29 constellation
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僕の悲しみ、僕の憤り。
恋人である珊瑚とは比べ物にならなくとも、こんな若く死ぬ理由なんかまるでなかった大和の死に抱えきれない想いで苛まれた。
葬儀の後にパイロットに選ばれた珊瑚。
大和の元に行けると語る彼女は微笑んでいたから、寂しい嫌だなんて僕は叫べなかった。
本当は、珊瑚を失うのが僕は凄く嫌だったし堪えられなかったが。
こんな地獄は何時迄続くのか。
珊瑚は僕のハンカチを受け取らなかった。それは拒絶でないのは、いつも優しい、優しすぎる彼女を知っている僕にはわかる。
吐瀉物を処理して欲しいと言ったのもきっと康生のためだ。
こんなに追い詰められて自分が大変なのに他人を慮る彼女は……本当に素敵な女の子だと思う。
康生のアドバイスは冷静で合理性の高い内容だ。しかし、結果論ではそうでも全滅させたらいいという言葉に僕は戸惑った。
珊瑚はーー自らでなんとかすると、力強く語る。
「……珊瑚、……」
立派過ぎる彼女。女の子なんだからもっと弱音を吐いてもいいのに。大和の死が彼女を強くしたのだろうか……愛の力が。
彼女は僕らに死の理不尽を押し付けた存在に最期まで抗う覚悟だ。
僕は珊瑚に頷く。
「君は出来る。君は独りじゃない。大和がいる……君の中に。」
僕は彼女の舞台を見守る。
どんな凄惨な光景からも目を逸らさないと心に決めた。*
─IF 瑠璃川珊瑚戦─
[想像していたよりも、瑠璃川珊瑚はずっと冷静だった。康生の言葉にも、取り乱す事無く頷く。もしかせずとも、彼女も気付いていたのだろう。心が弱いから吐いたのではない。強く、受け止める事が出来てしまったからこそ、嘔吐に至ったのだ。]
[乾いたものながらも、気丈に笑って見せた彼女に、康生は奥歯を噛み締めた。]
瑠璃川……、……ごめん。それと、わかった。
もう「逃げていい」なんて言わないし……俺も、逃げない。
[右手を胸に当て、康生はそう言った。強く彼女へと向けていた視線が、モニターへと移る。「逃げない」という言葉には、恐らく二つの意味があった。一つは、“彼女同様戦い抜き世界を守る”というものだ。世界を守る事に躊躇する子ではないから、今更言うまでも無くはあったが。]
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