29 constellation
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──if・瑠璃川珊瑚の殲滅戦──
恵一くんは私は一人じゃ無いと言ってくれた。
柊木くんは目を逸らさずに見てくれるらしい。
私にはそれで十分だった。
私は、私にできることしかできないもの。
それしかやれない。やらない。できない。
努力すればできるようになることもあるだろうけどね。
私は。
──それこそお肉を調理するように。野菜を切るように。ビームでその土地を焼き払って行った。
地下にいる人間も逃げきれないように地面を抉るようにして。
悲鳴に耳を塞がない。
惨劇に目を背けない。
軍からの攻撃は敢えて受けて…太刀打ちできない絶望を与えながら。
どうして、この世界のパイロットは逃げたんだろう。
私たちと同じように戦闘に巻き込まれて、戦うのが嫌だったのかな。
もしかしたら、巻き込まれたのは戦えないくらい幼い子供だったのかも。
もしかしたら世の中全てに絶望した人なのかも。
そうだったらごめん。
でも、戦えない、それを理由に私の後に戦う誰かの選択肢は狭められないんだ。
その子は、世界を救いたいかもしれないから。
でも。
──それから6時間後に終わったのだと、そう教えられた。
どっと汗が噴き出して。
大和くんをそっと抱きしめながら、私はみんなを振り返った。
「…わたしはこの世界が消えても良い。
ただ私は、最後の人に選択肢を託すの。
戦うことを拒否しても良い。
この世界を終わらせても良い。
──私は大和くんと一緒だったなら
ただ、それで…それだけが嬉しいから…。」
床に寝転がる。大和くんを抱えながら。
万が一にも大和くんを落として散らしてしまわないようにしてから目を閉じる。
「…私の体をギュッと圧縮できるなら
同じこの中に入れて、展望台の丘に眠らせてね。
そうでなくても大和くんと一緒に。
それくらいできるよね?」
ハロに対して私はどこまでも心を許せないまま、それだけ託す。
ハロがその後本当にそうしてくれたのかはわからないけど。
わたしは大和くんに身を寄せ抱きしめる。
やがてその手の力が緩んで、はたりと床に落ちて行った。**
ーーif/珊瑚戦ーー
目映い光が地平線を舐めるように、水平に走る。街は一瞬にして焦土と化す。なぎ払う、という表現が一番近い。何もかもが光に飲み込まれ、後には空虚だけが残る。
ここは地球ではないが、そこには家があり、人が住んでいたはずだ。彼らは悲鳴すら上げる暇もなく存在が根刮ぎ消滅した。
珊瑚は優しい女の子だ。こんな残虐行為に堪えられるわけがない。それなのに必死、歯を食い縛って闘っている。
大和が傍にいるからだ。
殲滅戦は六時間もの長きに渡り、珊瑚の疲労と消耗も酷かった。
「もういい珊瑚ッ、……もう、もうこれ以上頑張らなくていい……」
見るに見かねた僕は何度かそう言ってしまったが、彼女は最後まで意思を貫き通す。
僕らの勝利を告げられても、僕は全く嬉しくなかった。
それは珊瑚の死が確定したのと同義だから。
「珊瑚……」
僕は大和の遺骨を抱く彼女にどう声を掛けたらいいかわからない。
もうすぐ彼女がいなくなる。
いなくなるーー
最後の言葉は、2つ。みんなに向けてのものと、それと。
珊瑚は決して誰にも強いない。お前は死ぬが地球のために闘えだのなんて、友達に言える言葉じゃないから。
それは誰かから強いられることではなく、個人が自分の意思で決めるべき事だから。
はらりと、花弁が散るように彼女は命を落とす。
「珊瑚ッ……!!」
駆け寄ったかもう、床に倒れた彼女は息をしていない。
骨壺をしっかり抱き締めたまま、逝ってしまった。
「うう、あ……あ、……珊瑚、珊瑚……」
彼女は死んだ?違う、殺されたんだ。彼女は自分の意思でパイロットになったわけじゃない。千映も大和も、みんな殺された……!
珊瑚の遺体は遺言通りに展望台へと送られた。大和と共に眠るのだろう。
僕は康生を抱き締め泣きじゃなくる。
大切な友達を失くし、次は僕か、康生か。どのみち誰も生き残れはしない。
パイロット候補になった時点で。
僕らには選択肢は存在しなかった。
敵パイロットみたいに戦闘放棄をしても死ぬ。
戦って勝っても負けても死ぬ。
約束された死。
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