31 私を■したあなたたちへ
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(個別メッセージ)
灰羅さん、まだ話せてないから時間あれば話しませんか?
今ではなく後でいいです。
というか、僕、今からホテル帰って寝るので。
タイミング合えば、でよろしくです!
『 気に障ったらごめんね。
じゃあ代わりに、俺のことも
柊くんと、下の名前で呼んでくれて構わない。
そうだね。
君のるくあは言わないのかもしれない。
俺の知っている煙崎さんが言っていただけ。
嘘も誇張も憐れみも介入しない。
ただの、事実の話だ。 』
(灰羅へ個別送信)
『るくあの死亡前後のことについて、
お 兄さんに折り入って聞きたいことがあります。
正直、まだるくあが死んだなんて
信じられなくて、戸惑うばかりで。
ご遺族の方の無念と悲嘆を蒸し返すことになり
申し訳ないですが、メールでも会ってでも、
るくあのことを教えて貰えると助かります。」
卯木の勧めに従いメールを打ちながら、随分前に当人から届いた文面が目に入って、落胆が濃くなる。
名前を聞いた程度()。悪くは言われていなかったことにも驚くが、此方の舞い上がりようとあまりにテンションが異なる。ストーカー被害を親族に打ち明けることもなかったのだろうか、多少は勘付いていたはずなのに。
まだ、覚悟は決まりきらないけれど、るくあの兄の顔を見れば固まるだろうか。迷いながら送信ボタンを押す。
(坂理へ個別送信)
『いや、そこは「坂里」「黒須」だろ。
何でしれっと名前で呼び合うことになってるんだ。
ボクは絶対キミのこと「坂里」としか呼ばないからな!』
こう言うところがいちいち神経に障るのだ。
しかし、現在戸籍上は母方の旧姓になっているため、厳密にはもう黒須ワでもない。更に母だけは再婚相手と同姓に改姓していて、もうコロコロ変わる苗字なんてどうでもいい気がしてきた。説明するのも億劫で、誠に遺憾ながら、「ワ君」呼ばわりを黙認するしかないようだ。
『るくあの解釈違い乙。
ボクは好きなんて一言も言われたことがないし、
だったらなんでボクはフられたんだ。
るくあのことはどんな些細なことでも知りたいけど、
キミの惚気は聞かない。本当に以上!』
(中村へ個別送信)
『 俺もアンタと話したいと思ってたよ。
都合のいい時間と場所教えてくれ。 』
(黒須へ個別送信)
『 黒須くんか。
ああ、そういうのはいい。
空いてる時に連絡してくれ。 』
(灰羅へ個別送信)
『じゃあ、今観覧車の前に居ますけど、
ご一緒しますか?
ボクは何周乗っても、その後でも、構わないので。』
『 そうなんだ。
ちなみに俺と煙崎さんは
「坂理くん」「煙崎さん」って
呼び合う仲だったよ。
まだ俺のこと呼んでくれる予定があるんだ。
ありがとうワくん。 』
『 好きです、なんて言葉。
面と向かって言うのは、なかなか面映ゆいよね。
俺だって幼稚園の頃に先生へ言ったのが最後だよ。
まあ、告白に頷かなかったのなら、
煙崎さんが君に抱いていたのは、
愛情ではないかもしれないけど。
愛は確かに尊いものかもしれない。
それでも。
他の感情がそれに劣ると、
決めつける道理もないはずだ。 』**
(灰羅へ個別送信)─※卯木と話したあとの時間軸─
僕は今からでもいいですけど、まあ、日が暮れる前に?
ちょっと熱中症で具合悪くなっちゃって。熱はないんですけどね。
部屋で休んでいます。都合いい時に呼んでください。
(雛子へ個別送信)─※卯木と話したあとの時間軸─
今日暑いけど、大丈夫? 熱中症とかなってない?
雛子ちゃんと話したい……というか、話を聞いてほしいんだ。
気が向いたらでいいけど。
パレードが始まる頃、また観覧車乗らない?
返事がなくても時間になったら観覧車の前で待ってるね。
(綺羅さんへ個別送信)
体調は、大丈夫だと思います。
分かりました。
その位の時間になったら、行きます。
(菊水さんへ個別送信)
「 菊水さん、
ありがとうございます 」
(中村へ個別送信)
『 今日も暑いからな。
具合が悪いなら、ホテルのロビーにするか。
今から行って待ってるよ。 』
(灰羅に個別送信)
ああすみません、ちょっと寝落ちてました。
まだロビーに居るかな?降ります。
もし居なくても、しばらくロビーのソファに座ってますね。
「以上!」で〆たのは何だったのか。その場の勢いだ。もう忘れた。
(坂理へ個別送信)
『なんだよまた自慢か。
ボクなんて最後まで「黒須先輩」だ。
キミだってボクと同い年なのに、なんだこの差は。
どうぞ、存分に優越感に浸るがいいさ!
全敗は気に入らないから、後で
ボクが勝つまで何かで勝負しろ!!!!!👊』
『幼稚園が最後、つまりるくあには
「好き」って言ったことがないのか!!!?
どんだけ口下手で淡白野郎なんだ
ボクなら142627回でも囁くのに!!
なんでるくあはこんな顔だけ朴念仁の方がry
いや、多分予測はついてる。
るくあは、自分に好意を向ける人がダメなんだ。
だからボクは逆立ちしたって選ばれない。
愛情より、もっと根本的なものが欠けていた。
承認と、信頼だ。
……信じて貰うには、どうすれば良いと思う?』
最後は灰羅に投げたのと同じ問いを。
(坂理に個別送信)
『 坂理くん、キミに贈り物がある。
モナリザを一台寄越すから、
ソイツから受け取ってくれよ 』
(一斉送信)
まず、デバイスでのお知らせになる事をお許しください。
”招待者”に確実に届けるためには、
モナリザに放送してもらうか、
アポロで全体送信するか、二択かなと思って。
(おそらく通信関係は全て覗かれているでしょうから)
どちらでもいいんだけど、
文章で残る方にさせていただきますね。
煙崎るくあさんを死に至らしめたのは僕、中村です。
彼女が死にたいと言ったので、致死量の毒をお渡ししました。
どうしてそんなもの持っていたのかは個人的な話なので
割愛します。
話す気になったのは、気まぐれです。
僕は逃げも隠れもしませんのでお好きにどうぞ。
しばらくメリーゴーランドからパレードを眺めています。
パレードが終わったらホテルで普通に食事をして寝ます。
どのタイミングでも、よしなに。
ひとつだけ…
言い訳とかではなくてですね。
僕しか知らないことなので。
彼女、毒を渡したら、
「 ありがとう。
私、今 とっても しあわせ 」
と言っていました。**
『 勝負? いいよ。
何して遊ぼうか。
うーん。顔だけなのは否定できないからなぁ。
もしくは煙崎さんの男の趣味が悪いかの、
どちらかだね。
ワくんはどっちがいい? 』
『 信じて貰う方法?
さあ、知らないな。
俺は煙崎さんではないからね。
でも、142627回も
好きを告げてくれるような相手なら。
俺だったら通報するか。
仕方ないから諦めるかの、二択かな。 』
『 モナリザから受け取りましたけど。
不労所得までGETして、
これ以上モテるのは勘弁なので返しますね。
それより知ってますか。
粗大ゴミって捨てるのにお金がかかるんですよ。
今度兎坂庵でほうじ茶と大福奢って下さい。 』
『 お招きありがとうございます。
遊園地楽しかったですよ。 』
(一斉送信)
『お兄さんに聞いたけど、
遺灰の撒かれたこの島が
煙崎るくあの墓標なんだって。
楽しむことが、るくあへの手向けになるなら。
とりあえず僕は、全部のアトラクションを制覇してから
いこうと思う。
後、るくあの眠るこの地を、他の人に
あんまり騒々しく踏み荒らされたくはない。』
犯人云々のことには敢えて触れず、送信ボタンを押した。
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