28 僕等(ぼくら)の
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[蟹座は、形としての情報が少ない。四角を基本の形とする星座は幾つかあるし、そもそも蟹座自体の線の繋ぎ方が複数あるからだ。海外の星図に多いが、四角く繋がないものさえある。その上、地上視点だから尚の事判り辛い。ただ、彼が獅子座を先に描く>>313のなら。そして、その位置関係が正しいのであれば、答えは容易に導き出せた。]
獅子座と、蟹座か……! でも、どうしてこの二つを……?
[大和命本人でさえ自覚の薄かった誕生日を、康生が知る由も無い。彼と瑠璃川珊瑚のやり取りも、彼の胸の中にしか無いだろう。だから、その二つの星座に思い入れがある事だけしか康生には解らなかった。合宿でも観測出来なかった、時季外れの星座達。彼が答えを返してくれるかは不明だが、問い掛けずにはいられなかったのだろう。]
[そんな時、敵が此方に飛び掛かって来て、アストロの上半身と下半身が────分かれた。]
(321) 2023/08/18(Fri) 21時半頃
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危な──えっ、割れた!?
[分断されたのではなく、した。アストロは、分離も出来たらしい。もしかするとこれは、自転車という椅子を持つ彼だからこそ成し遂げた技なのかも知れないが。彼は、手足の様に自転車を操っている。相当、乗っていた時間が長かったのだろう。それにしては、フレームが競技用自転車の形をしていないのが何処となく不自然だった。]
[兎も角、敵はもう藻掻く事しか出来なくなった。]
レグルス……獅子の、心臓。 そうであれば────胸元、だけど……。
[いつもの様に胸元へ手を置いたまま、康生はそう言った。*]
(322) 2023/08/18(Fri) 21時半頃
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─コックピットにて 大和命の最期─
[彼の叫び>>325は、康生の問い掛け>>321への答えだった。瑠璃川珊瑚との思い出をこの世界に刻み付け、それを守り抜く事で証にしようとしているのだ。文字通り、命を燃やして。]
命…………みこ、と……。
[レグルス──獅子座の一等星。その意味は「小さな王」。だが、この星にはコル・レオニスという別称があり、その意味は「獅子の心臓」なのだ。当然、星座の中での配置も心臓に相当する位置となっている。幽霊部員だった彼が、よく知っていたものだと思う。活動に参加出来ないだけで実は興味があったのか、或いはそれほどまでに思い入れがあったのか。]
ッ、……!
[心臓が罅割れ、砕けていく。直視出来なかったのだろう、康生はぎゅっと両眼を閉じ、顔を逸らせた。瞼を貫通する程の眩さに包まれる。]
[────が、その光はすぐには収まらない。恐る恐ると言った様子で、瞼が開く。其処には、描いた道に沿って輝く“星座”があった。それぞれの恒星から、空へと向かって光が放たれている。そして、今居る此処は。]
(339) 2023/08/18(Fri) 22時頃
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────積尸気、だ……。
[M44、プレセぺ星団──別称、積尸気。中国に於いて、死した人々の魂が天へ昇る際に通過すると言われている場所。彼の魂もまた、共に昇って行ったのだろうか。康生は暫く、胸に手を置いたまま、呆然とベッドに座っていた。*]
(340) 2023/08/18(Fri) 22時頃
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─少し先の未来 ×日後 校舎跡─
[偶々空いた時間。崩れた校舎の一角────大和命が生活していたと思しき空間>>342に、康生は足を踏み入れていた。其処には、大和命の足跡がそのまま残っていた。二人の誕生日を知れば、何故獅子座と蟹座だったかの答えには充分だった。これだけ熱心に大量の書籍を読んだなら、彼が積尸気を最期の場所に選んだのも納得が行った。]
────なあ、命。 瑠璃川には、ちゃんと会えたか……?
[死した人々の魂が天に行く際に通過する場所。それなら、彼女は彼を待っていたのではないかと。彼も、それを信じたからこそ会いに行ったのだろうと。康生はそう考えた様だった。]
……俺、命や瑠璃川、七尾以外に誰かを亡くしたことってないからさ。 それで、ちょっとわかってないとこあったんだけど。
──……いのちって、重いんだな。
[胸元に手が当てられる。手の平から、鼓動が伝わる。この身体に入っている命は、二人分だ。二つ在りはするが、不可分の命。]
[何か形見に貰って行こうにも、身体的事情がそれを許さない。だから、場をそのままにして康生は立ち去った。*]
(350) 2023/08/18(Fri) 23時頃
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