10 冷たい校舎村9
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[ 私は臆病だから、耐えられなかった。
見限られる前に、
役立たずの烙印を押される前に、
全部投げ捨ててしまいたくなったの ]
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[ チャイム、鳴っちゃったな。 わあわあ騒ぎ立てながら、慎一は思う。]
(11) 2021/06/06(Sun) 01時頃
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── 8時50分・教室 ──
[ まだこんなに人が少ないのにね。 慎一は自分の席に座ってそのときを迎える。
鳴り響くチャイム。 8時50分、始業の合図。 毎日規則正しく鳴り響く音。
そのときはまだ辛うじて、 やっぱり休校なのかなって思っていられた。]
(12) 2021/06/06(Sun) 01時頃
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[ 圏外だったはずのスマホが鳴る。
それも、慎一のポケットの中からだけじゃなく、 教室のあちらこちらから。一斉に。騒がしく。 急なことに、慎一はちょっとビクッとする。
それから、スマホの中身を見るより先に、 慎一はすんすんと鼻を鳴らした。 奇妙なにおいがした気がしたせいだ。>>#1 慎一は耳だけじゃなく、鼻もけっこう利く。
出所を探すように廊下のほうを見た。 ちかちか。明るいだけじゃない光が、 どういうわけだか瞬いている。気がする。]
(13) 2021/06/06(Sun) 01時頃
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[ 気がするだけならよかったんだけど、 慎一は「なんで?」って思って立ち上がった。
教室の扉まで歩いてって、 扉にそっと手をかけて、力をこめて引く。
だから、教室の前のほうにいた人なら、 慎一以外にも外の様子が見えたはずだ。
どうだろう。さっきと様子の違う廊下が、 扉の向こうから顔を覗かせてるよ。]
(14) 2021/06/06(Sun) 01時頃
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[ 見なきゃよかった。
──と思考する余裕さえもなく、 慎一はその瞬間、その場に立ち尽くしている。]
(15) 2021/06/06(Sun) 01時頃
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なんで。
[ って、何かの癖みたいに呟いたのは無意識だった。*]
(16) 2021/06/06(Sun) 01時頃
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── 現在・3年9組教室 ──
[ なにか、も何も。>>19
目前に広がる光景を見つめて、 少しの間フリーズしていた慎一は、 その言葉で現実に引き戻されはした。
けど、なんていうか、ダメだった。 やっぱり今日は最悪な一日で、 順調にいくことなんかひとつもなくて、 慎一の頭には「なんで?」ばかりが、 たくさんたくさん渦巻いている。]
(27) 2021/06/06(Sun) 01時頃
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……わ、
[ わかんない。と言おうとしたのか、 綿見。と名前を呼ぼうとしたのか、 どっちだったかさえ定かじゃない。
ただ、声のしたほうを振り向いて、 そしたら綿見の黒い髪と目があって、 その向こうにいつもどおりの教室と、 あまりたくさんじゃない級友がいて、
「わ」の続きを紡ごうとしたら、 言葉じゃないものが溢れそうだった。]
(28) 2021/06/06(Sun) 01時頃
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[ だから、慎一はもうダメだった。 何があったかを説明するなんて無理。 みんな、自分の目で見ればいいと思う。
慎一にそれ以上何も言わせないでほしい。 だって、無理。声を発したら涙も出ちゃう。
扉を開けた瞬間から、 ぶわあっとなってた頭の中が、 真っ白から、いろんなもので綯交ぜになって、 目の前の光景もぐにゃぐにゃ歪みはじめてて、
だから、気が付いたときには、 慎一は逃げるみたいに教室を飛び出してる。
行き先なんか考えてなかったけど、 たぶん、もう帰ろうって下に向かって。**]
(29) 2021/06/06(Sun) 01時頃
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── 現在・昇降口へ ──
[ 走っても走っても匂いは消えない。 視界に瞬くカラフルな光がうるさい。
だから逃げ場がないようで、 慎一はちっとも立ち止まれない。
途中、何かを踏んづけて、蹴飛ばして、 足元を見て、何かがカッターナイフだと知る。
だからなんなの。 余計に意味がわからないだけだった。
慎一は泣きたい。 今すぐ「わああ」とか声に出して、 ダンダンと足を踏み鳴らしたり、 うずくまって床に拳を打ち付けたりしたい。]
(78) 2021/06/06(Sun) 11時頃
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[ でも、18歳のそれは奇行でしかないから、 とにかく今はこの場から逃げ出して、 平穏で平坦で静かなところに行きたかった。
名前を呼ばれた気がしたけれど、>>64 というか、だからこそ逃げなくちゃ。 だって今、慎一は絶対にちゃんとできない。
通り過ぎた教室に「おばけやしき」とあって、 また別の教室には「休憩所」とあって、
やっとたどり着いた出口の近くにも、 「豊町高校 第XX回 文化祭」ってあるから、 そんなわけないじゃん。って慎一は思う。]
(79) 2021/06/06(Sun) 11時頃
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[ 校舎の中はどこも異様な様相で、 だから慎一はもう帰りたいって思う。
自分の家が当たり前に逃げ込める場所で、 慎一は運がいいんだけど、その自覚もない。
まっすぐ下駄箱の前までいって、 裸足のまま濡れたスニーカーに足を突っ込む。 左足。左足。左足って頭の中で唱えてたから、 今度はちゃんと順番に靴を履くことができる。
昇降口の冷えたドアノブを握った。 いつもと同じ感触のそれを捻って、押す。]
(80) 2021/06/06(Sun) 11時頃
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[ …………開かない。
扉はうんともすんとも言わない。 別に慎一は非力じゃないし鍵はかかってない。 開かない理由がひとつも見当たらないのに、 思い切り押しても引いてもビクともしない。]
…………。
[ 両手を使って力を込めても、 もっと荒っぽくしても、何度試しても、 扉が動くことはなくて、慎一には逃げ場がない。
察しの悪い慎一も不思議と理解する。 たぶん、というか絶対、この扉は開かない。]
(81) 2021/06/06(Sun) 11時頃
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…………。
[ ドアノブを握りしめたままの両手に、 ぽた ぽた と温い水滴が降ってきて、 その出所は間違いなく自分の両目だった。
慎一は真下に俯いたまま、 頬の内側をぎいっと噛みしめて考えてる。
窓の外の大雪。ひとけのない通学路。 ずぶ濡れの右足の靴下。圏外のスマホ。 廊下を彩るカラフルな光。食べ物の匂い。
頭の中をばらばらといろんなものが漂って、 慎一は考えてる。どうしたらいいんだろう。]
(82) 2021/06/06(Sun) 11時頃
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[ とにかく涙を止めて、落ち着いて、 頭の中の雑然とした状況を、 もう少しマシなものにしたかった。
扉が開かなかったことを知らせなきゃ。 とは、そのときの慎一には浮かばなくて、
そうだ。 昼飯を買い忘れてた。って慎一は思う。*]
(83) 2021/06/06(Sun) 11時頃
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── 回想・文化祭当日 ──
ぎゃははっ、 なんつーカッコだお前! なんでカチューシャだよ。 つか、情報量、多っ!
レンだけなんかやべー。 でも超おもしれー。
え、客引き組でそのへん並べよ。 黒沢、写真撮って広報アカに上げて! あと、俺にも送っといて。 あ、黒沢も入って撮る? 撮ろっか。
[ 客寄せパンダ──もとい鳩羽の姿に、>>0:1056 慎一はひっくり返りそうなくらい笑った。]
(89) 2021/06/06(Sun) 12時半頃
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[ プラカードもだけど、クラスTも。 かわいいクレープの絵ならいいが、 詰んだデザインが万が一どこかに残ってたら、 慎一は本当に吐くんじゃないかってくらい笑った。
せっかくなので記念写真を残そうとしながら、 スイーツアクセ着用、明るく元気な客引きと、 屋台のホラーテイストや、文字通りの目玉メニュー。 割と温度差があって風邪引く人が出ないか心配。
まあ、慎一が心配したって文化祭は始まって、 想像以上の繁盛っぷりに接客に追われることになる。]
(90) 2021/06/06(Sun) 13時頃
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[ 暮石にボタン風対応集を見せられたとき>>0:1185も、 慎一は「本気だったわけ?」ってゲラゲラ笑って、 それを自慢のチャートの隣に貼りだしたはずだ。
本当は自分以外の誰かがレジに入ったとき、 トチるのを目ざとく見つけてやって、 「販売係スイッチ、あ!」とか言いたかったけど、
たとえば前からも横からも後ろからも、 つまりお客さんや調理係やほかの人から、 同時にあれこれと話しかけられたら、 慎一はその情報量に溺れただろうから、
案外そのスイッチに一番助けられたのは、 当の慎一だったのかもしれない。]
(91) 2021/06/06(Sun) 13時頃
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[ でも、そのおかげでうまくいった。 慎一は途中休憩ももらいながら、 チャートと対応集をちらちら見つつ、 最後まで機嫌よくレジに立っていたし、 「これ、役に立ったなあ」なんて、 対応集を指してしみじみと暮石に言ったりもした。
クラスの出し物としての評判も上々。 売上も計算する間もなく上々だろうなって、 高校最後の文化祭を楽しく終えられそうだった。
でも、なんでかなあ。 いつも何かがうまくいかないんだよね。]
(92) 2021/06/06(Sun) 13時頃
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[ その10円玉なら、慎一が持ってる。>>0:1187]
(93) 2021/06/06(Sun) 13時頃
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[ 売ったモノの数と、手元に残った金額。 用意していた小銭の数との確認作業。 もう暮石が数えたって知らなくて、 ズレがないかをちゃんと数えようとして。
その直前に慎一は、 レジスペースの変なとこに挟まってた、 10円硬貨を1枚見つけて小銭の山に混ぜた。
何かの拍子に挟まったんだなって、 深く考えることもなかった。
それで数えたら、10円余っちゃった。 なんで? って頭の中が真っ白になって、 こっそりと震える手で数えなおしても合わない。]
(94) 2021/06/06(Sun) 13時頃
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[ 自分が関わってたら他人を責めなくて済む。
慎一はそう思ってレジに立っていたけれど、 本当に何かズレが生じてしまったときに、 どうしたらいいかなんて考えてなかった。
この10円をどうすればいいんだろう。 どこからズレていたんだろう。 返す相手なんてわかるはずないし、 でも、計算はちゃんと合わなきゃいけない。
10円くらいいいじゃん。って考えは、 慎一の頭には一切浮かんでこなかった。
でもどうしたらいいかわかんなくて、 もう何も考えられなくて、息が詰まって、 混乱したまま、慎一は10円玉を1枚抜いた。]
(95) 2021/06/06(Sun) 13時頃
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[ 会計の記録上の収支の辻褄は、 最終的には合っているはずだ。]
(96) 2021/06/06(Sun) 13時頃
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[ どうしたらいいかわかんなくて、 自分の財布に混ぜることもできなくて、 まだ持ったまんまの10円玉を見るたび、 慎一は今も「なんで?」って思う。]
(97) 2021/06/06(Sun) 13時頃
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[ なんでいつもうまくいかないんだろう。 いつも些細なことで息を詰めて、 動揺して、泣きたくなる自分を、 慎一は、「明日はうまくいくよ」って、 明日はきっとかんぺきな1日になるよって、 必死になだめすかして生きているのに、 そんな日はちっともやってこない。
あんなにかんぺきに思えた文化祭だって、 最後の最後でこうなっちゃうんだもの。 その事実にも、慎一はやっぱり泣きたくなる。]
(98) 2021/06/06(Sun) 13時頃
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[ だからこれは、慎一にとっては、 楽しいばかりだった日、たったひとつの瑕の話。*]
(99) 2021/06/06(Sun) 13時頃
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巻き込んでごめんなさい。
でも、私の最後のわがままに付き合ってほしい。
文化祭、本当に楽しかったの。
私の中に大事に刻んでおきたいから、
最後の思い出作りに協力してほしい。
いつまでもいてほしいなんて、
そんなことまでは望まないから。
そういえば、一人足りない。
曽我君、帰っちゃったんだ。
せっかくの文化祭、来てほしかったのにな。
曽我君が、誰かの家に泊めてもらったって話、
聞いたことがあった。
曽我君には家に泊めてくれるような友達がいるんだって、
私羨ましかった。
頼まれごと断れないような人のいいところ、
それで副委員長なんて引き受けちゃうところ、
だから曽我君にはそんな友達ができるんだろうな。
楽しい文化祭をありがとう。
曽我君、帰っちゃったから、
私、曽我君の分まで楽しんでおくね。
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── 現在・昇降口 ──
[ 慎一が聞いたのは誰かのため息じゃなく、 「どうしたの?」って鮮明な声だった。>>161
そのとき慎一はもう涙をこぼしてはなくて、 ただ、俯いてドアノブを握りしめたままでいる。
慎一はこういうの、ちょっと詳しいんだけど、 急ぎ気持ちを落ち着かせる必要があるときは、 一定のリズムで単純な動作を繰り返したり、 一定のリズムで動くものを見つめるといいよ。
よかったらみんなも試してみてほしい。 慎一は今、握ったドアノブの裏の凹みを、 指先でひたすらなぞっていたところ。]
(170) 2021/06/06(Sun) 16時半頃
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[ ──なので、 急な番代の登場に慎一は「わっ」と言って、 慌ててドアノブから飛びのくように離れた。
そうしたら番代がごく自然な流れで、 扉に手を伸ばそうとするから、咄嗟に言う。]
──あ、開かねえから! それ。
[ 言ったところで信じてもらえたかどうか。 別に自分で試してみてくれてもいいけど、 絶対開かないし、慎一の体温で生温いし、 なんなら手汗でべちょっとしてると思う。 慎一としてはあんまりオススメできない。]
(171) 2021/06/06(Sun) 17時頃
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[ とはいえ、行動の選択権は番代にある。
後ろに飛びのいたまま、 慎一はなんとなしに彼女の動きを眺めてて、]
帰りたいの? 家……、
[ 実際に試したあとかどうか、 扉が開かないということに納得してもらえたら、 シンプルに浮かんだ疑問を投げたことだろう。*]
(172) 2021/06/06(Sun) 17時頃
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── 回想・文化祭当日 ──
えっ、いいの? 入る入る!
[ カメラマンがサマになってる黒沢に、 「入る?」って聞かれたから、>>166 それ以上黒沢に写真に入るよう言うこともなく、 慎一は遠慮なく撮ってもらいにいった。 だって、遠慮する理由なくない? っていうかこんなんみんな写りたいでしょ?
だから、広報用じゃないオマケの写真。 ついでに撮ってもらえたんじゃないかな。 変顔でもいいので付き合ってください。お願い。
材料費だって費用に計上しますとも。>>168 ……客入りも上々だったから賄えたはずだ。]
(187) 2021/06/06(Sun) 18時頃
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[ 慎一はわかりやすく楽しそうだっただろう。
だって、慎一が今まで遠目から見て、 いいなあって思ってた学校生活って、 まさにこういう感じだったんだもの。
でも、慎一は知らない。 誰かの嘘で保たれるはずだった平坦。>>152
そのときどちらか片方でも、 都合の悪い事実を正直に伝えてれば、 なんてことはない話だったんだろうけど。]
(188) 2021/06/06(Sun) 18時頃
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[ まあでも慎一の高校生活って、 ずっとそんな感じだったかもしれない。
楽しい、愉快な高校生活だったけど、 きれいで浅いところ、上澄みだけ掬って、 沈殿したものは知らないまま、みたいな。
でも慎一のそれはきっと、 自分の深いところに触れられるのが怖い以前に、 普通に気にならなかったり、億劫なせいだ。
だから慎一は、 みんなの家の話も、癖の話も、夢の話も。 奥底に抱えるむなしさそのものの話も。 ちゃんと聞いたことがなかったかもね。]
(189) 2021/06/06(Sun) 18時頃
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[ 慎一は黒沢の目指すものを知らないし、 暮石の親が昨年死んだことも知らない。 鳩羽の家に最近起こった事件のことも、 番代の過去に何があったのかも、全部。]
(190) 2021/06/06(Sun) 18時頃
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[ だから、今も。]
(191) 2021/06/06(Sun) 18時頃
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── 現在・昇降口 ──
[ 躊躇なく番代がドアノブを掴む。>>184 慎一はちょっとそわそわしながら見てる。
カチンコチンというカジュアルな言葉は、 あの扉の違和感にやや相応しくないような。]
凍っちゃった……んじゃないような……
[ とはいえ慎一もうまく表現できないから、 ううんと首をかしげているばかり。
暴力的なこと。慎一はしてない。 良識的に扉を押し引きしただけだった。 暴動とか言ってたくせ、その発想はなかったな。]
(192) 2021/06/06(Sun) 18時頃
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……そっかあ。
[ 今すぐ帰りたかった慎一は、 番代の返事にあいまいな相槌を打つ。>>186
なんだろう。女子にこう言われると、 俺は今すぐ帰りたいようとは言いづらい。
どうしたらいいんだろうって慎一は思って、 でも、「外の空気が吸いたい」って、 番代のその言葉なら叶えられるかもって思った。
ドアが開かなくても、窓を開ければいいじゃん。 というか、慎一はそこから帰ればいいし。]
(193) 2021/06/06(Sun) 18時頃
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[ どうしたってドアが開かないこと、 あれだけ奇妙に確信したばかりなのに、 慎一はなぜか窓は開くって思いこんだ。 逆に今までなんで思いつかなかったんだろう。
名案! くらいの気持ちを持って、 番代の隣をひょいと通って、 ドアの傍らの大きな窓の錠を外す。
番代は「閉じ込められた」とか、>>186 物騒な可能性を口にしていたけれど、 慎一はその瞬間だけは妙に楽観的だった。]
(194) 2021/06/06(Sun) 18時頃
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[ でも、]
あ? …………窓も開かない。
[ ついでに言っておくと、 さっきのドアと似た感触でした。
慎一がめいっぱい力を込めているのは、 きっと見ていてくれたらわかるだろう。 番代の目の前で少しの間窓と格闘して、 慎一はなんだかまた落ち着かなくなってくる。
でも、今度はひとりじゃないから、 いったん振り返って、共有してみよう。]
(195) 2021/06/06(Sun) 18時頃
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閉じ込められてるのかもしんない。 …………なんで?
[ わかんない。 慎一はたぶん、途方に暮れた顔をしている。
指先でクレセント錠をカタカタ揺らす。 つまり、落ち着いていたいけど、無理そう。
当たり前っていうとなんだけど、 当然気を回して言葉を選ぶ余裕はなかった。
……というかそもそも、気を回そうにも、 慎一は番代の過去なんて知らないんだけど。*]
(196) 2021/06/06(Sun) 18時頃
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── 現在・昇降口 ──
[ 開かないって慎一ははっきり言ったのに、 返ってきた言葉には疑問符がついてた。>>224
開かないんです。 何度聞いてくれてもいいけど、 慎一は毎回きっちり同じ返事をするだろう。
ついでに、慎一の「なんで?」にも、 答えらしい答えが返ってくることはない。>>225
鸚鵡返しは慎一の心を落ち着けてはくれない。 あまつさえ疑問符は増えているので、 このままいくとふたりとも、 頭の中が「?」でいっぱいになっちゃいそう。
慎一は番代の指がいじいじ、いじいじ、 単調な動きを繰り返すのを目で追っている。]
(232) 2021/06/06(Sun) 20時頃
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[ 答えの返ってこない問いなどごまんとあって、 けど、慎一はいつまでもそれに順応できない。
あきれた顔されることはあっても、 引っ叩かれることなんてなかったからかも。
まだ可能性はある。まだ大丈夫。 とでも言いたげな番代の顔は、 慎一でもわかりそうなくらい変だった。
そのことが余計に慎一を不安にさせる。 だから言葉を詰まらせながら慎一は言う。]
(233) 2021/06/06(Sun) 20時頃
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わ、わ……割ろう、窓。 割ったら出れるじゃん。外。
[ どこか開いてる? 誰か隠れてる?>>227 そんなの探してらんないって慎一は思う。 慎一は、今、今すぐにここから出たいの。
震える声でそう言ったきり、 慎一は口をぎゅっと結んで、 また頬の内側を噛みしめる。
壁に立てかけられていたモップを一本取って、 そのまんま大きく振りかぶって、下ろす。]
(234) 2021/06/06(Sun) 20時頃
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[ かぁんって、乾いた変な音が響いた。 モップの柄だか掌だかがびりびりして、 握ってたモップは手汗で滑って落っことした。
今度はからんって軽い音がする。 モップの柄が床にぶつかった音だ。
それが床を打って少し跳ねる様子が、 慎一にはスローモーションのように見えた。
普通、モップで窓が割れるものなのか、 慎一は試したこともないから知らないけど、 少なくともこの窓は割れないんだなって。
扉や窓が開かないのと同じ、気づいちゃった。]
(235) 2021/06/06(Sun) 20時頃
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…………。
[ 今度はなんでって言わなかった。 言ったらまた泣いちゃいそうだったし。
次の動作をとれないまんまで、 慎一は呆然と床に落ちたモップを見て、
……どうしよう。 どうしようもなくべたついた掌を、 行儀悪く制服のズボンで拭きながら、
慎一はまた「昼飯買い忘れたな」って、 気を紛らわせるように考えていた。*]
(236) 2021/06/06(Sun) 20時頃
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私にはいくらでも時間があるから、
後でゆっくり見ればいいんだし。
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── 現在・昇降口 ──
[ あまりかけられたことのない類の声援。 高い女の子の声が飛んでくる。>>237
男の子にもがんばれないことは多々あるけど、 というか慎一には頻繁にあるんだけど、 その瞬間だけは男の子らしく暴力的に頑張った。
結果、惨敗。間に流れるのは沈黙。
少しの間立ち尽くしていたすえに、 番代が出した結論はたぶん正しい。>>238
「ダメだったわ」とか「へへ」とか、 ありそうなセリフの一言も吐かずに、 番代がモップをもとに戻すのを見た。]
(251) 2021/06/06(Sun) 21時頃
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[ 励ましの言葉。慰めの言葉。>>238 もし思い浮かんでいたとして──、 たぶん返事に困るだろうから、いいかな。
どことなく微妙な空気の中で、 番代の言葉に慎一も言葉少なに答える。]
ああ、うん……。
[ 慎一は、慎一はとりあえず靴を履き替えるよ。 去ってく番代を見送りながら、左の靴を脱いだ。*]
(252) 2021/06/06(Sun) 21時頃
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── 現在・購買 ──
[ 番代と別れて。
慎一はさっき履き替えたばかりの靴を、 また上履きへと履き替えなおした。
頭の中が真っ白、というほどではなく、 でもひどく頭が重くて、ぐらぐらして、 ずいぶん気が滅入っている感じがする。
もぐもぐと空っぽの口を動かしながら、 慎一はポケットの中に手を突っ込む。
財布とスマホは入れっぱなしだった。 だから慎一はこれ幸いと購買に向かう。]
(274) 2021/06/06(Sun) 22時頃
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[ その道中。はあ。って、 慎一は一瞬、自分が言ったのかと思った。]
(275) 2021/06/06(Sun) 22時頃
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[ ……とんだ勘違い。
どこからともなく聞こえた音は、 慎一を挙動不審にするには十分で、 バッと振り返って周囲を見回したりする。
……誰もいないんだけどね。 視界にはどこまでも楽し気な校舎と、 点々とカッターナイフがあるばかり。
慎一もため息つかれることはあったからね。 結果、余計に落ち着かない気分で、 シャツの袖の縁をしきりに指で撫でたりする。]
(276) 2021/06/06(Sun) 22時頃
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[ 慎一は帰りたい。
それは間違いないんだけれど、 気を抜くとずずっていいそうな鼻とか、 味のないものを食み続ける口とか、 そういうのをどうにかしたくて、 ふらりふらりと購買に入り込んだ。
まっすぐにいつもの棚の前まで行って、 いつも当たり前にある商品を予定通り取る。
いつものおばさんがいないことには、 なんだかもう驚かなくなっていた。]
(277) 2021/06/06(Sun) 22時頃
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[ 鼻をぐずぐず言わせながら、 暗記している合計額をきっちりレジに置く。
ついでにレジにあったメモとペンを借りて、
『あんドーナツ/おかかおにぎり/ミルクティー 3年9組 向井慎一』
念のため、几帳面な字で書き残しておいた。
抱えた食べ物と飲み物は、 ……うん。間違いなくいつもと同じ。 それでようやく、慎一は一息つける気がする。]
(278) 2021/06/06(Sun) 22時頃
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[ 満足したかといえば、少しは。 落ち着いたかというのも、まあ少し。
今度はパンの袋の淵のギザギザを、 なんとはなしに指先でなぞってみる。
でも、なんでだろうなあ。 そしたら今度はじんわり悲しくなってくる。 別に、わあわあ泣くほどじゃないけどさ。
少し重たい足取りでのろのろと、 教室までの道のりをゆっくり歩いてく。 さっきは走ってきた道を逆向きに。
……出口を探せって? だって慎一は疲れた。そんな余力ない。]
(279) 2021/06/06(Sun) 22時頃
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── 現在・3年9組教室 ──
[ かくして、しばらくの離脱ののちに、 慎一はパンとおにぎりとミルクティーを抱え、 黙って自分たちの教室に帰ってくる。
そのときまだ、黒沢とか、 ほかの誰かは教室に残っていたかな。
ちらりと黒板を一瞥して──、ラピュタ。>>163 なんだそれ。そう思ったけど、外は見ない。 意味わからなさすぎて怖いんだもの。 あと、今の慎一にはその元気はない。
だから、黒沢の疑問にまずはひとり。 窓の外を見ないやつ、ここにいるよ。>>247]
(280) 2021/06/06(Sun) 22時頃
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[ 自分の席に食料を置いたら、 慎一はそのまんままっすぐ黒板に向かう。
なんかテンション低いね。とかは、 今から書く文字を見て納得してほしい。
『 昇降口の扉 開かない 〃 窓 開かない 割れない 』
黒板に文字をまっすぐ書くのって難しいよね。 斜めになるのがヤで何度か書き直しながら、 これがラクってんだから樫樹はすごいなあとか、 慎一は現実逃避めいたことを考えていた。]
(281) 2021/06/06(Sun) 22時頃
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|
[ それで、自分の書いた文字と、 それからほかの人の書置きも、 もう一度全部に目を通して──、]
外、出れねえかもしんない……
[ 息を吐き、残っていた面々に一言。
まだ何が起きてるのかちっともわからない。 ただ、不可解な断片だけが集まってく。 そのことが無性に居心地悪くて、 昇降口についての報告としてはひどく手短になった。*]
(282) 2021/06/06(Sun) 22時頃
|
文化祭、あんなに楽しかったじゃない。
どうしてみんな、こんなに怖がってるのかな?
|
── 現在・教室 ──
[ 「おかえり」って言われた。>>305 帰ってくるはずじゃなかったんだけどなあ。
ちょっと捻くれたこと書いてみたけど、 黒沢の声に慎一はふっと顔を上げて、 もごもごと「ただいま」って言う。
定型文的な挨拶くらいしか、 返す言葉として思い浮かばなくって。]
(330) 2021/06/06(Sun) 23時半頃
|
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[ 慎一の書き記した文字に、 黒沢は不思議そうな声を上げる。>>306
そりゃそうだ。 慎一と番代だって呆然とした。 意味が分かんなくて、間を埋める言葉もなく、 なんとなくあやふやに解散してきたのだ。]
……開かない。 押しても引いてもビクともしない。 鍵かかってないし、凍ってるんでもなさそ。
[ 並べ立ててみると、改めて理解不能だ。 不思議そうな顔してるとこゴメンだけど、 慎一にもそれ以上は本当にわからない。]
(331) 2021/06/06(Sun) 23時半頃
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窓も割ろうとしたけど、 傷もつかない……、
[ ちょっと声が沈んでても、 さすがに許されたいこの状況。
お察しのとおり、試したの慎一だからね。 非力じゃない元運動部の男の子。 たぶん今いるメンバーの中じゃ、 1番か2番くらいに適した人員じゃない?
あと、公立高校の窓ガラスに、 超強化ガラスを使うのはもったいないと思う。]
(332) 2021/06/06(Sun) 23時半頃
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[ そうやって状況を整理していくと、 どうしたってそこに行き着くらしい。>>307
閉じ込められた。 黒沢が発した言葉に、慎一は眉をひそめる。]
……番代もそう言ってたけど。 状況的には、そんな感じだけど、 でも、なんで? なんで俺たちなの? っていうか、現実的にむりじゃん?
[ だって、やっぱり、なんで? なんで慎一たちが閉じ込められることがある? どんな技術を使えば廊下が一瞬で様変わりする? 疑問は尽きなくて、慎一はうまく笑えない。]
(333) 2021/06/06(Sun) 23時半頃
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俺、チャイム鳴るギリギリに来たけど、 チャイム鳴るまで、廊下普通だったし。
しかも、なんで文化祭……
[ 悪いね。慎一オカルトには明るくなくて。
この状況に理由がつけられるような仮説、 ひとつだって思い浮かびそうにないから、
そうだなあ。 場合によっては図書館で情報収集とか、 あ。九重とかに聞いてみるべきかもしれない。*]
(334) 2021/06/06(Sun) 23時半頃
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── 現在・教室 ──
[ 言われてみれば慎一は有言実行してた。 いつになく暴力的な振る舞いをしてさ。 あれはほとんど暴動といっていいよね。>>355
ちなみにもし黒沢が今この瞬間、 黒いライダースーツに身を包み、 なんかでっかいバイクに跨って、 陽気な廊下を疾走してくれたら、
こんなに落ち込んでいる慎一でも、 元気いっぱい笑えると思うんだけど、ダメ?]
(377) 2021/06/07(Mon) 00時半頃
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[ ……冗談はそのへんにしておいて、 黒沢が物わかりのいいことを言うから、 慎一は反論できる気がせず苦い顔をする。>>356]
……そんなん言われても、 はいそーですかとはなんねえよ。 ヤなもんはヤだし、無理なもんは無理……
[ わかってる。これは黒沢が正しい。 慎一の言い分は到底通らないだろう。
だって現実に慎一は今ここにいて、 どうにも夢を見てるわけではなさそうだし。]
(378) 2021/06/07(Mon) 00時半頃
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[ でもさ、受け入れがたいことってないかな。 慎一にはいっぱいある。毎日出くわす。 なんでもお利口に受容できたらいいんだけど、 慎一はどうもそういうふうにできてない。]
(379) 2021/06/07(Mon) 00時半頃
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[ ……まあ、さっきのは聞き流して。
慎一はちょっと疲れていて、 素直に「うん仕方ないね」って、 へらへら笑って言える気分じゃなかった。
それだけの話。
それに、続く黒沢の言葉に、>>357 慎一は一瞬きょとんとして、「あ!」となって、 さっき一斉に鳴ってたスマホを思い出すから、 たぶん、会話は問題なく前に進むはず。]
(380) 2021/06/07(Mon) 00時半頃
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[ 会話の途中に失礼だけれども、 慎一はその場でポケットからスマホを出す。
みんなに遅れることしばらく、 慎一にもちゃんと届いてたメールを見る。
10行にも満たない短い文面。>>1 国語が得意じゃなくてもわかる不穏な内容。 幸か不幸か慎一は「引導を渡す」を知っていた。
その文面を穴があくほど見つめる。 慎一はなんだかまたドキドキしてくる。
「文化祭、楽しかった」……ああ、だから。 学校が急に文化祭仕様になっちゃったんだ。 ……とは、到底すぐには受け入れられない。]
(381) 2021/06/07(Mon) 00時半頃
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……い、これ、遺書?
[ これは、返事を求めてない問い。 答えなんて聞かなくてもそう見える。
慎一はスマホの画面と、 淡々とした口調の黒沢を数度見比べる。]
こいつの望みで、 学校がこんななってるってこと?
[ だとしたらメールの送り主、 今ここにいるやつの誰かってこと? ──って、察しの悪い慎一も気づいた。>>357]
(382) 2021/06/07(Mon) 00時半頃
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なんで?
[ って、慎一はまた癖みたいに聞いてる。
でも安心してほしい。 何も慎一だって、この怪奇現象の種とか、 メールの送り主の胸のうちとかを、 黒沢に聞こうってんじゃなくて、 純粋に黒沢のその反応が不思議で聞いてる。]
(383) 2021/06/07(Mon) 00時半頃
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なんでそんな落ち着いてられんの? これが遺書でも、黒沢は受け入れる?
[ 慎一はこんな状況に至る前、 雪道を歩きながら会話したのを思い出す。
おかしな会話をたくさんしたね。 そのときも慎一と黒沢はなかなか、 相互理解には至らなかった気がするけど。
慎一はこの件、ヨーコ先生の職務怠慢と同じか、 それ以上に、素直に受け入れられそうにない。**]
(384) 2021/06/07(Mon) 00時半頃
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── 現在・教室 ──
[ そう。ワガママを聞いてもらえず、 慎一は苦い顔をして会話をしている。
黒沢はやっぱり物わかりのいいふうに見える。 この状況にも、慎一の幼稚な言い分にも。>>392
そうされると慎一は、 これ以上駄々をこねづらくなっちゃう。
なんでなんでって思ってても、 自分の足りなさを突き付けられてるみたいで。]
(443) 2021/06/07(Mon) 10時頃
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[ 感情がついてこない。>>392 そんなこともあるんだなあって思う。 慎一はいつも感情に置いてかれちゃうのに。
でも、それって悪くないような気がする。 少なくとも、人前でわあってなっちゃうよりは。]
偉そうなこと言えるだけえらいよ。 …………いいなあ。
[ だから、慎一はいつもみたく、 みんなえらいなあって感覚で、 黒沢はえらいよって言ったはずだった。
……ぽろっとついでにこぼれた言葉に、 慎一は一瞬、自分でもついていけない。]
(444) 2021/06/07(Mon) 10時頃
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[ 「えらい」は賛辞だけれど、 「いいな」は羨望でしょう。
慎一は今の生活を楽しんでいるし、 毎日がんばっていてえらい。 みんなも何かしらすごいしえらい。
それだけでいいはずだった。 慎一だってうまくやれてるんだから。]
(446) 2021/06/07(Mon) 10時頃
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[ ……だから今のは、 いったんなかったことにしよう。
何事もなかったかのように、 慎一はスマホの表面を撫でる。
「遺書みたいだね」>>393 得られてもうれしい同意ではないけど、 今回はふたりの意見は速やかに合致した。]
やっぱ、遺書かあ。 …………かわいそう。
[ 咄嗟に浮かんだ言葉を吐く。 辛くて悲しかったんだろうな。 疲れたのかな。疲れちゃったんだろうな。]
(447) 2021/06/07(Mon) 10時頃
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[ 悲しいなあって慎一は思うから、 感情の回路だけは今日も良好。
元気がないままの慎一からすると、 やっぱり黒沢は落ち着いて見える。 いつもどおり、淡々として見える。>>394]
うん。落ち着いて見える。 ……頼むから、 「何も言えないかな」とか言うなよ。
[ 後半部分はちょっとだけ冗談まじりに。 もし本当に言われたら慎一はもう一度 「黒沢、冷たい」ってこぼすからね。>>0:188]
(449) 2021/06/07(Mon) 10時頃
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[ まあでも、 黒沢は感情が少しゆっくりなだけで、 まだ現実味を感じられないというなら、]
……どっかつねろうか?
[ もうその下りはやっただなんて知らない。
慎一は窓を打ったとき、 手が痛かったから夢じゃないと思う。]
(451) 2021/06/07(Mon) 10時頃
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夢じゃないとして、 どうすりゃいいんだろなぁ。
そもそも遺書だとして、 幽霊でも混ざってんのかって。 ……全員順番につねればいい?
わかんなくない…………?
[ 言ってたらまた悲しくなるから、 慎一の声はだんだん小さくなって、 はあ。ってひとつ息を吐く。 体内の「悲しい」を逃がすイメージ。
このあとどうしよう、とか。 思いつかないまま現状を嘆いた。**]
(452) 2021/06/07(Mon) 10時頃
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── 回想・打ち上げ ── 階段から落ちたぁ? リツおまえ……なんか……、 …………ドンマイ。 [ 「ドジだなあ」とか「タイミング悪いなあ」、 最初に浮かんだ言葉を投げるには不憫で、 打ち上げには帰ってきた樫樹を、 かわいそうに……って目で見て、 慎一はその肩をぽんと叩こうとした。]
(470) 2021/06/07(Mon) 13時頃
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[ 委員長はクレープをつくり、 書記は黒板に文字を書き、 生徒会副会長が絵を添えた。 会計は何をすればいいんだろう? えーと……ジュースでも買ってくるよ。 余ったクレープの有効活用は名案だけど、 今日の利益を少しあてがってもいいよね。 リクエストがある人は申告しておくれ。 万が一材料が足りなくなっても、 最悪近所の店に駆け込めるよう、 その日も慎一は自転車で来てた。 から、ちょっとそこまでひとっ走り。 付き合ってくれる人がいれば歓迎する。]
(471) 2021/06/07(Mon) 13時頃
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[ でも、今回はひとりでも大丈夫。 前回ほど荷物が多いわけじゃないし。 まだほんの少し夏の気配をはらむ風を、 びゅんびゅんと全身に受けて走ってく。 頭や、顔や、Tシャツから伸びた腕が、 風に冷やされてくようで気持ちよかった。 数え直してもズレてるたった10円。 小銭の山をひとりで見降ろしてたとき、 掌も目も頭の中も熱かったのが嘘みたい。 ポケットにねじ込んだ10円玉が、 あれだけ重たく感じたことも。 「みんな」の輪から少し離れて、 慎一はやっと息がつけた気がする。]
(472) 2021/06/07(Mon) 13時頃
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[ そんなこんなで打ち上げがはじまれば、 慎一はまたいつもどおりに、 みんなと混ざって笑えていたはずだ。**]
(473) 2021/06/07(Mon) 13時頃
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[ 無様でもみっともなくても、慎一は生きてきた。 その四文字を何で埋める気かは知らないけれど。>>475]
(506) 2021/06/07(Mon) 16時半頃
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── 現在・教室 ── [ 相槌みたいな「そうかな」に、>>474 慎一はへらっと笑ってみせた。 どんな顔すればいいかわかんないときは、 まず笑っておけばいい……笑えるうちは。 どっかで聞いたことあるようなモットーで、 どうやらその場はごまかせたらしい。 ……そっとしといてくれたのかもしれない。 でもほら、今は慎一のことより、 このメールの送り主の話をしよう。]
(507) 2021/06/07(Mon) 16時半頃
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[ 冗談が冗談として通じてたらいい。>>476 黒沢の否定に慎一はへらっとして、 それ以上からかいを投げるわけでもない。 その裏にあった言葉を慎一は知らない。>>477 だけど聞こえてたらきっとまた、 「なんで?」って問答がはじまったろうし、 秘密にしておいてくれてよかったかもね。 慎一に言わせれば「生きる」とは、 だだしいというよりたのしいものであるはずだ。
ましてやあのメールを見て「いいなあ」だなんて、 へらへら笑いも剥がれ落ちたかもしれなかった。]
(508) 2021/06/07(Mon) 16時半頃
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[ だけどね、そのあとの言葉には同意する。]
あー……、確かに。 気づきもしなかったし、 今、誰なんだろって考えても、 ……わかんねえや、全然。
……探す、かあ。
[ 歯切れ悪くなっちゃった。 だって慎一は想像がつかない。 ここにいる誰かが死んじゃうなんて。 あるいはもう死んじゃってるなら? ……悲しい。の一言からははみ出すくらい、 最悪な話だって慎一は思う。ヤだなあとも。]
(509) 2021/06/07(Mon) 16時半頃
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[ 黒沢をつねる案は辞退され、>>479 みんなつねってく案への反応も微妙。>>480] 幽霊だったら触れないかもしんない。 [ そこまで冗談でもなく慎一は言った。 すごく簡単な証明方法じゃない? いや別に慎一はオカルト好きではないし、 幽霊の類を信じているわけでもないけど、 一般的な幽霊観ってそうじゃないかな。 ただ、それってつまり──送り主は死んじゃってる。 非現実的を現実に受け入れるにしたって、 心情的にやっぱヤだとしか言いようがないな。]
(510) 2021/06/07(Mon) 16時半頃
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[ だから慎一はため息をついた。 そしたら急に背を向けられて、>>483 慎一は黒板の前に立ったまま動揺する。]
(511) 2021/06/07(Mon) 16時半頃
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え、ええ、何? ちょっと、黒沢……? [ 慎一の前で黒沢は何かに謝ってる。>>483 その言葉を向けられてるのが自分とは思わず、 慎一は躊躇いがちに黒沢の方に歩み寄る。 なんだかすごく変な感じ。 大体先に慎一の頭が真っ白になってるから、 慎一は取り乱す人ってあんまり見た記憶がない。
わかんないのは慎一も一緒だ。何もわかんない。 メールの送り主も、この世界の仕組みも、 今目の前で何が起きているのかも。]
(512) 2021/06/07(Mon) 16時半頃
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……だ、大丈夫?
[ なんで? って聞かれても困るの、慎一は知ってる。 から、口にしたのはそんな言葉だったけど、 大丈夫? って聞かれても困るよね。慎一は困る。
様子を伺うように体の正面の方に回り込みながら、 恐る恐るといった調子で声をかける。 ぎゅうと強く握り締められた手首。 「癖みたいなもの」って言葉をふいに思い出す。]
(513) 2021/06/07(Mon) 16時半頃
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いや、え、 ……俺、ここにいないほうがいい?
[ 自分がいくら取り乱し慣れていても、 慎一はちっとも冷静な反応はできない。
でも、これでもさ、 慎一なりに考えた結果だった。
気が滅入るとき、悲しいとき、 慎一はいつも逃げ出したくなる。 誰もいないとこに行きたくなる。
……だから、一般的な対処としてはさておき、 あくまで気遣いとしてそう尋ねてる。**]
(514) 2021/06/07(Mon) 16時半頃
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── 現在・教室 ──
……それ、 もれなく俺も巻き込まれんだけど。 なんもわかんねえし……やくたたず仲間?
[ へらへら冗談っぽく言ってみたけど、 あら。こんな話を朝もした気がする。
送り主に心当たりのない慎一は、 犯人捜しにおいてやくたたずの類だろうけど、 ついでに、慰めや励ましについても、 経験則で補えるほどの経験がないやくたたずだ。]
(561) 2021/06/07(Mon) 21時頃
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マジメで自己チューでやくたたず。 は、ちょっと盛りすぎじゃない?
こんな意味わかんねえ状況で、 正気保ってるだけ、えらいでしょ。
[ 慎一はさっき保ててなかったかもだけど、 手近な棚にいったんあげておくね。
うまい言葉とかなんにも出てこなくて、 困った慎一はやっぱりへらへらしちゃう。
なんか、うん。どうしたらいいのかなあ。 青ざめた顔とか、握りしめられた手首とか、 そういうの見てちょっと困ってるうちに、 黒沢がぱっと顔を上げる。元気に。>>558]
(562) 2021/06/07(Mon) 21時頃
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[ さすがに、相手が慎一でも、 それは空元気にしか見えないなあ……。]
(563) 2021/06/07(Mon) 21時半頃
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[ かえってどうしたらいいかわかんなくて、 バカみたいに納得したふりすればいいかな。 でも、慎一は別に演技派じゃないんだよなあ。
繰り返された「大丈夫!」に、 慎一はちょっと困って「うーん」と言う。]
じゃあ、ここにいたほうがいい? ……黒沢は、どっちのほうがラク?
[ 送り主を探すという目的があるんだから、 ここでじっとしてても仕方ないんだけどね。 一旦、正直に答えてくれることに賭けて聞く。*]
(564) 2021/06/07(Mon) 21時半頃
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── 現在・教室 ──
[ 黒沢がちょっとだけ笑った。>>575 笑ってくれて、慎一はうれしい。
ちょっとほっとするから、 へらへらで表現したくない感じに笑う。 ……しかしニコニコってのも柄じゃないな。]
別に、正しい答えをくれるから、 えらいって言ってるんじゃないしね。
[ ほとんど地面に引っ付いてるようなハードルでも、 跨げてえらいなあくらいの気持ちで生きてたいよ。 というか、そうじゃないとしんどくない? ただでさえ変な状況なんだから、 慎一を見習ってハードルを下げればいいと思う。]
(603) 2021/06/07(Mon) 22時半頃
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[ ……見習われていたのは鳩羽でした。>>576
黒沢がちょっと落ち着いた様子なので、 わたわたしていた慎一もちょっと落ち着く。
出てくるという黒沢に、慎一は「そっか」と言う。 さっきほど空元気ってふうでもないから、 慎一は引き止めたりはしない。 黒沢が黒板に文字を書くのを見守ってる。>>577
それで、黒沢が出ていく間際。 慎一は少しだけ迷って、その背中に声をかける。]
(604) 2021/06/07(Mon) 22時半頃
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……あのさあ、 別に答えなくてもいいし、 そっか、としか言う気ないんだけど、 ……それ、手、痛くない?
[ ぎゅうって手首を握る癖のことだよ。
結局メールの送り主の件、 「ご自身にお心当たりは?」って聞けないまま、 慎一が最後に投げかけた問いはそれだった。*]
(605) 2021/06/07(Mon) 22時半頃
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|
── 現在・教室 ──
[ 黒沢の返事があっても、なくても。
慎一はそれから教室に残って、 さっき買ってきた食べ物を食べる。
どこかでクレープの会をやってるなんて、 慎一の耳には入ってこなかったし、 知っていたとしても、ここに残った。
気が付いたらもういい時間で、 昼食をとるべきだったので、慎一はそうする。]
(607) 2021/06/07(Mon) 22時半頃
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[ 誰かが帰ってくるまでは、 慎一は教室にひとりぼっちだ。
もそもそと自分の席でパンを食べて、 おにぎりを食べて、ミルクティーを飲んで、
ラピュタが怖くて窓は開けられないけど、 自席から外をぼんやり見ているだけなら、
静かな教室も、くるくる舞う白色も、 慎一には結構落ち着くなあって思う。]
(608) 2021/06/07(Mon) 22時半頃
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[ 朝からいろんなことがうまくいかなくて、 帰りたいと思ったのに帰れなくて、 ちょっと泣いたけど、ちゃんと持ち直して、 他人と会話もできたから、慎一はえらい。
昇降口が開かなくて落ち込んで、 メールの送り主はわからないままだし、 この世界についても仮説のまんまだ。
あんまり何の役にも立ってないし、 頼りにならなかったのは明白だけど、 慎一は慎一なりにがんばってて、えらい。]
(609) 2021/06/07(Mon) 22時半頃
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[ そうやって生きてきたはずなんだけどなあ。
「全然頼りにならないな」って、>>575 黒沢のやたらと高いハードルが、 頭の中にちらついて離れないのはなぜだろう。]
(610) 2021/06/07(Mon) 22時半頃
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[ 実は慎一にも立派な腕が2本生えてるんだけど、 どうにもそれらは自分を抱きしめるのに忙しい。]
(611) 2021/06/07(Mon) 22時半頃
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── 回想・文化祭当日 ──
[ 慎一は屋台のレジにいた。 一番お客さんに近い場所。
だから、屋台の目の前の出来事なら、 そりゃあ慎一だって気づくよ。>>304
お釣りの計算をしてるとこだった。
がやがやとした空気の中で、 慎一はお客さんが言う商品名とか、 クレープを包む紙のカサカサって音、 体育館でやってるらしいバンドの演奏。
そういういろんな音と一緒くたに、 柊がすぐそこで呼び込みしてるなって、 うっすらと声は認識していた。]
(612) 2021/06/07(Mon) 22時半頃
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[ それが、声のトーンが変わって、 なんだか空気がざわっとする。
「崩してもいいですかー」って、 差し出されたお札を受け取って、 代わりに小銭を拾ってた指を止める。
なんだろうって慎一も思って、 隣にいるはずの暮石を見た。目が合う。>>543]
(613) 2021/06/07(Mon) 22時半頃
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……トイレとか?
[ 奇しくも誰かと同じことを言ったらしい。 慎一のは柊を庇うんでもなんでもなく、 とりあえず適当言っただけだったけど。>>464
ひとりになりたいんじゃない? とか、 そういう思考さえなく、当てずっぽうに。
数度瞬きをして──、そうだ。お釣り。 えっと、いくら渡すんだっけ。 きちっと種類をそろえて小銭を重ねて。
…………お、お。あ、そうだった。]
(614) 2021/06/07(Mon) 22時半頃
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お待たせしてすみませーん!
[ 少し怪訝そうなお客さんに笑いかけるころには、 慎一は頭の中の片隅に柊の件を追いやって、 たぶん、思い出さない。明日には忘れる。 後日「大丈夫だった?」って聞くこともない。
だって接客が忙しかった。 直接自分と何かあったわけでもない。 この後には10円の謎だって出てきちゃう。
人のことを気にするには余裕がいるんだよ。 慎一にはいつもそれがない。ずっとない。 そろそろできてもいい頃だと思ってたんだけど。*]
(615) 2021/06/07(Mon) 22時半頃
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|
── 少し前・教室 ──
そうだよ。
[ それ以上何とも言わず慎一は笑った。
ごめんね! 君の想像の範疇をこえて。 遥か下のほうからお話ししています。 ギリギリ声が届いてよかったよ。>>616
まあ別に慎一だって、 手抜きしてるわけじゃないんだけど。]
(650) 2021/06/07(Mon) 23時半頃
|
|
[ 出ていく間際、黒沢が振り返る。>>618 慎一は宣言通り、「そっか」って言った。
だから、そこに「行ってきます」はなくて、 当然「いってらっしゃい」も存在しない。
……慣れちゃったかあ。 もごもご、まだ空っぽの口を動かす。 歯形が跡みたいに残ってぼこぼこの頬は、 奥歯で挟んでみても痛みがぼやけてわからない。
慎一の頭には文化祭の様相をした廊下と、 点々と落ちてるカッターナイフばかりがよぎる。*]
(652) 2021/06/07(Mon) 23時半頃
|
|
── それから ──
[ 気が付いたら日が暮れ始めている。
その間、教室に来た人はいたかいないか、 慎一もずっと留守番してるわけではなく、 少し気持ちが落ち着いたころには、 校舎の探索に出かけてみたりもする。
黒沢のように書き置きは残さなかった。 たとえば屋上が開かないか見に行ったり、 非常階段の様子を見に行ったり、
慎一の行動はやっぱりどこか、 外に出る方法を探すことが起点だった。]
(665) 2021/06/08(Tue) 00時頃
|
|
[ 外に出ることができるのか。 ……希望は薄らいでいくばかりだ。
仮に出口を見つけたとして、 慎一は今もまだ家に帰りたい?
……だんだんわからなくなってくる。 あのメールのこと、黒沢と立てた仮説。 そんなものがぐるぐると渦巻いていて。]
(666) 2021/06/08(Tue) 00時頃
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|
[ 一度だけ九重と遭遇した。
……遭遇した、というより、 慎一が非常階段を揺らしてるのを、 気がついたら背後から見つめていた。
どうにも彼女の様子がおかしい。>>584 手を差し伸べるような慎一ではなく、
ただ振り返って、少しビビッて、 彼女をまじまじと見つめただけだったけど、
九重は慎一にも「精神世界」という、 仮説の最後の1ピースみたいなものをくれた。]
(667) 2021/06/08(Tue) 00時頃
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[ それが──、いつのことだっけ。
突然のことに驚いてしまって、 ロクに話もできなかった慎一を置いて、 九重利美はまた校舎のどこかへ消えていく。*]
(668) 2021/06/08(Tue) 00時頃
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