27 【crush appleU〜誰の林檎が砕けたの?】
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これはあくまで俺の持論で間違っているかもしれない
[切り出しながら、顎に手を添え視線が逸れる。 自分でも自信は無いというように、成海は滑らかではない口振りで語り始めた。]
神が用意したのは死者との最後の時間と、宣告の天使だけ 生じている異変は、誰かにとって思うことがあるものは ……彼等の意図したことではないんじゃないかな
あのヒトの話の全てが本当ならきっと、 死者と一緒に昏睡中の魂か意志のようなものが 夢という曖昧な空間に集まっている
それは現世はおろか神の元でも起こり得ない特殊な状態で、 俺達人間には特に理解し難いようなことすら、起きる 怪我が治ったり都合の良い物が出てくることと 方向性が違うだけで同じなんだ
[悪夢とは関係する人間が、意識的ではなくても自ら生じさせてしまっているもの。 その結論は、怖い思いをしたのだろう女性には例え可能性でも伝え難かった。*]
(109) 2023/07/31(Mon) 20時半頃
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[あらゆる事柄に阻まれ実行せず終わったが、成海が見に行こうとしていたのは蒔絵の小箱だった。 蝶が飛び交い天原真那の声がするようになった経緯がそこにあると思ったのだ。
この異常な空間で、死者が会いに来た可能性を人間は何もなければ捨てきれない。 ただ真っ向からそんなフィクションを妄信するにはいくつか気になる点がある。
あまりにも生前と掛け離れる、己の願望に都合の良い真那の言動。 怨念と呼ぶには手が込み、どちらかといえば自分の記憶を材料にしているようだった映像。
それに、異変が起きる直前までずっと留まり眺めていたものは あの小箱だ。 儚くなった少女を想い、記憶に残る黒蝶を重ねていた。 ──“現実の世界“で、“本来繋がりがない“それらを心が結んでいた。
だから、小箱に何らかの変化があったのならば それは死者の依代でも蝶の発生源でもなく、 ましてやこの世界や上位的人外の悪意でもなく 成海の思考の投影の証拠であろう、と。*]
(110) 2023/07/31(Mon) 20時半頃
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ええ……?手厳しいね ちょっとした類似点が見つかるくらい、 誰とだってあるものじゃないかな
[咄嗟のように出た「嫌」に苦笑いした。 冗談でこういう反応をするタイプではない気がする。>>111 ほんのりと傷がついたような、そうでもないような。 ただ本気で嫌われているわけではないとも思っていた。
でも、彼女に大藤と間違えられることを面白がり見分け方も教えずに放置したのは良いこととは言えないかもしれない。 地元では誰もが自分を知りある種の畏れすら向けられることがあって、そんな経験は出来なかったから。
田端は悪夢のカケラを助けたらしい。 ゼミの子でなければ自ずと答えは一つだったものの、瞬きが一時早くなった。 自分と福原のそれは、見る者を傷つけるような悪夢だった。 厄介らしい彼女の悪夢には、無力で弱い存在が含まれている?]
(125) 2023/07/31(Mon) 22時頃
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[持論を語った結果、田端は思うことがある様子で。>>112
さてどのように解釈したのだろうと思ったが、 予想外の内容とそれに記憶を揺さぶられる感覚で硬直する。]
……それってもしかしてうちの大学の ああ、いや。知り合いだったわけじゃないんだけど
[一学年下の女子の突然の死。 彼女はとても見目麗しく知名度があったという。
ミスコンにも美女にも興味が無く、相手から特別関わりに来たこともない赤の他人。 だけどその死後噂を囁きあう中の一人に名前を聞いた気がする。 思えばそれは仁科という苗字だったような……。
何も知らない上に当人不在で聞いてしまった重い内容。 言葉が出てこずに、押し黙った。 脳裏には見たこともない必死さを見せた少女の姿。]
(126) 2023/07/31(Mon) 22時頃
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[伏せられた視線、儚げな様。 眼の前で、自分の知る田端里実が知らないか弱い女性に変わった気がした。 それはきっと間違いで、誰もが秘めた一面や隠したい事柄を抱えている。]
……田端さん、
[ああ、君は嫌かもしれないけど同じなんだね。 何をされたか知らないけれど、死んだ兄が嫌いなんだね。 もしかしたら重いものを押し付けられたことも、一緒なのかな。
そんなどうでもいいこちらの事情など、気軽に挟めるわけもなく。 小さく呼んだ以外はじっと話を聞いていた。>>113
そこまでの負を向ける相手が、助けてもらえなかった過去の自分が目前に現れる。 慈悲を疑問に思って当然だろう。]
(127) 2023/07/31(Mon) 22時頃
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[目を伏せる儚さが小さく震えた声が、幻のように。>>114 いつもの田端が戻ってくる。>>115
消えたわけじゃないんだろう。内側に還っただけで。 自分を重ねると容易に想像出来ることだった。]
そうだね。 君が現実で幸せな夢を見れたらと、俺は願うよ とても時間が掛かるのだろうけど お兄様のことを忘れられたらとも
でも…… 助けて欲しかった気持ちは、忘れないでいいと思うな
[ここで自分が助けられなくてごめんねと言ったところで。 その時その場にすらいなかったような人間では、虚しさしか与えないだろう。
だからせめて願うのは、彼女が誰かに手を伸ばせるようになること。 それは過去との決別になるのではと、断片を聞いただけの人間ながら想像する。 そっと互いに向けられた言葉から己だけを取り除きつつ、小さく言い添えた。]
(128) 2023/07/31(Mon) 22時頃
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色々話してくれて、ありがとう
さて……俺はこの場に用事がなかったわけだけど 田端さんももう無いんだよね、どうする? 行きたい場所があるなら送っていこうか
[話の区切りでそう礼の後に切り出す。
忘れてはならないのが、この場所には時間制限があること。 もしかしたら二人ではない誰かが死者であるかもしれないこと。
彼女の未来に希望を見出そうとした身で、拘束するわけにはいかない。 提案は厄介な悪夢に付き纏われているらしい田端を心配したからなのだが、そのままに言えばきっと断られる気がした。
巻き込まない為の単独行動なのだろうし。*]
(129) 2023/07/31(Mon) 22時頃
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……君らしさが絶好調で、何よりだ そのまま元気にあちらへ還ってくれることを祈っているよ
[媚を売ってくる女子とは何もかもが違う様。>>130 だからといって惚れたりはしていないが、普段は好ましいものとして扱っている。
しかし今回は笑って笑って誤魔化しつつ流そうとするしかなかった。 ──だって、正直全く間違ってはいない。 皆を利用して何かするとか、フィクションの悪役のような黒さではないだけで。
一人でいればその分他人を客観的に見れて、洞察力が鍛えられたりするのだろうか? 或いは成海が装いが下手くそなだけかもしれないが。]
(142) 2023/07/31(Mon) 23時頃
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[殆ど記憶が蘇り咄嗟に口に出ただけのことだ。 田端が知らないのなら、それ以上追求も何も無く。 伝えられた情報に相槌を打って話が終わる。>>131
その温かいような悲しいような触れ合い。 仁科のそれは悪夢と簡単に呼ぶべきでもないのかもしれない。 それぞれの記憶が作用して生まれるのならば、皆同じような形で類似した接触をするとは限らないのだろう。
──成海の悪夢を元にした仮説が当てはまらない可能性だって、もしかしたら。]
(145) 2023/07/31(Mon) 23時頃
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……ごめん
[微妙な反応。語りかけた言葉を押し留めたような様子。>>132 それもそうかと思いながら、小さく謝罪した。
成海は心や感情をきちんと持ち合わせている。 胸の中は大穴が空いているわけではない。 ただ、非常に利己的だった。 自分自身の為を思う思考は、誰かを思い遣る気持ちを遥かに上回っていた。
今だって快い己の死を前提にし、どこか全てを他人事のように見ているところがある。 死者の気分になっているのなら、身勝手に他人に多くを託してしまうのは当然。 本当の思い遣りがあれば受け取る辛さを考慮する。]
(147) 2023/07/31(Mon) 23時頃
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[心配を告げなくても断られてしまった。 いくらでも引き止める言葉は浮かぶけれど、それに頷いてくれるならば彼女は「助けて」を言える女性だっただろう。
そんな複雑な心地に、向き直った田端の行動と言葉で戸惑いが混ざる。]
…………ええと ご心配を、おかけました
[まるでそうしたことを言う立ち位置から動く気がないとでも言っているように思えた。>>133 何を言っているのか察知し、ただ心から言えることだけを返す。
見送ることも許されないというように、扉を出た姿は消えて 部屋を出ても、彼女は何処にもいなかった。*]
(148) 2023/07/31(Mon) 23時頃
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……そんなわけがないだろうに
[もう届かない声は乾いた笑いと共に。
一番揺らぎがないのは大藤、行動力があるのは田端。 一体自分が何を出来ているというのか。 後輩への迷惑の掛け具合しか二人に勝るものが無い。
何もせずに重いものを他人に背負わせようとするばかりだ。 義務だなんだと語り成海を教育した高祈の大人達と同じだ。
人間を名乗るには優しさが足りない心では、そういうことしか出来なかった。*]
(149) 2023/07/31(Mon) 23時頃
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── 廊下/福原との通話 ──
[なんとも言い難い心地を逃すように 一度、二度。深く息を吸って吐いて。
その時メッセージとは違う振動に気づき、 すぐに懐からスマホを引き出して通話のボタンをタップした。]
福原君。ああ大丈夫、一人だよ ……分かった。どこに行けばいいかな?
[話は会ってからなのだからやり取りは短く。 告げられた場所に足を向けよう。*]
(151) 2023/07/31(Mon) 23時頃
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[ニル・アドミラリを気取って語るには半端な位置に立っていた。
当たり障りない笑みの下の、大穴などは空いていない心にだって、 時折波風が立つことくらいある。 しかし自分自身の損得に揺れ動く振れ幅に対し、他者の振る舞いに与えられる変化や思い遣る気持ちの微細さは深刻な差だった。
親しい者の葬式で涙一つ見せない姿を、 気丈である、しっかりしている、立派な後継者になる そう目前の少年ではなく身分を見つめる者達は認識したようだが。
内側の冷め方は、権力のない一般人ならそれでも親かと怒鳴られていそうな父の発言に類似している。上回ってすらいたかもしれない。 自分がおかしいことくらいはよく分かっていた。 全てを血と教育方針のせいに出来るとは成海すら思わなかった。
それこそが成功者の血統の義務であるという顔をして、事実秘めてるのは一個人の心の歪みでしかない。 誰かの為に行動を起こす時、その何割が純粋な厚意や善意なのかすら自信が持てない。 誰かの死で自分が涙するところが想像出来ないのが、まだ死者が特定されておらず実感が無いからだと確証が持てない。
──また一人で酷いことを考えてしまうのかもしれない。*]
(156) 2023/07/31(Mon) 23時半頃
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── →神々の絵画の前 ──
[傷だらけから治癒した男二人であの部屋で話すのもおかしな話だ。 言えば相手から来たのだろうが、このほうがいいだろう。
電話で伝えられた場所へ辿り着けば、そこには目的の相手。>>158]
やあ、待たせたね ……この絵を見ていたの?
[開口一番聞いたのは、あまり彼と印象が重ならないものだったからだ。
宗教画にも思える神聖な雰囲気に複数人の男女 今にも矢を打ち放ちそうな有翼の人物。 金の矢で人の心に欲望の炎を灯す愛の神が、母の命で他の神々を結ぶ神話を思い出した。
けれどそれは本題ではない。話が切り出されればすぐ忘れる程度のことだ。*]
(159) 2023/07/31(Mon) 23時半頃
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それは真理かもしれないね 理解しようとするほうが間違いなんだろう、きっと
[聖書には、神がこんな慈悲の与え方をするとは載ってなかった。 元より教えなど人間にとって都合の良いものでしかないのだろう。 福原が言っていたように。>>2:173
アリババが人間と語らうことには既に驚きは無く、結論への同調だけを示して終わる。>>160
分かりきっていた話の理由に反応は薄く、いつものように微笑むだけ。 容易に察せるその意味をそのままに告げなかった理由は分からなかったが、言い方一つをそこまで気にしない。
宣告の後に顔を合わせた時だって、何も変わらないように振る舞っていた福原だ。 あまり空気を暗くしたくないのかもしれない。]
(169) 2023/08/01(Tue) 02時半頃
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[思っていた以上に思慮深く多くのものを抱え込んでいた後輩だが 今一度礼を言いたかったのだという様子に>>161>>162 状況が状況でも、律儀さと素直さを感じてしまう。
助けた行いはともかく、告げた内容はお節介だと鬱陶しがられてもおかしくない筈だと思うが。 こうして義務や責務を負わせるような言葉を受け止める者もいた。
でも、相手の死を意識すれば二人が関わった過去の大きな出来事に目を向くのは当然かもしれない。]
俺には当然のことをしただけのつもりだけど それが福原君に意味を残せたなら、良かったよ
……努力をするってことは、 美形とか優しいとかお金持ちとかよりも 人間にとって大切な根元にあるような性質だと思うんだ
[福原はきっと大変な思いをして、父と重ならない明るい福原青年を作り上げてきたのだろう。 空気を読み波風を立てず皆に好印象を抱かれる、それは高い知性の持ち主が精神を削ってできることだと成海は思った。]
(170) 2023/08/01(Tue) 02時半頃
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[何かを迷う素振りに小首を傾げる。 穏やかに暗い黒色が、その様を見つめた。 待つのは大藤のお陰で慣れているのだ。]
……
[そして、聞き入っているように沈黙した。 事実は何を言えばいいのか分からなくなっていただけだが。
そりゃ理解できないだろう。>>163 触りだけ打ち明けた人間らしくない男の言葉なぞ。 なんて自覚を認めてみせるわけにもいかなくて。]
(171) 2023/08/01(Tue) 02時半頃
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……そう、光栄だね
[静かな返事は最初に全て予想していたからではない。 何かを悟られないよう、己を繕おうとしただけ。
まさかその誰かが当人だとは思ってないのだろうが、彼が発したのは何も意味も無い言葉では無かった。>>164 意を決したように口にした内容は相応に重かった。]
君一人でもそう言ってくれるのなら、
[空間ではなく己が望んで生んだ地獄と罰から引き離され、再び置いて逝かれる側に成り果てて 白いベッドの上で深い落胆と共に鬱蒼と沈んでも、何の意味も無い生還ではなくなるのだろう。
そんなことは言えなくて、不格好に途切れた声を誤魔化すように話題を変える。]
(172) 2023/08/01(Tue) 02時半頃
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俺も会ったら伝えようと思っていたんだ ……おめでとう
福原君がどんな気持ちでいても、 他の誰が助からなかったとしても ──君が生きていてくれて、嬉しいよ もし自分が死者だと言われても、気持ちは変わらない
[それこそが望ましい展開だから当然なのだと思うと、少し後ろめたさに襲われたが。 真っ直ぐに見つめて告げた言葉に嘘などはない。成海なりに彼を気に入り、思い入れていた。]
本当はもっと、成長を見守りたいと思っていたけどね ああ、でも。 どうせ来年には実家に帰って会えなくなってたか
[目前に餌のように吊り下げられた死に、 可愛い後輩が変わりゆく様を見守ることよりも上回って惹かれてしまうのは、利己と共にそんな現実のせいでもあっただろう。
駒になる未来に触れた時、常よりも低く声が変わった。**]
(173) 2023/08/01(Tue) 02時半頃
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そう。なら、より良かったよ 今もあの時も、君の全ての事情を知るわけじゃないけど なんとなく重なったんだ、……自分に
[当然ではない、それは普遍的に与えられるものでは無かったということ。>>181 福原は恐らく意識して明るく振る舞っていた。隠していた部分を知る者はきっと少ない。
あの時未だ確証も無いまま感じた親近感にもう一つ加わって、少しだけ正直に打ち明けた。]
したことが無い人はいないかもしれない けれど、いつか忘れたり投げ出してしまう人も多くいる 誰かの目に留まるようなものとなれば、より少ないんだ
俺が見つけることが出来た君が、 変わらずにいてくれることを祈るよ
[そう語る成海は何かを託そうとしているのかもしれない。 生還する者であるだけではなく、 少しだけ重なる部分を持っている相手に。 だとすればやはり、自分のことばかり考えているのだ。]
(193) 2023/08/01(Tue) 19時半頃
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今俺の前にいるのは君で、 この時間はデートの埋め合わせじゃなかったかな? 他の人の話はしないでよ
[一人ではないのだと福原は言う。>>182 それに普段と変わらない冗談のような軽い調子で、巫山戯たことを返しておいた。
晒しきってない内面、言えるわけもない死への願望。 本当に言いたいことは煙の中へと遠ざかる。 ──君だから言ってるのに、という言葉は。
骨谷のような数奇な縁があったわけでもないのに、ここまで目を掛けている後輩は他にいないのだ。 勿論他の誰かに言われても、気を悪くするわけじゃないけれど。]
(194) 2023/08/01(Tue) 19時半頃
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[彼への祝福に話を流せば、望ましい反応が返ってくる。>>183 可愛い後輩だ。福原が生きていて、本当に良かった。 温度も寂寥も浮かばない心の表層で、ただそう感じた。
しかし、此方がつい口にした言葉を拾った相手ときたら。]
ふふ、どうしたの 俺の為に就職先を決めるわけ?可愛いね、福原君
……そうだね、もっとよく考えるべきだった その気があるなら出来ることは、色々ある筈なのに
[永遠のさようならを拒むような言葉。>>184 本当にその為に決めることはないだろうと思いつつも、 つい揶揄するように笑ってしまう。
その緩んだ唇を結び直しながら、思い出したのは薔薇の中で交わした言葉。 己の選択の為に手を尽くさず死に逃げた一人の父親。]
(195) 2023/08/01(Tue) 19時半頃
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もし、俺が生きていたら……
福原君との縁が途切れない道を選ぼうと思えるように 努力は、してみるよ
[あまりにも曖昧で年上として情けない言葉。 去りゆく者を不安にさせそうな、不確かさ。
けれどそれが今言える精一杯だった。 心に負った問題、家の事情、 解き放たれたかった枷は多く、そして重い。]
こんなことしか言えないけれど、うん、約束はする
だから福原君……
[名前を呼ぶと共に彼へ歩み寄り、腕を伸ばした。 拒まれなければ、その身体を抱擁する。
近くなった距離、潜めた声は相手にのみ届く。]
(196) 2023/08/01(Tue) 19時半頃
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[本当はそんなことを望むどころか、真逆を喜ばしく思う性質の筈だった。
けれど、この今まで目をかけてきた後輩に 生を望んでくれるどこか近しい部分がある存在に
──一つ呪いをかけてみたくなった。 祝福の場に悪しき願いを持ち込んだ魔女のように。 ほら、全ては自分の為。なんて酷い人間なのか。]
俺がこの空間からいなくなるまでには、 君が作ってくれた料理をまた食べに行くね 本当にありがとう 君の行動が、誰かの心を癒やすこともある筈だ
[一歩後ろに下がって微笑む。 今生の別れかもしれない相手をより多く記憶しようという試みも、終わった。
自分からは言いたいことも、今のが最後だ。*]
(197) 2023/08/01(Tue) 19時半頃
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[自分の為に、さよならを否定するのだという。>>207 何も確定しない返事が、嬉しいのだと言う。
同じように感じていたらしいと聞いた時と違い>>205 目を丸くするような驚きは表に出さなかったけど。
彼の利己は、成海の知るそれとはまるで別のものだ。 可愛い可愛いと年上面をする一方、 投影した相手に自分には無いものを見つけていた。
福原ならば過去の呪縛から抜け出せるのかもしれない。]
(211) 2023/08/01(Tue) 21時半頃
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[自分だって味噌汁を飲んで心が落ち着く心地がした。 誰かのことよりそれを口にしておけばよかったのに。 隠し事が多いと余計なものまで秘めてしまう。
茶化されたらもう言い出せなくて、肩を竦め軽い謝罪をしてそのまま立ち去った。>>209]
──どうか、元気で
[背を向け片手を挙げ告げた別れの言葉。 もう充分に語り合った最後は、その飾り気のなさで充分だった。
口にした時の表情を、福原が知ることは無い。*]
(212) 2023/08/01(Tue) 21時半頃
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── 福原と別れて ──
[最後の時まで生還者を自分の元に引き留める気には、福原相手ですらなれなかった。 これからもきっと、逆の立場になった場合でもそうはしないだろう。
神聖な絵画から遠く離れ、靴音を響かせながら思う。
頑張り屋に休むことを教えたのは誰だろう。 交友関係が広そうで全く想像がつかない。
ただ、その人は自分より余程人間として大切なことを知っているとは思った。 きっと、正しく彼や他者を思い遣れるのだろう。 成海に出来たのは、それがいいと当人が示した意志を肯定したことくらいだ。
自分が死んだ後の世界で、そんな人達が福原の側にいてくれたら安心出来そうだ。]
(213) 2023/08/01(Tue) 21時半頃
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[拒まれはしなかった体温と、応じた反応を想う。
そう、福原は大丈夫だ。 語らうには仄暗い可能性に、「気に病まなくてもいい」と元より口にしていた青年だ。
元より懸命に一人生きていた子だが、 汁粉を渡した時から随分変わったんじゃないかと思う。
──二人しかいない場所で、それでも他の誰にも聞かれないよう声を落として告げたものは 呪いにすらなれないのかもしれないな、と感じた。
その胸に棘など刺さらないまま、ただ直向きに果たしてくれる想像は容易に出来た。*]
(214) 2023/08/01(Tue) 21時半頃
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── 二階・通路>>0:398 ──
[異変が起きる前にいた、 そしてアリババに初めて会った時にいた場所。 同じ手摺に凭れながら階下を見下ろしている。
そうして、美術館に来てからのことを思い出していた。*]
(226) 2023/08/01(Tue) 22時半頃
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