9 ――今宵"秘密"で会いましょう
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ああ、カレー。 良いね、スパイスいっぱい入れて ナンで食べるカレーとか。
粉っぽいのは苦手だから、もどき になっちゃうだろうけど。
[ ひよこまめ、あったかしら。 使いかけのやつがあった気も。
カレーこそ一人暮らしで作っても ちっとも減らなくって困るし、 かといって一人分なんて難しいから
いいねえって笑ってタクシーに揺られて いた事だろう。* ]
(70) はたけ 2021/04/23(Fri) 23時半頃
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[ いつものわたしなら。 きっと、ここにいることもなかっただろうな。
興奮、緊張、期待、全部を ぐつぐつに、ジャムほどに煮詰めたような今。
私はきっと一種の恍惚状態なのだろう。
非日常に、あなたに、そして ただの夜に、酔っている。
普段は銭湯に行くのだって、 まごつくくせに。
きっと明日か、それとも明後日か 酔いが完全に冷めた時に、
青ざめたり、赤くなったり、それはもう 目まぐるしい忙しさを感じることになるのだろう。
(71) はたけ 2021/04/23(Fri) 23時半頃
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[ これは予感じゃなくって、確信。 そう冷静に判断する頭もすこしはあるのに。 ]
……そう?職場の近くのショップで 買ったやつで、ブランドとかではないんだけど。
[ 酔いに支配されている私の体は、 頭の言うことをさっぱり聞きやしない。 ]
遠坂さんならもっとふわふわひらひらしているのも似合いそう。 機会があったら、いっしょにいこうか
[ ほらね、もう唇すらも、私の言うことを 聞かない。誘うことをあれだけ神聖な儀式みたいに 避け続けていたのに。つるりと、まるで いつもそうしているみたいに、言葉が溢れていくのだもの。
私のサイズ、と言われてついそちらを みてしまった私に縄は掛かるのだろうか。]
(72) はたけ 2021/04/23(Fri) 23時半頃
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多分、大丈夫だと思う よ
[ じっと見るなんて失礼なことは さすがに体も空気を読んだようで、ちらり くらいで視線を逸し浴槽へと視線を戻す。 ]
(73) はたけ 2021/04/23(Fri) 23時半頃
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遠坂さん、大丈夫?
[ 湯気が?変なところに? ]
お水持ってくる? さっきコンビニで買っといたけど、
[ 素面だったらなぁにそれって 気づいただろうけど、残念ながら今の私は 酩酊状態。ぴこん、ぴこん。マークも多重に 付いていたから、あれ?と思っても、 疑問にまで成長することはなく、次の瞬間には 普通に会話をしていたもので。
裸のままで室内へ戻ったりはしないまま。 ]
(74) はたけ 2021/04/23(Fri) 23時半頃
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………。
[ 自分の手の横に、彼女の足がやってきて 私は自然とそちらを見る。
へぇそうやって外すんだ。
実物見たことなかったな。 とはいえちょっとぼやけているのだけど。
留め具を外す、ぱちん、と言う音の正体を 今更ながらに理解して。
美しく引き締まった肉体美は はっきりとは見えなくても、伺い知れた事だろう。 少し、ぼんやりと、ともすれば、 惚けたように、ともだちの体をみていたことに。
気づかれていたとしても、 ]
(75) はたけ 2021/04/23(Fri) 23時半頃
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先にシャワー、どうぞ。
[ 言って、貯まりつつある浴槽へ 強引に視線を戻した。いくら同性だからといって 不躾な視線を投げたら不審に思って 当然だと思う。だけど、でも。 もう一度、見たい。 ]
今更だけど、ちょっと恥ずかしい かも
[ 誤魔化すように言って、さも話しかけたから 視線をやったんだと言わんばかりに、 貴方の姿を、可能ならば盗み見たい。* ]
(76) はたけ 2021/04/23(Fri) 23時半頃
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――……えっ???
[ いじわるだな。 いつもより響くような声が耳に入って肩がふるり、震えた。
――懐かしい景色が、アルコールの香りの中で 蘇っていく。
そう、教室の中、人だかりの中心にいた彼女が 言葉を発すると、きゃらきゃらと小さな花の群れが 揺れていた。
あの時の彼女たちは、これを聞いて 盛り上がっていたのか。
女性ばかりの歌劇団の男性役のような 麗しく格好良いけど、決して本物の男子のように 不躾な視線はよこさない。 そういうところが、良かったんだろうか。 ]
(94) はたけ 2021/04/25(Sun) 00時頃
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[ 全てが理解できない、わけじゃない。 そういう趣味趣向はなくとも、きゃあすてきと騒ぐこともできるだろう。
――あなたでなかったなら。
一度も伝えたことがないから知らなくって 当然なんだけど。
私は、貴方の男性もどきの格好良さより 女性だからこそ、 なのであって。
だからネタに走られても、 ]
うん?うん、そうだね 変わらず、すきだよ
[ 鸚鵡返しのように言うことしかできないし、 やがて肩を震わせて笑う貴方につられて 笑うことしか出来ないから。望む答えを、 反応を返すことは出来ないのだろう。 ]
(95) はたけ 2021/04/25(Sun) 00時頃
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あの時、遠くから、きゃぁって聞こえたときのこと すこし、思い出したな。
こういうことだったの。
[ よもや、すきの二文字を望まれたなんて 私は知らないから。
知らないうちに望む答えを吐き出していることにも 勿論気づかない。
ただ。ほんのすこし、その二文字を発したときに ぷちん、と何かが弾けるような音を聞いた。
私の中、私でも届かないようなずっとずっと奥から。 ]
(96) はたけ 2021/04/25(Sun) 00時頃
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うん?うぅん、でも私、自覚があるものだから。 察してくれっていうのは無理かもだけど。 できるだけは、ね。
[ ああ、気持ちが良い。 彼女の再会して多分一番この言葉を、 胸の内で発しているだろう。
思っても言葉にできない、どう言葉にしたらいいか 知らないから言えないことの数々を、 彼女は笑い飛ばすように、すっぱりと言ってのける。
私が言えない分を言葉にしてくれているようで 本当に爽快な気分になる。
……だから酒も進むんだろうって、最近やっと 気づいたんだ。 ]
(97) はたけ 2021/04/25(Sun) 00時頃
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でも、そうだね。 本人のためにはならないよね。
[ そうして私はグラスに残った液体を飲み干した。 からん、と何度目かの乾いた音が耳に入って、 どれくらい飲んだか把握できなくなってきていることに すこし、笑った。 ]
(98) はたけ 2021/04/25(Sun) 00時頃
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減点されちゃった。 かなり、かぁ。
自分でそれを言うのは、なかなかハードルが 高い、気が……
うぅ
[ ちょっとは貴方に奪われて、 代わりに、かなり、を寄越されても 私はかなり料理ができますとはやっぱり 言い切れなくって、押しやる掌をそっと包んで ]
もう少し、もってて、お願い。
[ ね、と緩やかな力で押し返す。 タクシーの運転手さんはさぞ、仲良しだと 思ったことだろう。そのまま、引っ張らなければ 少し、その手を包んだままで。 ]
(99) はたけ 2021/04/25(Sun) 00時頃
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え?えっとね、チャーシューとか あと、サムゲタンとか……
大人数用だよ、合ってる合ってる。 長時間塊のまま煮込むのに、 今うちにある鍋だとちょっと足りなくって。
[ 自宅に寸動鍋、はかなり特殊というか こだわっている人だとか本業シェフだとか そういう人が使うものだと思うと補足はしつつ
以前自宅で作るチャーシューの動画が おいしそうだったから、とも付け足した事だろう。
けれどいつか、本格的なカレーを作る日が 来たのなら、大活躍してくれるだろうから やっぱり購入リストに入れることにした。* ]
(100) はたけ 2021/04/25(Sun) 00時頃
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黒は色々ね、使い勝手が良いものね。 私も何個か持ってるよ。
[ いいながら。私はすこし、どきどきしている。 なんとも気軽に一緒に、なんて口にしたものの 大人の対応で、そうね、とか、
永遠に来ないけど、いつかねと副音声付の 言葉が帰ってくるんじゃないかって、少し。
今度ぜひ、とそう返して貰えたから、 安心と。それと。期待。
もっと色んな所に一緒に行こうよって 言っても良いのかも知れない。
(101) はたけ 2021/04/25(Sun) 00時頃
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最初の一歩を踏み出せば、自然と 欲が溢れてくる。
汚いな、でも、愛おしいな。 一つ一つ、向き合うことは今はまだ出来そうに ないのだが。それでも。
欲がないなんてよく言われていたから これが欲か、と面白半分にすくい上げてみる。 ああ、底が遠い――。 ]
(102) はたけ 2021/04/25(Sun) 00時頃
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ひぁ、
[ 変な声が出て。 滅茶苦茶驚いた。今顔半分を抑えても もう遅いのだけど。
ぼんやりしていたものだから、 まさか自分にお湯が掛かるとは思わなかったので ]
び、びっくりした
[ そうなんです、これは驚いたから 出てしまった声なんですと、言い訳みたいに連ねて ]
あんまり経験、ないかな。 社員旅行のときも、ちょうどね、ぶつかってしまったから
(103) はたけ 2021/04/25(Sun) 00時頃
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部屋で済ませて、
……おんせん、……
[ 言葉を失ったまま、伸ばされる手をじっと見る。 ]
そっかぁ。そういうのも良いねぇ
[ 考えたことなかったな、本日二回目。 いや何回目?そうか、友達って本当に 色んな所に一緒に行けるんだ。私と行って つまらなくないかなっては少し思うんだけれど。
もしそうならここにも一緒に入ってくれないよね。 ]
え?え?いいのかな、えっと じゃあ、お願いします
(104) はたけ 2021/04/25(Sun) 00時頃
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[ 導かれるまま?備え付けの椅子に掛ける。 両足を閉じて、両手はなんとなく祈るような形のままで 膝の上へ 。
大きな鏡を見ると、鏡の向こうのあなたと 目があった。……笑みを浮かべているのが わかって。
私はすぐに目をそらした。
だってなんだか、私の邪な視線や、 その奥に潜んでるとても見せられたものではない 欲望まで見透かされているようで。
でもそれも長くは続かない。 貴方が私の髪の毛に触れた瞬間、
やっぱり私は貴方の、なだらかな曲線を 見ていたから。]
(105) はたけ 2021/04/25(Sun) 00時頃
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―― BAR秘密 ――
[ あれから。 私は、私達はどれくらいのものを共有出来ただろう。 一緒に喜べただろう。一緒に泣けただろう。
いくつ貴方を知れましたか いくつ私を捧げられましたか
世の中の恋人たちが、我が物顔で 行う行為の数々をどれほど積み重ねてきただろう。
秘密を幾重、罪重ねていただろう。 ]
――…
[ 信頼も、信用も、親善も、偽善も 残念ながら食べ飽きてしまった。 流行りのラブソングの歌詞を、都合よく 抜き出して、感傷に浸ることにも。 ]
(106) はたけ 2021/04/25(Sun) 12時頃
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[ 再会を咀嚼して、 親愛を噛み砕いて、
特別を舐ってなお、湧き出る欲望に 吐き気を催して。
ねぇ、わたし、知らなかったの。
近づけば近づくほど、茨道であることに。
遠ければ知れないことを知るたびに、 知っているのにどうにも出来ない燻りがあることも。
あなたは、もしかして知っていた? 知って尚、その道を選び取って、
どんな気持ちで、聞いていた? ]
(107) はたけ 2021/04/25(Sun) 12時頃
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「遠坂さんと友達で本当によかった」 「佳子ちゃんがいてくれて良かった」 「ねぇ佳子、今日はずっと一緒にいて」
[ 愛情の受け取り方を知らなかった。 知らなかったから。
欲しがるだけ欲しがって、 あなたの望むものはきっと、
何も返せていなかったのに。 ]
(108) はたけ 2021/04/25(Sun) 12時頃
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こんばんは、マスター。
[ いつかと全く同じ靴音を伴って、 ドアを引く。マスターはいつも、やっぱり変わらない。
変わったのは、 ]
今日は、私が先ですよね よかった。
彼女が来るまでは飲まないって 決めているの。
ブラッドオレンジジュース、ソーダで割ってください。
(109) はたけ 2021/04/25(Sun) 12時頃
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[ 私。 もしかしたら、私達。
出されたフレッシュなソーダを口に含む。 ぱち、ぱちと刺激が口の中を刺していく。
待ち合わせは午後八時二十分。 そして現在は午後八時十五。待ち合わせまでは 後五分。 ]
ねぇマスター、なんのことかは知らなくていいの。 ただ、そうかって、言ってください。
――あの日預けた秘密を、返してもらいに来ました。
(110) はたけ 2021/04/25(Sun) 12時頃
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『……そうか』
[ そして私は残ったソーダを全て飲み干し、 グラスをマスターへ突き返すようにして渡した。
やがて彼女が姿を表したなら、やっぱりきっと 同じお酒を注文する。 ]
潮時かなって、思っていたの。
[ 乾杯の前に、挨拶もそこそこに私は ゆっくりと口を開く。 ]
だってもう、週の半分くらいは 一緒にいるでしょう?だから。
[ プラスチックで出来た安っぽいハートマークの キーホルダーを取り付けたキーを、 バーのカウンターに置くと、ふさわしい安っぽい音がする。 ]
(111) はたけ 2021/04/25(Sun) 12時頃
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諦めて?
[ ああ、少し緊張している。 終わりの近づく音がする。
やめてまだ、しらないふりをしていたい 諦めの悪い友達の柳葉黒英がまだ そんな風に言って私の袖を引くけれど。
残念、もう遅い。
私は唇の両端を引き上げて、緩やかな弧を描く。 ]
(112) はたけ 2021/04/25(Sun) 12時頃
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私に愛されて。 それとついでに、良かったら私を愛して。
[ 伝えたことはきっとなかったから 驚いたかも知れない。
だけどこんな冗談を、酒に酔わない私が 言うわけないってきっと貴方が、一番よく知っている。
誰に聞かれていたって別に良い。 だってここは秘密を閉じ込める場所だから。
貴方の手に、キーホルダーを握り込ませる。
……それでもやっぱり少しは不安もあるもんね。 要らなければ捨てても良いなんて、嘘でも絶対 言えやしない。 ]
(113) はたけ 2021/04/25(Sun) 12時頃
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あ、生演奏始まるね 今日はどんなのかな?
[ 響く弦の音に耳を傾ける。 返事を聞くのが怖いわけじゃないし、 望む答えが返る自信があるわけでもないけれど。
私は視線を生バンドのほうへと遣る。
どう答えてくれてもいい。 どう答えたって、もう、貴方のいない世界なら 色の一つだって、わかりはしないんだから。
ああそれでもやっぱり願わくは 貴方と二人、死ぬまで色を数えていたい。* ]
(114) はたけ 2021/04/25(Sun) 12時頃
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[ こんな時でも。 彼女の語気の強い言葉は変わらない。 そう、こういうところも好きなの。
それを言えるのは、きっと今夜、 柔らかいマットレスの上で。
降り注ぐ言葉の数々をぜんぶ、 取りこぼさないように拾うことに必死だったから
返す言葉は、う、とか、え、とか。 喃語か。
薔薇の本数で意味が違う、そういうの すてきだよね、そう言ったあのときは、 ただの雑談のつもりだったのに。 ]
(121) はたけ 2021/04/25(Sun) 15時半頃
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[ 覚えててくれたの、うれしい も 貴方の言葉への返事 も
今は未だ言えなくて。
私はただ静かに、頷いた。
そうして今夜は泊まってほしいと言えたか 言えなかったか、どちらにしても ふたりとも、やらかなマットレスの上。 ]
(122) はたけ 2021/04/25(Sun) 15時半頃
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