15 青き星のスペランツァ
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― 前日夜・安置室 ―
[夜もかなり更けた頃になって、男は安置室を訪れた。ヨーランダはまだ起きていただろうか。 アシモフの隣の台座に横たわる毛玉は、なんだか一回り小さくなったような気がした。]
……大丈夫っつってたじゃねえか、おまえ。
[近くに寄ると、視線はやはり正面から亡骸を捉えることはできない。毛の先とかカプセルの隙間とか、その辺りをうろうろ彷徨い、そして近くにある造花の台>>3:12に目を留めた。]
おまえの星じゃ、"女王"様しか弔われないんだっけか。 けど……まあ、別にこれくらいいいよな。
[造花の山に手を伸ばす。よく口にしていた合成血液のような、真っ赤なひとつを選び取り、アシモフの台に置かれた花>>2:93>>2:95に倣ってそっと置いた。 ギロチンは不死の"女王"から分かれたものだと、以前聞いた。それは死んだら"女王"の一部に戻るということなんだろうか。そこまでは聞いていなかったが。 けれどここは『スペランツァ』だ。ここにいる皆は、それぞれのやり方でギロチンを弔ってくれるだろう。]
(63) 2021/11/11(Thu) 23時半頃
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[それから、アシモフの台座にも白い造花を置く。 並べられている一対の大きな羽根>>1:106に、背中から羽を生やして飛び回るアシモフの姿を思い浮かべて、僅かに口元を緩めた。ああ、きっとそんなことになったらもっと騒がしかったろう。
もっと話しておけば。>>34 そんな後悔はきっと誰にでもあって、いくらしてもし足りないのだが。 もし叶うなら、亡骸を直視できないぶん、その手触りは覚えておきたかったと思う。 アシモフもギロチンも撫でたことはあるけれど、いつもグローブ越しだった。外したところで、金属の義手では毛皮の柔らかさもぬくい体温もわからないだろう。 それでも、じかに触れていたならば、何か残る感触があったのかもしれない。
そんなことを思いながら、男は安置室を後にした。]
(64) 2021/11/11(Thu) 23時半頃
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ライジは、何やら悪寒>>76がして、通路でぶるっと震えた。
2021/11/12(Fri) 00時半頃
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― 朝・談話室 ―
[探索に出かける前に、談話室に足を向ける。 かぼちゃ頭のジルはもう出勤しているだろうかと入り口から覗いて、その姿を見つければのそりと近付いていく。]
よお、ジル。今日も立派な頭だな。 ……ちょっと、撫でてもいいか?
[大きな体を畳むようにしゃがんで、右手のグローブを外した。 そうっと手を伸ばし、濃い色の毛皮に触れる。見た目につやつやした毛並みの、手触りはやはり感じることができないけれど。]
(84) 2021/11/12(Fri) 01時頃
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おまえ、やわらかいなあ。
[操縦桿や探査機の外装に触れる時とは少し違う、押した時の反発の強さのようなもの。グローブ越しよりもほんの僅かだけれどはっきり感じられるような、生き物の肌の柔らかさに触れられたような、そんな心地があった。 そうやってぎこちなくジルの背を撫でてみるうち。かぼちゃ頭に空いた穴の奥、目のようなオレンジ色の光を見ているうち。 何故だか少しずつ、じわりと心が落ち着いていくような感覚になる。
このオレンジ色の光には以前にも――まあまあの頻度で――お世話になっているのだが、じかに撫でてみたのは初めてだった。 もっと前に、色んな相手に、そうしていたらよかったのかもしれない。]
……ありがとうな。
[暫くそうやって撫でさせてもらってから。またグローブを嵌めて、談話室を出る。 出たところで、ものすごい泣き声が聞こえた。>>72]
(85) 2021/11/12(Fri) 01時頃
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ライジは、安置室の方をそーっと伺った。
2021/11/12(Fri) 01時頃
ライジは、安置室前のワチャワチャエライコッチャを見て、そーっと回れ右した。**
2021/11/12(Fri) 01時頃
[ギロチンの死を知ってから、常に誰かと居た為タイミングが無く。探索準備の合間を無って、漸く通信機に手を伸ばす。]
……ヨーちゃん、大丈夫?
[ギロチンの名前は挙げない。挙げられない。二人が心通わせた(と少なくともキランディは思っている)事を知ってるから。幾ら墓守の職務が死を記憶する事とは言え、辛い想いをしているのではないかと心配になったのだ。さりとて、誰かの悲しみに寄り添う事も、皆と同じ様に死を悼む事も、不得手だという自覚がある。]
どうか、無理だけはしないでね。
何かあれば、いつでも頼って頂戴。
……アタシじゃ役者不足でしょうけど、それでも仲間だもの。
[放って置けないわ、と穏やかに呟いた。]
すこし かなしい。
しかし だいじょうぶ、 しごと でも しごと ちがう。
ぎろちん きおく ずっと いっしょ。
[悲しくないと言えば噓になる。調査船船員の宿命として割り切ってしまうこともできる。
ただ、船員として墓守として覚えているのとは別に、個人的な記憶として覚えていようと思っている]
きらんでぃ なかま、 だいじ。
ぼく わすれる しない うれしい。
みんな わすれる する、 ぼく きえる。
よーらんだ ほんとう ぼく ちがう から、 きらんでぃ ほんとう ぼく おぼえる する うれしい。
[何かを伝えようとしている。しかし、語彙が少ないせいか言いたいことがうまく言えず、どこか苛立ちが混じっているような、そんな声だ]
[予想よりはしっかりとした声に、あなたが確かに前を向いているのだと感じる。仕事だけではなく、個人としてギロチンの事を記憶して行こうとしているのだと。もしかしたら、自分なんかよりも余程きちんと、ギロチンの死に向き合えているのかも知れない。]
……ええ、そうね。
ギロチンちゃんはきっと、ヨーちゃんの傍に居てくれるわ。
[キランディの死生観では、死者は自由だ。例え、生前は女王の為に生きる事を強いられていたとしても。そして自由であるなら、彼はきっとヨーランダの傍に居る事を選んでくれるんじゃないかと思った。]
[あなたの言葉には、少しだけ目を伏せた。この通信が出来るという事は、あなただってきっとそうなのだと。]
勿論よ、約束するわ。
ヨーランダでないアナタを、アタシは────いや。
オレは、ちゃんと憶えてる。
生きてる限り忘れたりしないから、オレに対してだけでも、本当のアンタで居てくれないか?
[もう久しく使ってない口調だけれど、『本当の自分』と言うならきっとこっちが正解だ。あなたが言いたかった、伝えたかった事は、こういう事なのだろうと。どうしたって後ろ暗い自分達は、全てを皆に見せる訳にはいかないから。]
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― 朝・談話室付近 ―
[回れ右をすると、かぼちゃ頭を安置室の方に向けたジルが佇んでいる。>>102 セラピストとしてこの船に乗っているやさしいいきものも、聞こえてくる泣き声は気にかかる様子。それでも安置室の方へ向かわないのは、ジルなりの気遣いだろう。 おれですか。なんかアリババとキランディがてんやわんやしてるのが見えたので逃げました。ゴメンナサイ。]
多分、あいつにはあれが一番、いい方法なんだと思う。
[思い切り泣いて、直接別れを告げて、夜に歌う。>>2:86 それが彼の弔いであることを知っている。だからきっと、そんなに心配はいらないと思っている。]
おれみたいに情けない顔してるやつがいたら、また慰めてやってくれ。 おれはすごく……助かったから。
[頼まずとも、それがジルの仕事なのだから、ジルはそうするだろう。だから多分、本当に伝えたかったのは後半だ。何となく付け足すような風にしか言えなかったが。
それじゃあな、と一旦ジルには別れを告げて、男はロビーの方へ向かった。]
(119) 2021/11/12(Fri) 12時半頃
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― 探索に出る前・ロビー ―
[ロビーに入ると、モニターを見つめるイワノフの姿>>103がある。]
経験豊富なアンタでも、そう思うかい。
[イージーなミッションというほどの自信はなかったものの、それほど危険の多い場所だとも思ってはいなかった。現状でも、ガス噴出地帯などを避ければ、居住は不可能ではないとは見ているが。 隣というほど近くでもなく、さりとて声が聞こえないほどでもない。そんな位置に立ってモニターを眺めていたが、ふと視線をイワノフに向ける。]
……アンタに海の話を聞きたいと思ってたんだ。
[いいかい?と首を傾げ。海と同じ色をしているらしい、青い目を見つめる。
『マーレ10』の"海"とはきっと少し違う、本物の海の話。 そこに住む生き物と、その上を渡っていく船と、その下に広がる世界の話。 あの砂塵の故郷にはないものだったから、そんな話を聞いてみたかった。]
とてつもなく深い水の底ってのは、どんな景色なんだろうって思ってな。
[そうして、話の途中で、ぽつりとそんな問いを投げた。]
(120) 2021/11/12(Fri) 13時頃
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― 平原 ―
[イワノフとの会話を終えた後、探索に出たライジの機体は平原を走っていた。 昨日とは別方向の平原を突っ切って森林の手前までを探索するコース。目的は昨日と同じ、地図と現地情報の差異の収集だ。
アシモフやギロチンのこともあるし、岩場の他にもガス発生地帯がないとは言えない。この機体は気密性が高くないので、降りないとしても対策は必要だ。タプルの用意してくれた医療キット>>7はすぐ使えるように操縦桿の近くに吊り下げてあるし、念の為ガスマスクなんかもちゃんと――多分操縦席の裏とかその辺に放り込んだ気がする。 そんなわけで、遠くに見える森に向かって概ね最短距離を爆走中……であったのだが。]
ん?
[前方に地面でも岩でもないものが見えて、眉を顰める。マップデータ上は何もないことになっているのだが……]
(121) 2021/11/12(Fri) 13時頃
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水……だな。
[回り込むような軌道を描きながら速度を落とし、停止。ヤケクソ気味な走り方のせいでスピードを出すと急には止まれないのだ。 改めてモニターの表示と外の景色を見比べる。データの上ではただの平原。しかし、目の前にはそこそこの大きさの水場がある。直径は10mちょっとといったところか。これはまあまあ大きめの差異だ。
通信機のマイクをオンにして、データ管理区域に通信を送る。アリババも仕事をしている頃だろうか。昨夜の光景>>34――今思えば、彼も相当に動揺していたのだろう――がよぎり、一瞬の躊躇があったが。]
……あー、こちらライジ。 事前調査の地図にない水源を発見した。そこそこの大きさなんだが、何で見つからなかったんだか……あーいや、でもこれ相当浅いな。でけえ水溜まりみたいな感じだ。
[ゆっくりと"水溜まり"の外周を回りながら、ドーム前方についたカメラを起動。やや縦揺れする映像も送られてくるだろう。周囲には岩や低木がいくつかある以外は見通しもいい。]
(122) 2021/11/12(Fri) 13時頃
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うーん、何もいねえなあ……
[機体が前傾姿勢をとり、カメラが水面に寄る。 水は透明で、薄い色の水底がかなりはっきり見える。目視した限りの水深は足首くらいまであるかどうかといった程度、ケトゥートゥやジルがちゃぷちゃぷ遊べそうな深さだ。 底に石などはなく、柔らかそうな土が堆積しているような印象である。生き物らしいものは、少なくとも肉眼で見える大きさのものは見当たらない。]
真ん中の辺りがよく見えねえな。 浅いし、ちょっと入ってみるぜ。
[そう言うと、ざぶんと機体の片足を水面に突っ込んだ。 ずしん、と鳥のような足が水溜まりの底に、]
(123) 2021/11/12(Fri) 13時頃
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[……つかなかった。]
……あ?
[ずぶずぶずぶずぶ。 底のように見えていた堆積物は思ったより柔らかく、重量のある機体はどんどん沈み込んでいく。送られる映像もなんか斜めになる。]
(124) 2021/11/12(Fri) 13時頃
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うわっやべえ。 あーこれ多分、泥で埋まっててスキャンに引っかからなかったとかじゃねえかなー。 あーーーーっやべえちょい待って、
[なんてこった。硬い地面についている方の足がまだ踏ん張っているが、これ以上傾けばひっくり返ってドームごと泥中に沈んでしまうだろう。いやわかってるこれはおれが迂闊だった。完全におれが悪い。完全におれのミスなんだがそれはそれとして今から入れる保険はありますか。**]
(125) 2021/11/12(Fri) 13時頃
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きらんでぃ はなす いい、ぼく もじ する。
[しばしの沈黙。
その後に来たのは文章によるメッセージだった]
『AIによる翻訳を使ってメッセージを送ります。
僕は地球ではチャーチグリムと呼ばれ、人とは違う、幻想の存在です。船に乗りこむためにヨーランダという人間に成りすましています。』
『僕の本当の姿は墓場を守る黒い犬です。でも、墓場を守る人と姿を歪められ、墓場という概念がなくなった地球で、僕は生きていくことができなくなりました。』
『だから僕はヨーランダという人間に成りすまして、墓という概念が残る星に行こうと思いました。もし、それが叶わなくても、チャーチグリムという幻想の、本来の姿を誰かに知ってもらいたいのです。』
『誰かがチャーチグリムという墓守の黒い犬のことを知っていてくれれば、僕は消えることはありません。』
『幻を想う人がいなくなれば、幻想の存在である僕は生きられません。でも、幻を想う人がいれば、幻想の存在である僕は生きられます。』
『だからキランディにはチャーチグリムという幻想を知っていてほしいし、忘れないでいてほしいし、皆に広めて欲しいです。』
[通信機からは空調の音だけが聞こえる]
[表示された文章に指先で触れつつ、ぽつりと呟く。]
────そうだったの、か。
アンタは、消えたくなかったんだな。
[キランディの出身である惑星アーラには、元々墓という概念が無かった。故郷を失い、各地を転々とさせられる中で得た知識であり、概念だ。何処で得たのかしっかりと覚えていれば、あなたの助けになれたのではないかと悔やむ。]
……わかった、広めるよ。
幸い、オレは長生きなんだ。多分、まだまだ生きる。
何処かの星へ入植する事になったら、墓とそれを守る黒い犬って概念を、当たり前の物として広めるのもいいかもな。
このマーレ10でも、そうじゃなくても。
そのくらいの間は逃げ切るし、生きるよ。
[その言葉から、キランディが逃亡者である事くらいはあなたにも察せられたかもしれない。実際、彼は“自由”を求める長い旅の果てに、スペランツァへと身を寄せる事になったのだ。]
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― 平原 ―
[そう、アリババからの制止の声>>134をちゃんと最後まで聞いていればこんなことにはならなかったのだ。反省とか謝罪とかはとりあえず置いておきます。今は。]
……クソッッこんなの"海"とは認めねえぞ!!
[ドームを開けて、積み込んでいたワイヤーガンを手近な岩や地面に向けて手当り次第ぶっ放す。うまく固定できたワイヤーを引っ張り、機体の外側についているフックに引っ掛ける。 前の探索で崖を登った時に固定用のフックを増設しておいたのが幸いだった。この二足歩行機、完全に想定されている使用用途を逸脱している。故障してメーカーに問い合わせても保証してもらえないやつである。もうメーカーないけど。]
(139) 2021/11/12(Fri) 20時頃
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はーっ、はーっ、ひとまずはこれで……
[何本かワイヤーを固定すると、どうにか機体の沈み込みは止まった。 地についている方の足も斜めに傾いたかなり危ういバランスではあるが、とりあえずは止まった。陸に上がれるかどうかはまた別の問題だが。いやかなり難しい気がする。詰んだわ。]
……ん?
[こっちはこっちで慌てていたため聞き流したが、アリババ"今行く"とか言ってなかったか? え、行く? 行くって、来るってことか? あいつが????]
ちょい待て待て待て、行くってアンタ、
[通信機に向かって今度はこちらが制止の声を上げようとして、]
(140) 2021/11/12(Fri) 20時頃
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あ?
[落ちる巨大な影、響き渡るプロペラの回転音。>>136 見上げると、見覚えのある無人飛行探査機が飛来するところ。整備されてたっけとか使用申請はとか細かいことが走馬灯のように頭を駆け抜けていくが、猛スピードで飛んできたと思えば空中で鮮やかな急停止。やたら精密な飛行姿勢。]
(141) 2021/11/12(Fri) 20時頃
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……何だその操縦技術!!?
[完全に状況にそぐわないツッコミが第一声だった。]
(142) 2021/11/12(Fri) 20時頃
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ライジは、ぽかんと口を開けてアリババIN無人飛行探査機を見上げた。
2021/11/12(Fri) 20時半頃
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……助かった……
[ともあれ、天からの助けとはこのことである。 ドームの縁に立ち、無人飛行機の下部から下がっているワイヤーを掴む。グローブをした義手はワイヤーがぶち当たろうが痛くも痒くもないが、頭はそうもいかないので注意深く、かつ素早く、フックを自分の機体に引っ掛ける。 しっかり固定されていることを確認して、大きく手を振って引き上げてくれの合図をした。
と、飛行機の胴体部分に何かいる。目を細める。 激しく揺れる黒い粘性流動体を認識して、そんな無茶苦茶な……と乾いた笑いが漏れた。]
まさかアンタが真っ先に自分で来るとはな。
[少し意外だ、と零しながら。 機体が引き上げられ始めれば、操縦席に戻ってドームを閉めた。**]
(143) 2021/11/12(Fri) 20時半頃
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ライジは、ケトゥートゥには後で一緒に怒られます。と神妙な顔をした。
2021/11/12(Fri) 20時半頃
『僕の星は発展のために多くのものを切り捨ててきました。真っ先に切り捨てられたのは僕ら……存在が非確定な伝承たちでした。誰の記憶にもなく、記録も消されてしまった者も多くいます』
[意を決したように息を吸い]
ほし でる する とき、ぼく しぬ ばしょ さがす してた、そう きぶん する。
しかし ふね たのしい、ぼく いきる したい なった。
たぶん しんだ でんしょう みんな そう、 いきる したい。
『だから、僕の知っているすべてを、できる限り生かしたい。キランディに伝えたい、チャーチドッグだけじゃない居場所のなくなった幻想たちを伝えたい。多少は歪んでしまうかもしれない、蘇らないかもしれない、それでも僕は一人でも多くの伝承を残したい』
『できることなら、一緒に伝承を伝えていきたい』
[しばしの間の後、申し訳なさそうなメッセージが送られる]
『……ごめんなさい。さすがに甘えすぎました』
…………死ぬ場所を探してた、か。
[咎める事は出来ない。自分だって、似たり寄ったりだ。死にたかった訳ではないけれど、自由になる手段が他に無いなら、死んだっていいと思っていた。だからこそ、危険が多い調査船のクルーとして紛れ込んだのだ。]
……甘えなんかじゃない。
生きたいって思えるのは、間違いなくいい事の筈だから。
アンタも、他の伝承も生きたいと願ってて……。
その為にオレが出来る事があるって言うのなら、この無駄に永らえてしまった命にも意味があるのかもって思えるし。
……生憎、オレは追われる身だ。
絶対って約束は出来ないけど、“自由”で居られる間は付き合うよ。アンタに。
[追手に見つかるまで。罪が暴かれるまで。鳥籠の中へ戻されるまで。それまでは、あなたに協力すると示した。]
『追われる身、か。なんでそうなったかは聞かないでおくよ』
『そうだね、この調査が終わってキランディがどこかに行くなら一緒に行こう。逃亡じゃなくて、伝承を伝える旅にさ』
[もしそうなったら自分はなんて呼ばれるのか、とヨーランダはどうでもいいことを考えていた。仮初のヨーランダという名前なのか、それともチャーチドッグなのか、はたまた彼が考えた名前なのか。
そんな本当にどうでもいいことだ]
『そんな先でギロチンに、もちろんギロチンじゃないけどギロチンに会って、三人でいろんなところに行きたいね』
『なんだろう、共犯者同士?』
なんて ね。
[くすりと笑い声が漏れた]
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― 平原 ―
うわッ声でけえ……
[暗記している、と大声で返ってきた返事>>161にヘッドフォンを少し遠ざける。丸暗記とかそういう問題か?とも思うが、そういうもんかと納得することにした。とりわけこの船において、自分にとって無茶なことが相手にとっても無茶とは限らない。実際、アリババの情報処理能力はライジより格段に上だ。 だから、実はすごく無茶をしている、ということには思い至らない。]
……まあ、こいつも一緒に引き上げてくれたのは、マジで助かった。 ありがとう、アリババ。
[操縦桿に目を落とす。 オレンジ色の二足歩行探査機。そもそもは探査機ですらなかった、旧型で量産型の運搬用機械。人生の半分以上を共に過ごしてきた、替えの効かない相棒。
迅速かつ的確な判断で、命と相棒の両方を掬い上げてくれたアリババには感謝しかない。]
(167) 2021/11/12(Fri) 23時頃
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お、……っと。
[無事探査機の足が地面につくと、操縦桿を握る。少し歩いてみる。沼に突っ込んだ方の脚の関節から泥がびちゃびちゃ落ちたが、可動にはそこまで影響はなさそうだ。ドーム部分が水没しなくてマジでよかった。
そうして、改めて助けに来てくれたアリババ(無人飛行探査機のすがた)を見上げて、サンプル採取用のポッドに収まって沸騰しているのを見た。別に間抜けとは思わないが、仮にも命の恩人に向かってそんな恩知らずなことは思わないが、ちょっとおもしろい。
けれど、そう、怒っているな……というのは流石に察したので。]
(168) 2021/11/12(Fri) 23時頃
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……や、その。
[頭を掻く。スッ……と目を逸らす。]
悪かったって。
[マジで水遊びで済むと思ったんだもん。 とは、流石に口に出さなかった。]
(169) 2021/11/12(Fri) 23時頃
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そうしてもらえると、助かるよ。つまらない話だし。
元より、当ての無い旅だ。
風の吹くまま気の向くままになりそうだけど、それでも良ければ。
[ただ逃げるだけではない、目的のある旅。そんな事が出来ると思ってなかったから、あなたの申し出がただただ嬉しい。]
……そう言えば、チャーチドッグっていうのは、アンタ個人の名前っていうよりは種族名に近い感じなのか?
ギロチンが、オレ達が知ってるギロチンじゃなくてもギロチンっていうみたいに。
[ギロチンもそうであるなら、共犯者同士、それぞれ名前を付け合うのもいいかも知れないと思う。自分とて『キランディ』は借りてる名だし、逃亡者である以上、元の名を名乗り直す事も出来ないから。]
……何にせよ、その日が楽しみだな。
それまで、改めてよろしくねん♡
[そう言って笑う声は、すっかりいつもの『キランディ』だ。]
『名前つけ合うの楽しそう。チャーチドッグは種族名ってことになるのかな?そう考えると僕自身は名前がないみたいだ』
[ヨーランダというの借り物の名前だ、つまりこの男には名前がないのだ]
うん きらんでぃ よろしく。
そのひ くる ないしょ。
ぼく きらんでぃ ぎろちん ないしょ なかま。
[その笑い声に返す言葉はいつもの片言の『ヨーランダ』だ]
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