これからは料理も。 文化祭やお泊まり会で少しは鍛えられたと思いたい。 わたしは頭の中から焦げたクレープを逃した。 逃走先を見るみたいに目を逸らして、ひとつ咳払い。]
(672) Pumpkin 2021/06/20(Sun) 01時頃
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この前ね、そのことでお父さんと喧嘩しちゃった。
[それはきっと、会話の延長線。 わたしは鳩羽くんに少し前のことを打ち明ける。
わたし、言ったの。 グランドピアノ、片づけようって。
音大に行かず、弾きもしないなら、 埃を被るより誰かの元で使われた方がいい。
お互いにずっと分かってた。でも、踏み切れなかった。 これはわたしたちのケジメだ。
お父さんがあまりにも渋るから 最後には一発かましちゃったんだけど>>116、 それは……ごめん。 翌朝、お父さんの頬に手形が残ってなかったのが救い。]
(673) Pumpkin 2021/06/20(Sun) 01時頃
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本当は夢があったんだけど、一旦おやすみするの。 それを選んだら他のもの全部手放しちゃうから。
[鳩羽くんとピアノの話をしたのは夜の教室くらい。>>3:5 だから詳細を話しはしなかったけれど、 気持ちはするりと溢れた。]
無敵だった時なら平気だったかもしれないけど……
[乃絵ちゃんがすき。ひとみちゃんがすき。 月曜の音楽室もすきだし、ヨーコ先生もすきだったよ。 文化祭がすきだったし、とびきり甘いものがすき。 優しいお父さんがすきだし、鮮やかなお母さんもすき。 ピアノも今でも変わらずだいすきだよ。 3-9のみんなもすきだし、れんくんのこともすき。]
(674) Pumpkin 2021/06/20(Sun) 01時頃
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……今はもう、寂しくなっちゃうから。
[わたしは鳩羽くんを見上げて笑った。 そして告げたのは、この辺の大学の名前。]
(675) Pumpkin 2021/06/20(Sun) 01時頃
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[もしも近くだって気づいたら、 わたしはきっと嬉しそうな顔をしちゃうよ。
「あっという間」の先があるかもしれないって、ね。]**
(676) Pumpkin 2021/06/20(Sun) 01時半頃
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— 金曜日:ふたりぼっちの雨 —
[友達には、優しくするものだと思ってた。 大切に大切に、決して傷つけないように。 望まないことはしない。否定もしない。
溢れた分の雨粒を摘んで輪郭に並べていくような。 そんなの、ほんの少しの震えでダメになっちゃうのにね。
今も相槌は同じだけど、これまで>>660とは違う。 わたしは乃絵ちゃんにダメって言えるし>>661、 わたしも乃絵ちゃんに弱いところを見せられるよ。]
(712) Pumpkin 2021/06/20(Sun) 11時頃
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[乃絵ちゃんはわたしの頭を撫でる。 その手つきは慎重で、 わたしが乃絵ちゃんを撫でた時みたいだなって思った。 だからわたしは懐かしさに目を細める。]
そんな感じでいいの……?
[向井くんと話した時みたいだなって思った。 わたしが悩むようなことも、 相手にとっては時にもっと軽いものだったりする。
伝えることは、わたしを分かってもらうだけじゃなくて 相手を知ることでもあるのかなって、思ったの。]
(713) Pumpkin 2021/06/20(Sun) 11時頃
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[乃絵ちゃん>>664は、その時はって笑う。 一生なんて言葉を簡単に言っちゃう。
分かってるのかな。一生ってすごく長いんだよ。 乃絵ちゃんはこれからもいっぱい生きるんだから。
乃絵ちゃんが未来を当たり前のように考えてくれるのが 嬉しくて、わたしはふわふわと笑った。 もう薄っぺらいわたしはどこにもいない。]
言ったね。 じゃあ……これからも、よろしく。
[先は長い。でもそれ以上に未来は遠くまで繋がっている。
わたしは頭に乗った乃絵ちゃんの手に触れた。 わたしたちの手は全然似てないけど、 同じ温度、だったから。
——わたしと乃絵ちゃんは、一生、友達だ。]*
(714) Pumpkin 2021/06/20(Sun) 11時頃
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— お泊まり会の内緒話 —
[人間関係初心者かつチョコ配布予定のないわたしは、 ひとみちゃん>>681たちが盛り上がる様子を眺めてた。 もしそこから恋バナに続いたとしても、 立ち位置は変わらなかったと思う。
別に感情がない訳じゃない。 でも夢中になるものがあると、 他のことに心を注ぐ余裕ってなくならない?
わたしはそれが15年くらい続いてただけ。 無敵で余裕のなかったわたしは、 止まった校舎を経てようやく休みを取った気分だ。]
(732) Pumpkin 2021/06/20(Sun) 12時半頃
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[結局、話はチョコから別の方向に流れたんだっけ。>>682 楽しかったことだけは間違いない。 心地よい疲労感がわたしの身体の中、じんわり広がる。
だからわたしの声には茶化す響きがないどころか、 とろとろの眠気が混じっていた。]
うん……。
[乃絵ちゃん>>666の躊躇うような声が聞こえる。 瞼が重くて、乃絵ちゃんの表情までは分からなかった。 わたしは辛うじて続きを促す頷きを返す。]
(734) Pumpkin 2021/06/20(Sun) 12時半頃
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[やきもち。焼き餅。ヤキモチ。 わたしは乃絵ちゃん>>667の内緒話に耳を傾ける。
たとえば、乃絵ちゃんが他の人と仲良くしてたとして、 わたしはヤキモチを焼いちゃうのかな。 今日、楽しかったよね。 わたし、乃絵ちゃんが綿見さんに注意されてるの、 ちょっと嬉しかったよ。 綿見さんは大変だったかもしれないけど、 仲良くなりたい>>5:209が叶って良かったねぇって。]
(739) Pumpkin 2021/06/20(Sun) 12時半頃
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[たとえば、ひとみちゃんが他の人と帰ったとして、 わたしはヤキモチを焼くのかな。
誘った時に断られたら、ちょっと寂しいかもしれない。 でもこれまでのわたしたちは約束してた訳でもないし、 一緒に帰らない日だってあった。 そういう時にひとみちゃんが誰かと一緒なのは むしろ嬉しいし、安心してたと思う。
たとえば、鳩羽くんが他の人と話して……、 ……フツーだね?
それこそ向井くんとか、柊くんとか、綿見さんとか、 元部活仲間とか、隣のクラスにも。>>601 鳩羽くんの周りにはたくさんの人がいる。 そこで鳩羽くんがホンモノの顔で笑ってるの、すきだよ。 名前を呼んだら、嬉しそうに笑ってくれるのも。>>603 すきじゃなくなくとく、ってやつだ。]
(746) Pumpkin 2021/06/20(Sun) 12時半頃
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[わたしにはどうもピンと来なくて、返事が曖昧になった。 乃絵ちゃんはあくまで自分の話だって付け加える。]
わたし、乃絵ちゃんが 自分の気持ちいっぱい出してくれるの、嬉しいよ。
特別なすきなんだねぇ。 わがまま、いいじゃん。
[ヤキモチをわがままって言うのは少し違うかな。 でも欲求のひとつでしょ。 わたしだけが知っていたい、わたしだけの何かが欲しい。 特別ってそういうものなのかな、ってわたしは思う。]
(747) Pumpkin 2021/06/20(Sun) 12時半頃
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……わたしの中にも、そういう気持ちあるのかなぁ。
[乃絵ちゃん>>668がどうしてって尋ねるのに、 わたしは眠る間際の声で答えた。]
あると、いいなぁ。
[たったひとつの「すき」だけを抱いたこれまでと違い、 わたしの手のひらには多くの「すき」>>674が並ぶ。 今のわたしはそれを子どもみたいに眺めていて。 興味、好奇心。そういう段階だったんじゃないかな。
今は、ね。 夜を知らないわたしは、次第に眠りに落ちていく。]*
(748) Pumpkin 2021/06/20(Sun) 12時半頃
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— バレンタイン:乃絵ちゃんと —
[お泊まり会から日は過ぎて、バレンタインがやって来た。 ひとみちゃんが事前に教えてくれた通りに 大量のチョコを持ってきていたり、 綿見さんがどうするかは知っていたかな。 わたしは綿見さんにもチョコを渡したと思う。
みんなに相談していた乃絵ちゃん>>638の進捗を わたしが尋ねることはなかった。 結局どうするかは本人次第だと思うし、 料理方面も恋愛方面もわたしじゃ力不足だったし。
それでも乃絵ちゃん>>639にチョコを渡した時、 わたしは乃絵ちゃんの反応を不思議に思った。]
(753) Pumpkin 2021/06/20(Sun) 13時頃
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? うん、大丈夫だよー。 わたし持ってくるなんて言ってなかったしね。
[別にわたしが貰えるって考えてた訳じゃない……たぶん。 ただ乃絵ちゃん頑張るのかなって思ってたから、 予想との差にわたしは困惑した。
ちなみに冒険チョコはみたらしプリンだよ。 なぜかパッケージにウニの絵がついてる。 たぶん美味しいと思うよ。ウニの味はしないから……。]
(754) Pumpkin 2021/06/20(Sun) 13時頃
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[わたしがどうしたのって聞いても、 乃絵ちゃん>>640は理由を教えてくれなかったかも。 今日はお昼も別々みたい。 わたしは乃絵ちゃんにメッセージを送る。]
『いつでも話聞くからね。』
[乃絵ちゃんはもう自分だけで抱え込んだりしない。 そう思ってるから、 わたしは呑気に購買のクリームパンを頬張った。]*
(755) Pumpkin 2021/06/20(Sun) 13時頃
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— 帰り道・鳩羽くんと —
[鳩羽くん>>696をわたしがあげたココアがあたためて、 わたしの頬をわたしの手があたためる。
冷たい風に硬直した全身が緩んで、 足りない時間を少しでも埋めたかったわたしの口が わたしの内緒話を鳩羽くん>>698に零してしまう。]
鳩羽くんも?
[鳩羽くんのお父さん、ご両親といえば、 わたしとっては鳩羽くんの幸せを阻む存在。>>0:558 でも鳩羽くんの表情はほんの少しだけど笑っていて、 わたしはホンモノを確かめるように覗き込む。]
(763) Pumpkin 2021/06/20(Sun) 14時半頃
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わたし、お父さんと言い合うの初めてだったかも。 お父さん優しくて、気の弱いところもあるからさ。
でも、嬉しかったなぁ。はっきり言ってもらえるの。
[最終的にわたしが一発かましちゃったんだけど。 お互いの思っていることを全部吐き出したら、 なんかちょっとすっきりしたなって。 わたしは鳩羽くんに告げる。]
(764) Pumpkin 2021/06/20(Sun) 14時半頃
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だからね、これはわたしが選んだ運命。 実は……、
[鳩羽くん>>700が確かめるように聞くから、 わたしは鳩羽くんを手招く。 この前も頭撫でさせてくれたでしょ。 今回のわたしは頭に手を伸ばすんじゃなくて、 耳元に口を寄せようとしてるんだけど。
わたしの願いは叶うかな。 どちらにせよ、わたしも背伸びで距離を詰めて、 悪戯を打ち明ける子どもみたいにわくわくと話をする。]
代わりにね、キーボード、買うの。
[これまでは部屋いっぱいにピアノが詰まってたけど、 今度からはもっと快適になるよ。 それこそ、ピアノを聴いてくれる誰かを招いても ゆっくりしてもらえるくらいにね。]
(765) Pumpkin 2021/06/20(Sun) 14時半頃
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音も消せるから便利なんだよ。 わたしの貯金で買う、わたしのもの。 いつかちゃんとしたピアノも買えたらいいけど、 今はこれでいいの。少し休憩。
やりたいこともいっぱいできたしね。 だから、寂しい気持ちもきっと、大丈夫。
[たとえば放課後、友達とどこかにでかけたり。 クレープも焦がさず焼けるようになりたいな。 帰宅部の先があるのなら次は何部になるんだろう。 自分の自転車で駄菓子屋に行くのもいい。
わたしはわたしの夢と、 これまでと違う向き合い方をしようと思う。
自販機には見慣れたラインナップ。>>700 わたしは日常の前で鳩羽くんに笑いかける。 昔みたいにへらへらじゃない、ホンモノの顔で。]
(766) Pumpkin 2021/06/20(Sun) 14時半頃
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[鳩羽くんが教えてくれた大学は わたしの大学より少し先にあるみたい。>>701 それでも会える距離なら、全然遠くないよ。
わたしは寂しくても大丈夫って言った。>>766 でも鳩羽くんは寂しくないよって言ってくれた。>>702 ……覚えてる? わたし、鳩羽くんに会えないのは寂しいんだよ。>>219
だから両手で隠れたわたしの顔は嬉しさが溢れちゃって、 まだ続きがあるんだなって思えたら心が弾んじゃって、]
うん、もちろ……ん?
[だから。 鳩羽くん>>704に返事をしたわたしの声も 語尾に疑問符がついちゃった。]
(767) Pumpkin 2021/06/20(Sun) 14時半頃
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[わたし、今でもヤキモチって感覚はあんまりない。
たとえば、綿見さんの手作りチョコ。>>528 よかったねぇって思ったし>>579、 むしろチョコいいなぁって思ったくらい。
今、どうしてこんなことを考えたかって言ったら、 鳩羽くん>>704がくれた「わたしだけ」>>747を 嬉しいなって思うわたしに気づいたから。
他の人にも言うのかもしれないけど、 今ここには鳩羽くんとわたししかいないから それは知らない。知らなくていいや。]
(768) Pumpkin 2021/06/20(Sun) 14時半頃
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[大事なのは、正しさでも善悪でもない。 わたしがどう感じたか、だから。
そんな風に思ったら、 さっきの反応>>605も名前を呼ぶ時の笑顔>>603も たくさんのことが芋づる式に特別へ塗り変わるようで。 わたしは鳩羽くん>>705の動揺を察する 余裕もないくらい、混乱していた。]
(770) Pumpkin 2021/06/20(Sun) 14時半頃
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[だから視界が暗くなってようやく、異変に気づく。 咄嗟に受け取ったココア、 目の前にはいつか顔を埋めたダッフルコート。>>706 これがあたたかくて大きいこと、わたしは知ってる。]
え、なに、……わっ!
[わたしが状況を把握しきる前に、 鳩羽くんはわたしの頭をぐしゃぐしゃにした。 髪に紛れていた耳に手が触れると、 わたし以外の感触に肩が跳ねる。
止めようにもわたしの手はココアで塞がっていて、 されるがまま、いろいろなものを乱されていく。]
(772) Pumpkin 2021/06/20(Sun) 14時半頃
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[鳩羽くん>>707の手がわたしの耳を覆うと、 わたしの世界から音がなくなる。>>709 唯一、わたしの心臓だけが息をしていた。
——何か>>-813囁かれたような気がする。]
(774) Pumpkin 2021/06/20(Sun) 14時半頃
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[鳩羽くんが離れると、 わたしの耳の中へ周囲の音が一気に飛び込んでくる。
わたし、眼鏡いらないくらい目がいいんだよ。 へらへら笑って、顔が赤くて。鳩羽くんの顔が見えた。
でもね、目より耳の方がもっといいの。>>1:597 そんなわたしの耳の中、もう塞がれてないはずなのに 心臓がさ、煩いんだよねぇ。
もうひとつ付け加えると 少しの衝撃で転びそうになったり>>0:106>>3:587、 10円玉もまともに投げられなかったり>>3:64、 わたし、運動神経はあんまりよくない方。
取り残された飲みかけのココアを抱えて、 元運動部のダッシュ>>710に追いつけるとは思えない。]
(775) Pumpkin 2021/06/20(Sun) 14時半頃
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れんくん!!!
[だからわたし、鳩羽くんの名前を大きな声で呼んだ。 冷気に触れた喉がピリピリする。
まだ行かないで。ここにいて。 駅への分かれ道、呼び止める以上の声は出せなくて、 わたしは長くない足で鳩羽くんへ近づこうとする。]
……ちょっと、待ってね……。
[もし、もしもわたしが鳩羽くんに追いつけたなら、 手を伸ばして鳩羽くんの手を取ろうとする。
また追いていかれることがないように。 耳を塞がれてしまわないように。
わたしは混乱の只中にいて、中の中の頭じゃ 正直まだ何ひとつ理解が追いついていないんだけど、]
(776) Pumpkin 2021/06/20(Sun) 14時半頃
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……はぁ、あの……ぜんぶ、 全部は、聞こえなかった……から、
——さっきの。もう一回、言って。
[きっとわたしはそんなわがままを言ってしまうから、 内緒にしたいならどうか、立ち止まらず逃げてね。]*
(777) Pumpkin 2021/06/20(Sun) 14時半頃
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夜笑国 メイは、メモを貼った。
Pumpkin 2021/06/20(Sun) 15時半頃
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— 昼下がりのバレンタイン —
[クリームパンが半分なくなったかというところ、 乃絵ちゃんから来た返信>>794でわたしは理由を知る。]
『どこにいるの?』
[絵文字も顔文字もないシンプルな一文。 でも乃絵ちゃんなら>>640、 わたしが食べに行こうとしてるって分かるんじゃない?]
ほうじ茶でいいかなぁ。
[わたしと乃絵ちゃんの分で二本。 もし既に協力者>>752がいたなら、 わたしの分の一本はその人に渡そうとするつもり。 大丈夫。わたしにはクリームパンが半分残ってる。]
(811) Pumpkin 2021/06/20(Sun) 17時頃
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[みんながいるなら、いつか>>0:1601みたいに クリームパンが置いてきぼりになることもないね。
わたしは緩む口元を誤魔化すように、 乃絵ちゃんの返事を待たず歩き出した。]*
(812) Pumpkin 2021/06/20(Sun) 17時頃
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[世界が止まった瞬間、 わたしの目に映ったのは茜でも白を染める紅でもなく、 あなたのまとう、ただひとつの色だけだった。]
(822) Pumpkin 2021/06/20(Sun) 18時半頃
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— 放課後・れんくんと —
[左手には忘れ物のココア、右手は鳩羽くん>>801の左手。 わたしの両手は乱れた頭を整える暇がなくて、 唯一自由な鳩羽くんの右手がわたしの髪を梳く。 指が通るようになっても、わたしの心は絡まったまま。
夜の教室、鳩羽くんの机から数度目の温度。 もう覚えたはずのそれがやけに熱く感じる。 耳に鳩羽くんの指が当たってようやく気づいた。 冷え切っていたそこは、夕焼けいらずで紅く染まる。
わたしは目を閉じることもできず、鳩羽くんを見ていた。
なんでそんな顔して笑うの。 なんでこんなに心臓が煩いの。
いつもと少し違う表情が、 生きていることとは違う音が、 新しいわたしの世界を侵食していく。]
(823) Pumpkin 2021/06/20(Sun) 18時半頃
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[わたし>>765とは違い、手招きなんて必要ない内緒話。
それでもわたしは自分から鳩羽くんに近づきたくて、 丸まる背>>802に合わせて踵を持ち上げた。]
(824) Pumpkin 2021/06/20(Sun) 18時半頃
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[引っ張った芋づるがいきなり底まで抜けて真っ逆さま。
世界で一番好きなものがどんな価値を持つかなんて、 わたしは生まれた時から知ってる。 like≠ニlove≠フ違いよりずっと簡単なこと。
伝わったよ。でも首は傾げず伸ばしてた。>>803 だから戻す途中で傾けて、掠めた頬に熱を移そうとする。
なにか、伝わった?]
(825) Pumpkin 2021/06/20(Sun) 19時頃
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[ようやく茜色が戻ってきたわたしの世界。 覆われていたのは一瞬のことなのに、わたし、 一人のことしか見ていなかったんだなって気づく。
「また明日」って鳩羽くん>>804が笑った。 でもわたしの指はまだ鳩羽くんの右手を捕らえたまま。]
……こんど、さ。 わたしがチョコレート作ってきたら、
食べて、くれる?
[出逢ったばかりの感情はわたしを千々に乱して、 この感情をまだ上手く言葉にできない。
だから、明日の先の話をしよう。 だってわたし”たち”に寂しさは訪れない。
今度は大袈裟なんて言わないから、 また一番って言って、笑ってくれる?>>605]
(826) Pumpkin 2021/06/20(Sun) 19時頃
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[なんてことない今日≠、特別にしてみせるから。]
(827) Pumpkin 2021/06/20(Sun) 19時頃
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[わたしは鳩羽くんの手を解いた。 空いた右手を振って、今度こそ笑って見送るつもり。]
……。
[今日≠終えたわたしの手元には忘れ物のココア。 内側に線が引かれて、それより下に水面がある。 わたしは両手に抱えたカップをそっと傾けた。]
あま。
[ぬるい甘さが喉を撫で、身体の奥まで落ちていく。 ホットレモン>>0:559と比べたらとびきり甘い。 あとは一人の帰り道。 カップが空になるまで、わたしは手を離さなかった。]*
(828) Pumpkin 2021/06/20(Sun) 19時頃
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— それから —
[その日の夜、わたしは乃絵ちゃんにメッセージを送る。
ペンギンのスタンプ>>819の下に並ぶのは、 わたしも一緒に作るから、 今日のチョコ、リベンジしない? って内容。
本文には書かなかったけど、 そのついででも話を聞いてほしいな。 “何か”>>790に気づいちゃったから、さ。]*
(829) Pumpkin 2021/06/20(Sun) 19時頃
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— 中庭のベンチ —
[乃絵ちゃん>>819が寒いよって言ったから、 中庭にやって来たわたしはコート姿だった。 協力者>>816が既に一口いただいていたなら、 わたしはその表情にあったか〜いほうじ茶を差し出す。 ウェットティッシュもあるよ。 バレンタインのプレゼントにしては味けない2セット。]
さっき言ってくれればよかったのに。
[わたしはもう一本のほうじ茶を乃絵ちゃんに渡してから 手のひらを上に向ける。 たとえ乗ったものが物体Xだとしても、 チョコレートの味がしなかったとしても>>640、 わたしは黙々と食べた。さすがに笑顔では無理だった。 クリームパンとの相性は89(0..100)x1%ってところかな。]
(853) Pumpkin 2021/06/20(Sun) 22時頃
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[えっ。クリームパンと合う……。
そこからのわたしは、 クリームパンがある限り無敵だったと思う。 残り半分しかなかったから、 わたしの活躍は星の輝きみたいに一瞬だったけど。]
(854) Pumpkin 2021/06/20(Sun) 22時頃
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[向井くん>>817が集合をかけるのはいつだったかな。 昼休みなら、鳩羽くん>>832や炭蔵くんもいたかも。
その場合、わたしのチョコはまだ鞄の中。>>580 時折鳩羽くん様子を見ていたかもしれないけれど、 一人になるタイミングはなかったと思うから わたしはすぐにチョコとの対決に戻った。]
うーん……今度簡単なの作ってみる? 乗っけるだけのやつとか。
[わたしの乃絵ちゃんに対するコメントはそんな感じ。 だから、リベンジの予定はあったかもしれないよ。>>839 元々は約束未満の話だったかもしれないけど。]
(855) Pumpkin 2021/06/20(Sun) 22時頃
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[進捗はどうだったろう。 それでもわたしはノルマを達成して手を合わせる。]
ごちそうさま。 来年はわたしも作ってみようかな。
[なんて。 わたしたちのこれからは一生分あるものだから、 乃絵ちゃんに声をかけて笑う。
動き出した校舎の冷たい中庭。 次はどこで食べることになるかな。 その時、誰と一緒にいられるだろう。
永遠がないこと、一生が特別なことを知ってるから、 わたしは賑やかな光景を忘れないよう みんなを視界に入れ、瞬きでシャッターを切った。]*
(856) Pumpkin 2021/06/20(Sun) 22時頃
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[わたしが送ったメッセージ、 乃絵ちゃん>>840の返答はいつものペンギンのスタンプ。 これ、かわいいよね。 グループチャットに登場する度に見ちゃう。>>0:29
乃絵ちゃん本人を模したような動作に、 わたしはお昼のこと>>862を思い出していた。 だから返答はスタンプひとつ。 オコジョがうん。って頷いているやつ。
具体的な連絡をわたしがするのは、 それから更に数日後のことだ。]
(864) Pumpkin 2021/06/20(Sun) 22時半頃
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[ 日 時:わたしと乃絵ちゃんの予定が合う休日 場 所:たぶんわたしの家 講 師:茉奈ちゃん(メール) 材 料:茉奈ちゃん先生とレシピの指示に従う レシピ:工程と作業ができるだけ少ないもの 約 束:焦らない・謝らない・諦めない 計量をきちんとする・レシピ通りに作る アレンジを絶対しない
篩がなかったから、あったら持って来てね。 ]
(865) Pumpkin 2021/06/20(Sun) 22時半頃
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— 後日:チョコレート・リベンジ! —
[材料、OK。レシピ、OK。エプロンはお母さんのもの。 篩はどうかな。ない場合はザルで代用するしかなくなる。 わたしたちは台所の前に一緒に立っていた。]
簡単なレシピに教えてもらったからね。 ゆっくり、しっかり、がんばろう。
[物体Xが何を作ろうとしていたか、聞いていたかな。 そうじゃなくても大事なこと。 「無理をしない」を約束に付け足す。]
(866) Pumpkin 2021/06/20(Sun) 23時頃
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初心者なんだかね。 ピアノだって最初から両手で弾ける訳じゃないもん。
[腕をしっかり捲って腕までざぶざぶ洗って。 夜にこっそりクレープを焼いたことを思い出すね。
もうすぐ3月も迫る頃。 怪我は大丈夫かなって心配しつつ、 乃絵ちゃんにも場所を譲った。]
(867) Pumpkin 2021/06/20(Sun) 23時頃
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[お泊まり会の時は参加する気もなくて、 気まぐれみたいに既製品を配ったわたしだけど、 今はほんの少しだけ気合が入ってる。]
……じゃあ、やってみよっか。
[それでもわたしは笑顔で乃絵ちゃんを見上げた。 ついでより、まずはメインを頑張らなきゃね。 さて、出来栄えはどうだったかな……?]*
(868) Pumpkin 2021/06/20(Sun) 23時頃
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— 音楽室、あるいは手紙にて —
[去年の春、初めて音楽室でばったり会ったね。
その頃のわたしは柊くんのこと、名前しか知らなくて、 たぶん文化祭くらいまでずっとそうだった。
文化祭、楽しかったね。 ひとみちゃんたちとお客さん連れて来てくれるから 助かったし、広報SNSも楽しく見てたよ。
話が逸れちゃった。本題に戻ります。
わたし、去年の春よりすこし前、ピアノを辞めたの。 でもやっぱり弾きたいなって思った時にここに来てた。
練習全然しないからどんどん下手になってたけど、 柊くんがいつも「良かった」って言ってくれるの、 嬉しかったよ。 ずっとお礼を言いそびれてたから伝えさせてね。]
(886) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 00時頃
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[誰かのために弾くってこと、教えてくれたのは柊くん。 あの校舎の最後の日、乃絵ちゃんにピアノを弾いたの。 やっぱり全然上手くできなかったんだけど、 演奏する勇気をくれたのは、わたしのピアノを すきって言ってくれた柊くんです。
力になってくれてありがとう。 乃絵ちゃんを一緒に連れ戻してくれてありがとう。 柊くんは、わたしの音楽も繋ぎ止めてくれた恩人だよ。
たった1年の不思議な時間だったけど、 わたしは、最後はやっぱり楽しかったなぁ。 柊くんにとってもそうだといいなって思う。
大学に進んでも元気でね。 また会えたら、今度はのんびり話でもしよう——]
(887) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 00時頃
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[もし柊くんに会えたなら直接言葉で、 会う機会がなければ右肩上がりの文字の手紙で。 1年、時間を共有してくれた柊くんにお礼を告げる。
クリームパン>>448の他にもうひとつ、 わたしには柊くんへ渡したい物がある。 手渡しならそのまま、手紙なら机の中に潜ませよう。 手紙の場合、冬といっても食べ物があるから、 朝には気づけるようにしておくね。]
(888) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 00時頃
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[クリームパンと、言葉あるいは手紙と、 手のひらに乗る小さなオルゴール。 クリアケースの中には金色の歯車が見える。 ラベルには『ドビュッシー 月の光』と書かれていた。 これは、わたしが柊くんのために弾いた曲>>4:384。
もうすぐ、春がやって来る。]
(889) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 00時頃
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[月曜の放課後、30分。音楽室にピアノの音は響かない。]
(890) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 00時頃
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[——次は、卒業式後のパーティー>>646で会おうね!
わたしの言葉あるいは手紙の締め括りはこの通り。 永遠の別れには早すぎるよね。
わたしはそう、思ってるよ。]*
(891) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 00時頃
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— バレンタイン・リベンジ! —
[休み>>865の次の登校日っていったらやっぱり月曜日。 わたしには30分の決まり事がある。
だからわたしは休み時間、鳩羽くんに声をかけた。 最近どうもこっちを見られているみたいで>>875、 呼び止めるのはそう難しいことじゃなかったはず。]
れんくん、あのね。 ……今日の放課後、教室で30分待っててくれる?
[鳩羽くんが疑問に思うなら、音楽室のことも話すつもり。 もともと秘密にしている訳じゃないし。 わたしは約束通り、30分後に教室へ戻った。]
(892) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 00時半頃
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[鳩羽くんはどこにいたかな。 わたしは鳩羽くんの元へ小走りで向かう。
もし自分の席に座っていたら、 あの日みたいだねなんて笑ったかもしれないし、 黒板の前にいたら、メッセージ見たよって話したかも。
この教室には、鳩羽くんとの思い出が満ちている。]
……これ、前言ってた、やつ。
[及第点の出来に達した簡単チョコクッキー。 この前の駄菓子屋チョコよりは立派だけど、 至ってシンプルな丸いフォルムは華やかさとは遠い。
黄色いリボンを巻いただけの透明な袋を、 わたしは鳩羽くんの前に差し出した。]
(893) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 00時半頃
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どうぞ、お納めください……。
[変な言葉を使う時はちょっと動揺してる。 袋を持つわたしの手が、緊張でほんのり震えた。]*
(894) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 00時半頃
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— チョコレート・リベンジ! —
[結局、開催場所は乃絵ちゃんが 一人暮らししている家になったんだっけ。
わたしは器具の入った鞄を置いて、部屋を見渡した。 中にはおもちゃのピアノ>>444もあったかな。 乃絵ちゃん家で弾くからって、持ち帰ってもらった物。]
大丈夫だよ。 今回は自分で焼く工程ないから。
[わたしは焦がしたクレープ生地を思い出しながら、 壁に貼られた約束事>>870を見る。 乃絵ちゃんから物体Xの話を聞いて、 たぶんわたしと綿見さんが協力して考えた内容だ。
わたしも料理に関しては初心者なんだけどね。 初めてのことに向き合う乃絵ちゃん>>3:287よりは しっかりできると信じてる。]
(895) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 01時半頃
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[乃絵ちゃんはもう傷を隠すことをやめた。>>872 それでも乃絵ちゃんの口からは謝罪が零れる。 わたしは自分の手元を見下ろした。 傷ひとつない肌が、冷たい水でほんのり赤くなってる。]
今日の約束は?
[だからわたし、壁に貼られた紙を指で示した。]
心配はする。でも不愉快なんて思わない。 だってもう、新しい傷はつかないでしょ。
[圧をかけるつもりはないから、わたしの声は穏やかに。 リストバンド>>873を乃絵ちゃん自身がつけたいなら 止めないけど、いらないよってわたしは首を横に振る。]
(896) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 01時半頃
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わたし、それが嬉しいから。 乃絵ちゃんの手、すきだよ。
[わたしはわたしで、乃絵ちゃんは乃絵ちゃん。 それならこの傷跡は、乃絵ちゃんが前を向いた証だ。
脱皮した今でもわたしのスタンスはそう変わらない。 正しさよりもわたしが良しとするか、だ。 傷自体を歓迎することはできないけど、 わたしが忌避する理由はどこにもなかった。]
(897) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 01時半頃
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[緊張した面持ちの乃絵ちゃん>>874に笑って、 わたしたちは調理を始める。
途中、ダマができないように混ぜる部分に苦戦したけど、 乃絵ちゃんが買って来てくれた篩のおかげで 事なきを得たんじゃないかな。 わたしも綿見さん直伝のストップを駆使できたと思う。
出来上がったクッキーは クリームパンの力に頼らずとも食べられそう。 わたしたちはクッキーが焼けるのを待ちながら 洗い物に取り掛かった。]
(898) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 01時半頃
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今日さ、ラッピングも持ってきてるの。 ……一袋分、入れてもいい?
[至ってシンプルなデザイン>>894だけど。 もちろん乃絵ちゃんの分もある。 前回物体Xの処理に協力してくれたみんなに渡すだけの 量も確保できてるはずだ。
ボウルを洗い流して乃絵ちゃんに手渡しながら、 わたしはそう切り出した。]
それから、焼けた後で味見もしようね。 見た目はいいけど、食べられるかどうかは別物だし。
[そわそわ。そわそわ。 これまで想いを注いだ相手には口がなくて、 手作りのクッキーを食べてもらうこともなかった。]
(899) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 01時半頃
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[あの日から時が過ぎて自覚していく度に、 視線>>875が気のせいじゃないと気づいてから、 わたしは生まれて初めての感情に翻弄されていた。
乃絵ちゃんはどうなんだろう。 結局乃絵ちゃん>>787から相手の名前は出なかったけど、 チョコをあげたい相手がいることだけは確かだ。
ちなみにもし相手を知ったとしても、 わたしは応援以上の立ち位置に踏み込まないつもり。 当人同士のことだから、必要なのはお互いの気持ちだけ。 その先どうなるか決められるのは、二人だけだから。
閑話休題。 わたしは残りの洗い物を片づけながら、 どう話を切り出そうかと視線を揺らした。]**
(900) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 01時半頃
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[たとえば、ちょっと増えたくらいなら わたしは全然気づかなかったんじゃないかな。 たとえば、わたしが鳩羽くんを見てなかったら 100%増えたところで気づかなかったよ。
つまりはそういうこと。 重ねる時間が、わたしに自覚を促していく。]
(943) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 13時頃
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— バレンタイン・リベンジ! —
[受験を控えた3-9の教室は、30分も経てばもぬけの空。 わたしの目には、自分の席に座る鳩羽くん>>911が映る。 窓の向こうに広がる透き通るような青色も、 やがて茜に染まっていくんだろう。 それを阻む厚い雲はどこにも見当たらなかった。]
……。
[冬の空を背景に窓枠へ収まった鳩羽くんをもう少しだけ 見ていたくて、わたしは足音を殺して近づく。 生存確認はもう必要ない。 わたしたちは同じ時を生きている。
幸か不幸かわたしはフツーの人間だから、 隠密はきっとそう長くは続かなかったと思う。]
(944) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 13時頃
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[わたしは「あの日みたいだね」って笑いながら、 鳩羽くん>>912の前の席をお借りした。 今度はもう背伸びしなくていいんだよ。 わたしは椅子の背を鳩羽くんの机にくっつける。
黒板の話もしたかな。 「ああ」って反応にあの日のことが蘇って、 コートに埋めた感情>>5:63に思いを馳せた。 まぁ、わたしには予想より感情豊かで子どもらしくて やっぱり頼りになった相棒>>5:72がいたから、 だいじょーぶ>>5:76だったけどね。
もう二度と訪れることのないあの場所は、 わたしの中で思い出となって生きていく。
どこか遠くを見る目を鞄に落として、 わたしは乃絵ちゃんと一緒に作ったクッキーを 鳩羽くんへ差し出した。]
(945) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 13時頃
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だって……食べてくれるんでしょ。
[鳩羽くんの驚いた顔に、わたしは拗ねるより苦笑する。 だってわたし、まだ何にも伝えてないもんね。
食べてくれる? って聞いた時の嬉しそうな顔>>837に 勝るとも劣らない今日≠フ反応>>913を貰えたから、 わたしの顔から苦味は消えてとびきりの笑顔になった。]
乃絵ちゃんと一緒に作ったんだよ。 今度はちゃんとできてるでしょ。
駄菓子ほどの安定感はないけど、美味しいと思う。
[駄菓子の今>>843を知らないわたしは、 頭の中でふたつを天秤にかけたりする。
食べてくれるなら喜んで。>>914 頬杖ついて、うまいうまいの顔、じっと見てるよ。]
(946) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 13時頃
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[そんな折、鳩羽くん>>915が明日≠フ話をした。]
そっか……応援してる。 れんくんなら、できるよ。
[わたしたちの進路は、駅の分かれ道みたいに別々だ。 でも「近い」>>702から、だいじょーぶ。 相棒の背中を撫でてくれる手がなくても、平気。
そう思うけど、わたしはもう無敵じゃないから 感情を埋めるコートもないとなると、 どうしても寂しいって気持ちが溢れちゃう。
弱くなったなぁ。 こんなに——すき、なんだなぁ。]
(947) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 13時頃
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[底まで抜けた特別>>770>>825は 少しずつ埋まり始めていた大きな穴の中>>3:130、 残り全部を埋め切っちゃった。
おかげで世界で一番すきだったものと距離を取ったのに、 全然、喪失感がないんだよ。 新しい世界、一番に飛び込んできた人>>709がいたから、 全然、寂しくないの。]
(948) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 13時頃
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[れんくん>>916がいつもより柔らかい声でわたしを呼ぶ。
わたし、耳はいいんだよ。 聞き慣れた音なのに、胸がきゅうってなって息を止めた。
話が途中で終わったから、わたしの時は止まったまま。 廊下を通る人もいなくて、校舎も凍ってしまったみたい。
2月の冷たい空気が、教室に満ちている。]
(949) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 13時頃
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れんくん、
(950) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 13時頃
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[わたしは椅子に片膝を乗せ、身を乗り出した。 近い>>3:127って思った距離を越えて、 頬や鼻先に触れそうな距離を掠める>>802。
この高さなら、 手招かなくたって、わたしだけで傍に行けるんだよ。
大雪の朝、助けてもらった時>>0:112や 耳を塞がれないよう左手を捕らえた時>>801の 厚い手袋は鞄の中。
あの日触れられなかったれんくんの指先>>3:126に、 綺麗>>2:407って言ってくれて、 たからもの>>2:529って答えたわたしの指を——
——はじめて、絡めた。]
(951) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 13時半頃
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[また注意されちゃうかな。>>3:72 でも、今度は撤回してあげられない。 もう無理だよ。ダメ。ヤダ。 ねえ、好き。
迂闊だとは思ってないし、馬鹿なつもりもないけど、 あんなこと言われたら>>-871、自惚れてもいいよね。]
(952) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 13時半頃
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[問1.好きな人が、 「世界で一番好き」って言ってくれた時の気持ちを答えよ。
回答自由。だから配点もなし。]
(953) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 13時半頃
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[どれだけ言葉にしたら、 like≠ニlove≠フ違いが伝わるかな。 わたしは繰り返し、想いを囁く。
勉強は得意じゃないし、運動はちょっと苦手。 料理はこれからだとしても、 一を突き詰めたわたしに得意なものってあんまりない。
でもね、 一つのことを愛するのは、大得意。
だからびっくりさせないよう、 「世界一」は、もう少し後にとっておくね。]
(954) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 13時半頃
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……受験終わったら?
[わたしは少しだけ顔を離して、れんくんを視界に収める。 触れられないくらい、近い距離。 わたしはさっきの言葉を問いかける。]
もう一回言わなくていいから、 続きが、欲しいな。
わたしはずっと、一緒にいたいよ。
[いつもよりとびきり甘くて柔らかい声で伝えて、笑う。 冷え切っていたはずの耳が燃えるように熱いことは、 わたしだけの、秘密ね。]*
(955) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 13時半頃
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— チョコレート・リベンジ! —
[歯切れの悪い返事をする乃絵ちゃんは、 想像以上に物体Xのことを引きずっているみたい。>>903 確かにチョコの味がしないフォンダンショコラ(自称)は、 個性的な味わいだった。 わたしもクリームパンがなければノルマ達成は 難しかったかも。そこは認める。
でも、初心者な訳だし。 悪食(他称)なわたしは、そこまで不安を抱いてなかった。 なぜなら、 わたしたちには綿見さんという心強い味方がいる。
数多の苦難>>907を乗り越えて完成したクッキーは、 オーブンの中からいい香りを漂わせていた。]
(993) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 17時頃
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いい匂いしてるからたぶん大丈夫だと思うけどね。 むしろ食べすぎないように気をつけないと。
[一通り洗い終えると、 わたしは最後の篩を乃絵ちゃん>>908に渡した。
乃絵ちゃんの手元にはリストバンドがあったかな。 ひとみちゃんの家にお泊まりした時もそうだったけど、 乃絵ちゃん、人より謝る回数が多い気がする。
それはきっと乃絵ちゃん自身の性格もあるけど、 これまでのことが影響しているとも思うから わたしは料理以外でも約束を指さした。>>905]
(994) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 17時頃
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[わたしが乃絵ちゃんの手をすきなことと 乃絵ちゃん>>906が乃絵ちゃんの手をどう思うかは違う。 それでいいの。
少しでも、乃絵ちゃんが伸び伸びと生きられればいい。 焦る必要もない。だってこれからは一生分あるから。
わたしは乃絵ちゃんからオーブンへ視線を移し、笑う。]
(995) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 17時頃
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一袋が、いいの。
(996) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 17時頃
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[味見した焼き立てクッキーはふわふわで美味しかった。 冷めてもきっと甘くて美味しいはず。]
みんなにあげるんでしょ。 それならわたしにも意味あることだし。
[なんて言って、 わたしは乃絵ちゃんに残りのクッキーを預けようとする。
だってその……わたしはみんなのことを 前よりずっと親しく思ってるけど、 友達って呼んでいいかは分からないし。 だから、わたしのバレンタインはたった数袋だった。
リベンジだって言ったでしょ。 あくまでわたしはお手伝いだけどね。]
(997) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 17時頃
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[わたしは、乃絵ちゃんの部屋>>902でラッピングに挑む。 まだ荷物は少ないけれど、 わたしが預けたピアノや文化祭の写真が飾られていて、 乃絵ちゃんの部屋だなって思った。 少しずつ、乃絵ちゃんのものが増えていくんだろう。 そう思うとわたしの口元は緩む。]
こんな感じかなぁ。
[ラッピングといっても口を閉じてリボンをつけるくらい。 日に当たった時の髪の色。 曇り空の下より明るいイエローがわたしは結構すき。
乃絵ちゃんはマスキングテープを使っていたっけ。>>917 梱包作業はそう時間がかからなかったはず。]
(998) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 17時頃
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[わたしはできあがった袋をつつきながら、 さっきはまだ上手く言葉にできなかった 乃絵ちゃん>>910の疑問に答える。]
わかった……というか、埋まったというか、 落ちたというか……うーん、なんと、いうか。
[時間を置いたのに、 わたしの心は未だ落ち着きを取り戻せず、 不意に心臓が煩くなる。 わたしは自分の胸元に手のひらを当てた。]
(999) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 17時頃
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「すき」……なんだなって。 もっといっぱい、一緒にいたい。
[今、もし本人が目の前にいたら、 何度も気持ちを口にしちゃうところだった。 わたしは慣れない感情に翻弄されながら、 乃絵ちゃんにほんの少しわたしの想いを打ち明けて 最後には名前を白状することになる。
……どんな話だったかって? それは乃絵ちゃんだけが知っていればいーの。]*
(1000) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 17時頃
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— 放課後の教室で —
[青が夕焼けに染まるたび、 わたしの目に映る髪もほんのり朱がさしてくる。
日に透かした時の黄色も、 曇り空に少し燻んだ色も、
気づいたのは、 わたしがあなたを目で追うようになったからだ。
お日様色のリボンは彼の指で解かれて、 わたしたちの間に横たわっている。]
(1004) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 18時半頃
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[ 世界でただひとつの「特別」を降らせたら、 絡めた指先、繋がり>>974が強くなった。 ]
(1005) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 18時半頃
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[友達って呼んでくれた時の喜び>>359を覚えてる。 あなたの名前の、 胸が苦しくなるような優しい響きを知ってる。
だから今度はわたしがあなたの名前を呼んで、 ふたりの間にある境界線を乗り越えよう。>>971]
なぁに。
[触れられない近さが、触れる距離になる。>>975
そーいうオサホウとはまったく縁がなかったけど、 目を閉じればいいってことくらいは分かるよ。]
(1006) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 18時半頃
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[わたしたちの時は止まらない。 れんくん>>978が笑うのを見てわたしも破顔し、 いつもと距離と温度に戻る。 熱を持った顔に冷えた空気が気持ちよかった。
深呼吸、二回。そろそろ癖になっちゃいそう。]
明日が本番なのに、待っててくれてありがと。
[膝を払って立ち上がって、絡めた指を引く。]
(1007) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 18時半頃
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帰ろう、れんくん。
[明日♂えない分、特別な今日≠もう少しだけ。 冷たい校舎を飛び出して、新しい未来へ進もう。]*
(1008) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 18時半頃
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— 卒業式 —
[卒業式には、わたしも無事第一志望の大学に合格した。 元々自分の成績にあった学部を選んでいたから そこまで心配はしていなかったけれど、 3年9組のみんなの結果はどうだったかな。 まだ受験が残っている子もいるかもしれない。 ヨーコ先生>>461の苦労はもう少し続くのかも。]
せんせい。
[特筆することなく卒業式を終え、 わたしはみんな>>645が写真を撮るため集まっている 場所から少し離れて、ヨーコ先生に声をかける。]
(1029) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 21時頃
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1年間、音楽室開けてくれて ありがとうございました。
[炭蔵くんの手厚いフォローがあるとはいえ、 先生にしかできないこともあっただろう。 まして大学受験を控えた3年の担任が暇なはずないのに、 ヨーコ先生は毎週、音楽室の鍵を開けてくれた。
わたしが音楽を捨てずに済んだのは柊くんのおかげだし、 そのきっかけをくれたのはヨーコ先生だ。
だからわたしはお腹の前で手を揃え、頭を下げる。]
(1030) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 21時頃
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[ヨーコ先生は眼鏡の奥、 くるんとした目を瞬かせてから笑ってくれる。 背中を押されて、先生と一緒にみんなの元へ向かった。]
あの……、
[文化祭の写真にもほとんど写らず、 みんなを友達って呼んでいいかも分からない わたしだけど、一緒に写ってもいい?
そこまでは口にできなかったけど、 「わたしも入れて」ってみんなの輪の中に飛び込んだ。]
(1031) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 21時頃
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[みんなと同じ制服を着たわたしは優しさの絵の具に彩られ、 たくさんの思い出の中でずっと、生き続ける。]*
(1032) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 21時頃
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— 卒業式・番外編 —
[ホワイトデーが卒業式より後にあるからか、 その日、教室には甘い匂いが広がった。
向井くん>>852からは「友フィナンシェ」を。 わたしは最初、丁重にお断りしようと思った。 だってそもそもバレンタインに渡したの、 救援物資のほうじ茶くらいだし、友……とかさ。 そんなに深く考えなくていいのかもしれないけど。 最後の最後に余ったら、くらいで貰ったと思う。
れんくんからのお返しはクッキーだった。 向井くんと同じく、みんなに配っていたんじゃないかな。 わたしの手にも同じ物が乗る。]
(1033) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 21時頃
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……。
[もや。とまでは行かないけれど、そわ。って顔。 わたしはれんくんを見上げる。
すると14日のお誘いが降ってきて>>1027、 わたしのそわ。は、ふわ。に変わる。
同じクッキーを渡したのはお互い様。 お日様リボンの特別をわたしも手にしたから、 もうすこしだけ、わがまま言ってもいい?]
れんくん、ちょっと。
[わたしはれんくんを手招きする。 片手を口に翳して内緒のポーズ。]
(1034) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 21時頃
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[わたしはわたしの鳩尾辺りに指を当て、首を傾げる。 貰ってどうするんだろう、とは思うけれど、 きっと特別がほしい今のわたしと同じなんだよね。]
ネックレスにできるかなぁ。 ヤだったら無理しなくていいよ。
[れんくんが知らないわたしがいるように>>1023、 わたしもれんくんの知らないことがいっぱいある。 だから手探りの中、れんくんへ腕を伸ばした。]
お返し……はなにか、あれば。
[豊高の制服にボタンはあったかな。 わたしはわたしの出で立ちを見渡しつつ、 14日にひとつ、明日≠フ先の約束を交わした。]*
(1035) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 21時頃
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— 卒業パーティー —
[わたしたちの頼れる会計さん>>646は今日のために 予算をたくさん残していたみたい。
行き先はどこになったかな。 わたしはグループチャットの時と同じく、 積極的に意見を出すことはなかったかも。
それこそファミレスでもいいんじゃない。 お店の人は大変だろうけど、 どんな場所だって文化祭みたいに賑やかになるよ。]
(1046) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 22時頃
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— 卒業パーティー:春の人 —
[途中、柊くんから手紙>>941と何かの包みを貰う。 さすがに目の前で手紙を読んでいい? とは 聞けなかったから、わたしが尋ねるのは包みの方。]
あ、いい香り……春の匂いだ。 柊くんみたいだね。
[もし中身を確認させてもらえたなら、 ほのかに零れた桜の香りに表情を緩めるだろう。]
ありがとう。 これからも、手、大切にする。
[自転車も乗るようになるし、料理にも挑戦する。 わたしの手はこれまでよりずっと多くのものに触れる。 でも寝る前に優しく春で包み込もう。 いつかまた、わたしが夢とやさしく向き合えるように。]
(1047) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 22時頃
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……少し先になるけど、人前で弾くことになるから、 その時はまた、聞いてくれる? ピアノじゃなくてキーボードになると思うけど。
[手紙を読んでないわたしは、柊くん>>939が わたしにどんなメッセージをくれたか知らない。 だから尋ねるのはここまで。
家に帰って本文に目を通したなら、 その日の内に具体的な日時が柊くんの元に届くだろう。]
(1048) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 22時頃
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[——次は2年後、大人になる年の初め。 雪の融けた向こう、優しい春の一日に。]*
(1049) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 22時頃
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— 卒業パーティー:どっちも —
[どうして既に日付を決めているかといえば、 わたしの視線の先にいる人が理由だ。]
向井くん。
[わたしは向井くんを呼び止めた。 今はもう、大丈夫かなって様子を伺うことはしない。]
最後まで会計の仕事お疲れ様。 ……はい。
[わたしはメッセージカードを一枚差し出した。 右肩上がりの文字で書かれているのは、 2年後の日時と暮石家の住所、ピアノのイラスト。 完成度は55(0..100)x1%ってところかな。]
(1050) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 22時頃
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[うん。まぁ、何かくらいは判別できそう。]
いつか≠ェはっきりしないと落ち着かないかなって。
[ばいばいになれなかったお別れに、 曖昧なままの約束>>594は似合わない。 もしかして社交辞令だったかなとかはわたし、 あんまり考えないようにしている。 気持ちを塗りつぶされるのはやっぱりヤだもんね。]
柊くんは誘った。 れんくんや乃絵ちゃんも来てくれるんじゃないかな。 他は当日のお楽しみ。
……それくらいは、いい?
[わたしは真正面じゃなくて、向井くんの隣に並ぶ。 わたしたち、最初はずっとこの立ち位置だった。]
(1051) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 22時頃
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……フーセンガム、膨らませられるようになったよ。 まだまだ小さいけどね。
今日までにできるようになろうって思ってたら 駄菓子屋のおばあちゃんに顔、覚えられちゃった。
[その結果のバレンタインは別のお話。>>576]
いつ、って区切りがあると、 わたしもまた頑張れる気がするから。 こっちも、ね。もしよかったら、来て。
……あ、今回はピアノじゃなくてキーボードです。
[あるいはおもちゃのピアノ。そのどちらかで、 わたしはどっちも≠ノ無理なく手を伸ばそうと思う。 そう向井くんに告げて、手を振った。]
(1052) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 22時頃
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大学でも、向井くんなりに楽しんでね。
[ない方がいいけど、もし、万が一、 最後に会計が合わなかったらこっそり教えてね。 下手な販売係でも一緒に数えることはできるから。
——そして、 ぴったり合ったら、良かったねって笑い合おう。]*
(1053) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 22時頃
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— それから:帰宅部引退 —
[月曜日は音楽室、金曜日も暫くは乃絵ちゃんのお見舞い。 週の半分一緒に帰れればいい方で、 わたしたち帰宅部の活動最終日は瞬く間もなく訪れた。]
ひとみちゃん。
[まずは、帰宅部のその後の話をしようかな。 帰宅部を終わらせない方法>>309は見つからなかった。 卒業式を終えれば、音楽室も通学路も消える。 それに——]
今日もこれからサークル? 練習、頑張ってるね。
[ひとみちゃん>>1009の門限がなくなって、 サークル活動を始めたからだ。ギター担当らしい。 わたしはまだその音色を聞いていないけれど、 「楽しみにしてるね」って何度も伝えるよ。>>1011]
(1079) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 22時半頃
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[わたしたちは同じ帰宅部で一緒に帰ってて、 ひとみちゃんの大学は家から通える距離。 わたしの大学も近隣の大学。>>672
学部は違っても、同じ大学でもいいよね。 ダメなら近所にしよう。 それくらいの幸運はあったっていいでしょう。
わたしと違いひとみちゃんは将来の目標を 定めているようで、毎日いきいきと楽しそう。]
演奏会、楽しみにしてる。
[いつか、ひとみちゃんがギターを弾けるようになったら、 一緒に演奏する未来もあるかな。 ちょうどいいことに、 わたしの家には防音部屋とキーボードがあるんだけど。]
(1080) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 22時半頃
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[帰宅部はわたしたちの卒業で終わりを迎えた。 でも、わたしたちの繋がりは途絶えない。
目に見えなくても確かにここに在るもの。 わたしは指を折り、何かを握り締めた。]*
(1081) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 22時半頃
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— 3月14日 —
[「出かけるのか」って聞かれたから、 わたしは「今日はデートなの」って答えた。 びっくりして咽せたお父さんの話はまた今度。
服の内側、わたしの首元には、お守りのように チェーンをつけたボタン>>1067が潜んでいる。 そりゃするよ。わたしの「すき」の強さを知らないな。]
(1154) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 23時半頃
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[(わたし視点)クラスメイトから友達より、 友達から恋人になる方が早かったわたしたちだから、 わたしはれんくんに伝えてないことが沢山ある。>>1023
少しずつ、すこしずつ、話をしよう。 わたしの夢のこと、家族のこと、昔の話も、心の内も。 わたし自身のこと、こんなに伝えるのは初めてで、 誰かをこんなにすきになったのも初めてだってことも。
だからわたしにも、あなたのことを教えてほしい。 きっと、ふたりのたからものが増えると思う。>>1068
だから、夕暮れに染まる太陽と月>>1026みたいに 繋いだ指先が手のひらまで重なるように>>1025、 同じ時間を積み上げていこう。]
(1155) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 23時半頃
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[きっとわたしの願いは「それから」の先>>1028で叶う。
だから今の内に付け加えておくと、 「めい」って呼んでもらえるのもだいすきだよ。 柔らかくて、優しくて、お日様みたいにあったかい声。 すきな音>>-1124を伝えたら、名前呼んでくれるかな。
グループチャット>>343>>344に既読だけじゃなくて かわいい。って書いたオコジョのスタンプをつけたり、 引っ越した家に何度もお邪魔して>>1065 おそるおそる初めて猫ちゃんと交流してみたり。]
(1156) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 23時半頃
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[未来の話ばかりしちゃダメだね。 だって今のわたしは今のれんくんだけを見てる。
わたしだけだった世界から抜け出して、 わたしの知らない未来を歩いていく。
とりあえず、なんでもない今日≠フ手のひらに、 世界で一番だいすきなあなたの手を取っていい? わたしはれんくんの手に指を引っ掛けた。]
(1157) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 23時半頃
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チョコバナナにしよっかなぁ。
[穏やかな声は、春の近づく晴天に溶けていく。 まだデートは始まったばかり。 この先の特別は、わたしもあなたもまだ、知らない。]*
(1158) Pumpkin 2021/06/21(Mon) 23時半頃
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