18 星間回遊オテル・デカダン
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― 昨晩・ロビー ―
[ 何もかも食べられたって。>>4:205 その言葉に困ったように、笑って。]
サラって、ほんとに大物。
[いつかの台詞を繰り返した。 それが、かつては環境に強いられた無知と、 諦念ゆえに備わっていた達観であったとして。 ミームは知るよしもなかったのだけれど。]
……私たちも、寝なくちゃね。
[ふたり並んでジェルマンを見送り、 検査を始めるだろうPJに、感謝を伝え。 その他の者たちにも挨拶をして。 言葉少なに沙羅と別れて、部屋へ戻った。]
(1) 2022/05/12(Thu) 09時半頃
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― 昨晩・自室 ―
[数日間の睡眠の不足は明らかだ。 身体も瞼も、気持ちもひどく重かった。 ベッドに横たわったまま、 部屋に備え付けられた端末をじっと見て。
『運が良ければ』の意味を考え続けていた。]
(2) 2022/05/12(Thu) 09時半頃
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― 今朝 ―
[あれほど眠れはしないと思っていたのに、 気づけば浅く眠っていた。
悪夢は昨日のそれよりも、 もっと意味も形もなさない恐怖で出来ていて、 早鐘を打つ心臓に驚き飛び起きる。]
……は、……はあっ、……は……
[飛び起きた勢いのまま、個人端末を引き寄せる。
画面には、エフが追放された旨が表示されていた。 そのことに、胸を撫で下ろす自分が疎ましい。
それから少しの間を置いて、 ああ、確かめなければ、と、思った。 ――部屋を出る。]
(3) 2022/05/12(Thu) 09時半頃
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― ジェルマンの部屋 ―
[忙しなく行き来する清掃用ロボットを目にする。 それは3日前と、2日前の朝の光景によく似ていた。
半ば駆けるようにして、ロボットを追う。 転びかけて、壁に手をつき。 息切れをしながら、部屋へと入る。
果たして、そこに。]
(4) 2022/05/12(Thu) 10時頃
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[口を押さえて後ずさる。 そんな光景を見るのなんか、初めてだった。 なにかのまちがい。なにかのまちがい。 なにかのまちがい。なにかのまちがい。]
…… …… ……――!
[なんの意味も持たない言葉が頭を駆け巡る。 間違いでも、なんでもない。
場違いな花のついた帽子が落ちている。 胡散臭いことこの上のない金縁の眼鏡も。
けれどそこに、頭を撫でてくれた手がない。 潔白のはずの爪先がない。 鬱陶しい前髪がない。]
(5) 2022/05/12(Thu) 10時頃
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[清掃ロボットによってブラシを掛けられ、 端に寄せられた血溜まりの中に、光るものを見て。
己の手が汚れるのも気にせずに、駆け寄って。 拾い上げる――もう何も映すことのない、紫の宝玉。 生きていられたら、と笑った彼の右の眼窩に嵌っていたもの。]
……ぅ、っ、う……あ。 あ。あ。――あああああああああっ!!!!!
[それを握りしめて、ほとんど叫ぶように泣いた。 恥も外聞も、用意しておいた覚悟も、慰めも、いまは、 なんの役にも立たなかった。]
(6) 2022/05/12(Thu) 10時頃
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― 昨晩・ジェルマンの客室 ―
ぬしが悪いのじゃよ。搭乗員を護り、エフ殿を追い詰めるから。
[商人だったものを見下ろし、吐き捨てるようにつぶやく。
女には人間らしい良心も罪悪感もない。エフの追放は、自らがしてきた行いに対する報いだという気持ちはない。
"食事"もそこそこに、通気口をくぐって抜ける。エフが遺したマップデータは非常に役に立った。]
― 翌朝・廊下 ―
[女は廊下から、同胞が乗った冷凍ポッドが出ていくのを見届けた。昨日と同じだった。
昨日と違うのは、自分も同じ運命を辿るだろうというのが分かっているということ。]
すまぬな、エフ殿。未来で待っておると言うたが、それは叶いそうもない。
じゃが、もう一つの約束は守ったぞ。
[今日一日はPJを襲わない。その頼みは実行した。その結果、自分の寿命を縮めることになったが。
それでも何故か、後悔していないのはなぜだろうか。]
……のう、アルクビエレ殿。エフ殿。
ぬしらは、"楽に"死ねたのかのう。
[自室から、届かぬ念話を送る。意味のない行為だとわかっていながら。
以前、アルクビエレが「楽に死ねる生き物が羨ましい」と言っていたのを思い出したから。]
我はあの時、楽も何もないといった意味のことを言うたが。
今になって、ぬしらが痛みも苦しみもなく死ねたなら、と思うよ。
……ぬしらの人間くさいところが、移ったのかもしれぬな。
[まずは支度をしよう。女は、これまで何度も死地に赴いてきた。こういう時、何をすべきかは良く知っている。
もう二度と戻れないと分かっていながら旅立つのは初めてのことだが。]
[軽く荷物を片付け、白紙のファイルを開く。自分の死後、率いてきた部隊をどう振り分け、誰に任せるか。必要なことを書きつけていく。
それから、部隊の兵士たちにあてた手紙も。アメーバではなく軍人として、ほんの僅かに残った精神が必要だと訴えかけてくるから。
先にいってしまった同胞……アルクビエレやエフへの手紙も用意しよう。]
……案外忙しいのう。まあ良いが。余計なことを考えずに済む。
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— ジェルマンの部屋 —
[忙しく行き交う清掃ロボットたちの邪魔にならないよう、 帽子を抱いてぼんやりとベッドの端に座っていた。 ロボットたちが運んでいく肉の破片を、 ミームはどうも彼だとは思えなかった。
豪奢な帽子に添えられた花を弄る。 それは造花ではなく、『萎れない花』のようだった。
実のところ、あのとき>>1:79 言えなかったけれど。 ジェルマンの寄越した『萎れない花』は、 家の自室に飾っている。
言っておけばよかった。 あの年に貰ったプレゼントの中で、 いっとう好きだったって。]
(35) 2022/05/12(Thu) 22時頃
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[死ぬかもしれないってわかっていたのに、 どうして言わなかったんだろう? どうしてもう少しくらい、 素直にありがとうを言わなかったんだろう。
どれほど時間が経ったろう。 たった5分程度だったかもしれないし、 半日ほど経ったのかもしれない。
個人用の情報端末が震えている。
顔は涙に水分を奪われてひりついている。 頭がぼうっとしていて熱い。
ぼんやりと握っていた手を開くと、 乾いた血がぱりぱりと音を立てて零れ落ちた。
思い出から現実に引き戻される。]
(36) 2022/05/12(Thu) 22時頃
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おェっ、ぅっ、ぐ…… …… ……
[不意に胃酸がこみ上げて、えづく。 朝食を取る余裕なんかどこにもなかった。
震える手で端末を握り、操作する――]
『ミツボシの冷凍追放にご協力願います。 検査の結果、彼女は星喰いアメーバでした。』
[目が滑る。何度も。何度も繰り返し。 昨日も目にした文面の、示す人が変わっただけの、 簡潔なその文章を読む。 その意味が脳に到達するまで、少し時間が掛かった。]
(37) 2022/05/12(Thu) 22時頃
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[ハンカチに包んだ宝玉をポーチにしまい、立ち上がる。 ふらふらとジェルマンの部屋を後にする。
お嬢さん、どちらへおでかけですか、という声は、 何処からも聞こえない。]
(38) 2022/05/12(Thu) 22時頃
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ミームは、ミツボシを捜している。
2022/05/12(Thu) 22時頃
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― 廊下 ―
[>>40 適当に歩き出すその姿を見つけるのは、 部屋を目指した沙羅が早かったか、>>39 あの派手で胡散臭い帽子を抱えて幽霊のように当て所無く歩いていたミームが早かったか。
立ち止まる。]
ミツボシ。
[引き攣った声を掛ける。]
(41) 2022/05/12(Thu) 22時半頃
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[それに答えず、>>46 つかつかと歩み寄る。 乾いた血の張り付いた手を振り上げる。
頬を張るつもりで振り上げた。
戦闘経験のあるあなたなら、 その動きはほとんど止まって見えるだろう。
あなたが避けないのなら、強かに、その頬を打つ。]
(47) 2022/05/12(Thu) 23時頃
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どうして。 ……どうして!?
いっ……言った、言ったじゃない、わたし、 殺さないで、って、ジェルマンを、 殺さないでって、襲わないでって、……!
[唇をぶるぶると震わせながら、金切り声で怒鳴る。 泣き喚いて腫れ上がった喉が切れて、血の味がしている。 ヒステリックに叫ぶそれはきっと、 あなたは知ることのなかったメッセージの内容だ。]
なんで、なんでよッ!!! 答え、なさいよッ!!
(48) 2022/05/12(Thu) 23時半頃
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うそつき。
[頬を打てば自分の手が痛かった。 >>49 都合がよかった、という言葉が耳に届くや 咄嗟に、その身体を突き飛ばす。
かつて多少の貧しい暮らしをしていたといえ、 親に愛され育った、ただの娘だ。
ほんとうの喧嘩のやり方など知らない。 ほんとうの怒りの表し方など知らない。 ほんとうの悲しみの表し方など、]
……うそつき。うそつき。 うそつき、うそつき!!!!!!
[声の限りに叫ぶ。 その”嘘”がいったい何を指しているのか、 自分でもよくわかってはいない。 そう間を置かず、客間トラブルを聞きつけたアンドロイドたちが群がってくるだろう。]
(51) 2022/05/13(Fri) 00時頃
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なんとかっ、言いなさいよ、 いまさらっ……なにを、しらばっくれて、 黙ってんのよ! 都合がよかったって、なにが?!誰に!?
サラを守るつもりなんかなかったのに、 守れるなんて言って、あなたがっ…… あなたたちが、殺すつもりだったんじゃない! 私を馬鹿にしてたの!?
[眉をひそめるあなたの>>53 胸ぐらを掴む。 ――けれど、力など入っていないに等しい。 ただ、彼女自身ではもう止まらない。止められない。 あとからあとから、激しい言葉が溢れ出る。]
(56) 2022/05/13(Fri) 00時半頃
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離して!
ほっといて、なんで庇うの!? こいつ、こいつがっ、 ジェルマンをっ、ころっ……殺し、……!
[>>55 制止の手が伸びる。振り払わない。 赤く怒りに燃えるふたつの瞳はミツボシだけを見ている。 その力で引き剥がそうとするなら容易だろう。
ただ、その制止を受けて。 癇癪を起こした子供のように叫ぶ少女の瞳から、 ぼろぼろと涙が溢れた。]
(57) 2022/05/13(Fri) 00時半頃
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…… ……〜〜ッ!!
[わかりきっていた答えのはずだった。>>60 これまで何度も目にした情報の通り。 星喰いアメーバとは、たぶんそういう生き物だった。 高度な知性を持ち、犠牲者の模倣をし、 いくつもの星を喰い荒らす、それは。]
ジェルマンを、かえしてっ…… ばけものぉっ……!
[弱々しい拳と、断絶の言葉が、その胸を叩いた。]
(63) 2022/05/13(Fri) 01時頃
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ミームは、啜り泣いている。もうなにも、言葉にはならない。
2022/05/13(Fri) 01時半頃
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……っ…… っ。
[息が上がっている。引きつるように喉を鳴らす。
あなたはどうして泣かないの>>65、とは問わなかった。 問うほどの思考力がもう残っていなかったのかもしれない。 あるいはそこにもう、涙を見ていたのかもしれない。
肩へ触れた手を縋り付くように引き寄せて、 その胸に顔を埋めてしばし。
ぐしゃぐしゃの顔を拭いもせず、ちいさく頷いて。
ミツボシを突き飛ばしたときに落とした帽子を拾って、 抱きしめて。ごめんね、と呟いて。
友人が移動するのなら大人しくついて行くだろう。**]
(67) 2022/05/13(Fri) 01時半頃
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— ロビー —
…… …… …………
[友人に寄り添われ、>>69 同じ歩幅でロビーに着く。
まさに燃え上がる火に水を被せたように、 その表情は怒りとも悲しみとも言い難い。 消沈という言葉が相応しかった。 ……もっとも、ミーム自身は火なんて危険なもの、 授業中の映像でしか見たことがなかったのだけれど。
ロビーは清掃用アンドロイドたちによって、 空気も含めて清潔に掃除されていた。
昨晩ここを満たしたバターの香りも、 溢れたアップルパイの欠片も、 なんにも残っていなかった。*]
(71) 2022/05/13(Fri) 09時半頃
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— ロビー —
[問いかけられると、>>74微かにうなずく。 曖昧な視線が、派手な装飾を載せた帽子の輪郭を辿る。]
…… ……朝、持って、きちゃったの。 ……怒られるかな。
[それだけで、ミームが今朝、彼の部屋へ行ってきたということが伝わるだろう。両手が汚れていることや、髪から漂う微かな鉄錆のにおいからも。 故人とはいえ、人のものを持ってきてしまった。 それを一体誰が怒るのかは、わからない。]
(75) 2022/05/13(Fri) 11時半頃
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− ロビー −
そう…… 私も、……ぜんぜん、わからない…… ……わからないことだらけね。
[>>76 謝られると、困ったように眉尻を下げて。 ぽつり、ぽつりと口にする。 幼い頃に、母が病で死んだときも、 同じくらい何もわかっていなかったように思う。]
でも、そうね。多分…… ジェルマンは、怒らないわね。……笑うかも。 お嬢様〜、もう寂しくなっちゃったんですか〜? とか、なんとか言って。
[力無く真似てみる。全然似なかった。 何気なく帽子をひっくり返して中を見る。 変わった色の髪が数本残っていて、ため息を吐いた。]
(79) 2022/05/13(Fri) 15時頃
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……見に行っても、もう、 彼処にジェルマンは、いなかったわ。
……………… …… いなかったの。
[行かなくても変わらない。>>78 そういう口振りで。 再び込み上げる涙を呑むように喉を鳴らす。 ロビーにふたり並んで座っていても、 お嬢さんがた、と声をかける者はない。
ふたりで無言でいる時間が長くなればなるほど、 その空虚は深くなる。重くなる。 図々しくも真実として、そこに居座ろうとする。]
(80) 2022/05/13(Fri) 15時頃
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− ロビー −
[ひとつ、ひとつ、言葉を追うように振り返る。
カジノのバルコニー。 医務室。応接室。ロビー。 気障なパフォーマンス。胡散臭い話し方。 御使いを頼まれた荷物。 すこし、年寄りじみたまなざし。
頭を撫でてくれた手。]
っ、ぅく、ッう、うぅ……っ
[頬に一筋光る雫を見れば、>>87呼び水となる。 今度は呑み込めずに溢れ出す。 喉をつかえさせて、隣の沙羅に抱きついて。]
(91) 2022/05/13(Fri) 20時半頃
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さみ、し、ぃ……ッ会いたい、会いたいよ、……! やだよぉ、やだ……やだ、ジェルマンっ……
[もはや叶わない。もはや届かない。 もう二度とは会えないのだということを、 心が、身体が、ようやく理解した。 理解してしまった。
失えば、もう戻らないということを。]
(92) 2022/05/13(Fri) 20時半頃
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[船内をあてどもなく歩きながら、少女の呪詛めいた言葉がずっと心に引っかかっていた。]
苦しんで死ね、か。
……アルクビエレ殿もエフ殿も、最期は苦しかったのかのう。
[歩きながら独りごちる。
楽な死などない、というのが女の持論だ。だが、苦しんで死んでいったと思いたくないのもまた本心であった。]
何故、我らがそうまでして言われねばならぬ。
大切な仲間を失ったのは、我とて同じことよ。
[人の心を持たぬ女は嘆く。
少女達の前では決して言わなかった反論をこぼしながら(どうせ彼女らに言っても理解されないだろうと分かっていたので)歩く。]
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[抱き合っては泣いて、 泣いては抱き合った。
お互いの涙がもう混ざってしまって、 髪も、頬も、服の襟も、 濡れて、濡らして。
ふたり、こんなにも子供みたいに泣いて。 彼が見たら笑いながら困った顔をしたことだろう。 そんなことを思って、また泣いた。
――けれど、そう。底はある。 やがてどちらともなく静かになっていくのを、 止められないのは、すこし、口惜しかった。]
(98) 2022/05/13(Fri) 22時半頃
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[濡れた頬に張り付いた髪をよける。 泣き腫らした目で、沙羅の顔を見つめる。>>97 その決意の気配を受けて、唇を引き結ぶ。]
……うん。
[うなずいた。 他に、支払われた彼の命に対価とできるものはない。 自分たちが生きて、生き延びて、先へ歩むこと以外には。]
……うん、……サラ。 一緒に、生きましょう。
[手を繋ぐ。軽く、熱持つ額を合わせる。 困難が伴うとしても、行かなくてはならない。 彼に報いるため以上に――自分でそれを、望んでいる。]
(99) 2022/05/13(Fri) 23時頃
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― ロビー ―
……サラったら。 気障が少しうつっちゃったんじゃない?
[微笑む少女の頬を撫でて、>>106 軽口を叩く。 ようやく、少しだけ笑った。
けれど、涙と一緒に怒りや悲しみが何処かへ流れ出て行ってしまったわけでは、決してなかった。 一度ついた傷はいま、涙の膜で薄く覆われただけで。 きっと何かの拍子にまた、いつだって開いて血を流すだろう。
それでも。前を向いた。”ともだち”の手を引いて。 ゆっくりとした歩みであっても、一緒に。]
(109) 2022/05/14(Sat) 00時半頃
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……サラって、意外と食べるわよねえ。
[そうして。ともだちに対して、新しい発見をしたりするのだった。]
(110) 2022/05/14(Sat) 00時半頃
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