10 冷たい校舎村9
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[わたし、きっとラクな方に逃げてる。]
(500) 2021/06/13(Sun) 23時頃
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[結局誰にも打ち明けられなかった疑念>>3:151は わたしの中だけでぐるぐる回るから、 同じ答えばかりを吐き出す。
もうちょっと、あとちょっと。 わたしの勘違いかも。間違ってたら傷つける。
いろんな言い訳を考えて、わたしは結論から逃げた。 弱くなったなぁと思う。 わたし、前の方がきっと強かった。 もっと割り切って、はっきり言えたかもしれない。
でもそんなわたしは幻想で、もうどこにもいない。 乃絵ちゃんが居心地の悪さを感じているなんて 知らないまま、わたしたちは作業に取り掛かる。]
(501) 2021/06/13(Sun) 23時頃
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架空惑星 レンは、メモを貼った。
2021/06/13(Sun) 23時頃
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[お互い可愛い>>466にピンとこなかったわたしたちの クレープ作りは、それはそれは愉快なものだった。
粉が飛び、生地が緩くなりすぎて粉を足し、飛び。 当初の予定から2倍程に膨れ上がった生地を焼くの、 ちょっと大変だったね。 成功率はまぁ……おなかに入れば一緒だよね!
わたしは乃絵ちゃん>>468と同じ結論に達した。
乃絵ちゃんの好きな苺はあったかな。 もし和菓子>>469の話を聞けたなら、 わたし「いいお母さんだね」って言ったと思う。
乃絵ちゃんからお姉さん以外の家族の話を聞くの、 初めてだったんじゃないかな。 だからわたし、素直にそう伝えた。]
(502) 2021/06/13(Sun) 23時頃
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[生クリーム限界チャレンジの結果がどうなったかって? 保健室に戻った時間で察して欲しい。 おかげで明日の朝>>458には、 ちゃんと綺麗な食堂に戻ってるはず。
わたしは洗い物、乃絵ちゃんには台周辺を頼んだっけ。 最後まで、袖を捲ったのはわたしだけだった。]
寒くない?
[わたしは片づけの途中、一度だけそう伝えた。 気をつけても捲らない袖はちょっと濡れちゃうでしょ。 昔、暑くない? って聞いたのと同じトーンだった。 乃絵ちゃんはどう答えたかな。]
(503) 2021/06/13(Sun) 23時頃
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[余ったクレープ生地は冷蔵庫の中。 出来栄えが出来栄えなので『食べてね』とは書けず、 わたしは少し悩んでから『黒沢・くれいし』って ラップの上に書き残すことにした。]
じこせきにん。
[うん。わたしは頷く。]
一蓮托生ね。
[わたしは乃絵ちゃんの方を振り向いて、笑った。 ちゃんと、笑えたと思う。]
(504) 2021/06/13(Sun) 23時頃
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[夜に慣れないわたしは、 保健室に帰ったらすぐに寝てしまうと思う。
ポケットにお守りと、お財布の中に10円玉と、 借りたダッフルコートと、お腹に入ったクレープと、 いくつかの約束と、二夜の秘密と、私の弱さと。 いつの間にか多くのもの抱えて、わたしは眠りにつく。
何もなければきっと、次のチャイムまで目覚めずに。]*
(505) 2021/06/13(Sun) 23時頃
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― それから ―
[鳩羽と出て戻ってきた後は 毛布にくるまって比較的穏やかに時間を過ごしていた。
休憩室の炭蔵は起きていたのか 起こしてしまったのならごめんって謝って おやすみ〜って声をかけたりしただろう。>>447>>457
普段寝付きがいいはずの俺は 浅い眠りと覚醒を繰り返しながら 朝日が昇るまで毛布にくるまっていた。]
(506) 2021/06/13(Sun) 23時半頃
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夜笑国 メイは、メモを貼った。
2021/06/13(Sun) 23時半頃
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[はた、と目が覚めれば 同じ部屋で寝た筈の二人の姿はそこになかった。
目を擦って、コートを羽織って、休憩室の外に出る。 しんと静まり返った校舎。
ふと思いついて、 廊下に無数に貼り巡らされている写真から、 一枚剥がしてポケットに入れる。 最後に皆で撮った打ち上げの時のものだ。
静かな校舎内をぺたぺた歩いて、階段を上って3Fへ。 そこでふと、妙に寒いなってことに気付いた。 いつの間にか窓が開いていて、 外から雪が舞い込んでいる。]
(507) 2021/06/13(Sun) 23時半頃
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[閉めようと窓に手をかけて、異変に気付く。 誰かが窓の外に立っている…いや、 浮いているのかなって最初は思ったんだけど。
気付けば一面雪景色みたいな 真っ白な空間の中に俺は立っていて。 すぐ近くに誰かの人影があった。
そこに居る筈なのに、よく顔は見えない。 くるくる姿形を変えるその影は 妙齢の女性のようにも、中年の男のようにも、 学生の女の子のようにも見えた。]
(508) 2021/06/13(Sun) 23時半頃
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『話しかけないで』
『どうしていい子に出来ないんだ』
『顔も見たくないよ』
(509) 2021/06/13(Sun) 23時半頃
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『―――大嫌い!!』
(510) 2021/06/13(Sun) 23時半頃
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[ぐるぐるとどこからか響く声に、足が竦むのが分かった。 上手く息が出来なくて、はくはくと浅い呼吸を繰り返す。
何だろう、これは。 何を見ているんだろう、俺は。
今すぐ踵を返して逃げ出してしまいそうになるのを 必死に堪えて顔を上げた。口を開いた。
ちっとも笑ってない顔で あやふやな誰かに向けて、震える声を絞り出す。
――――嗚呼、そうだったね。 これが俺の痛くて苦しい、ままならない『現実』。]
(511) 2021/06/13(Sun) 23時半頃
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[ごめんね。傷付けてごめんね。 上手く出来なくてごめんね。 自分のことで精いっぱいで、 他の人のことまで上手く 考えられなくてごめんね。
愛するのも愛を受け取るのも へたくそな俺でごめんね。]
(512) 2021/06/13(Sun) 23時半頃
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[………でも。]
(513) 2021/06/13(Sun) 23時半頃
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[世界の人間には二種類いて、 俺のことを好きな人とそうじゃない人。 雑にラベリングして、怖がって何もかも見ない振り。 でも、そんなに世界は単純じゃなくて。
居場所を作りたいと言ってくれた奴がいた。 俺で良かったと言ってくれた人がいた。 一緒に泣いて笑いたいと言ってくれる奴がいた。 嫌ったりしないと約束してくれた人がいた。
たくさん、たくさん、上に挙げた以外の人たちだって 自分だって悩み事だって辛いことだってあるはずなのに、 もっと前から今まで、色んな気持ちをくれていて、 俺はそれに気づかなかったね。ずっと。]
(514) 2021/06/13(Sun) 23時半頃
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[人影を見る。 ちっとも笑ってない顔で あやふやな誰かに向けて、震える声を絞り出した。]
(515) 2021/06/13(Sun) 23時半頃
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………でも、 でも。
俺は好き、だった。好きだったよ。ごめんね。 好かれたかった。
……………ごめんね。
(516) 2021/06/13(Sun) 23時半頃
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[馬鹿で怖がりで身勝手な俺だけど、 たったそれだけのこと、 言うくらいは許して貰えないかな。
こんな俺でもいいよって、 力になりたいって、話を聞きたいって、 言ってくれた奴らがいたんだ。
……だから、俺。ちゃんとやるよ。 今すぐには無理かもしれないけどさ。 ちゃんと誰かの痛みにも、向き合えるようになるよ。]
(517) 2021/06/13(Sun) 23時半頃
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[自分でも気づかないうちに いつの間にか泣いているみたいだった。 しゃくりあげながら人影に向けて、 手を伸ばせばがくんと上体が揺れた。
気付けば窓から身を乗り出すようにして立っている。 なるべく下を見ないようにして、そのまま。 一思いに地を蹴った。]
(518) 2021/06/14(Mon) 00時頃
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[朝の8時50分。 チャイムが鳴り響いた直ぐ後に。
――――――どしゃ。
どこからか鈍く、 大きな塊が落ちたような音がする。]
(519) 2021/06/14(Mon) 00時頃
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[きっと窓から外を覗きこんでも 何かを見つけることは出来ないけれど。
けれど、3Fの廊下のどこか、 何故か開け放たれた窓のすぐ近くに 手足の折れ曲がったマネキンが 雪を僅かに積もらせて倒れている。
顔の部分だけがまるで溶けたように ごっそりと抜け落ちていた。]
(520) 2021/06/14(Mon) 00時頃
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[世界の主さん。 きみの正体を、俺は少しだけ勘付いてもいるけど。 感謝も心配も何もかも、もう少し後にとっておく。
バイバイは言わない。 楽しかったよ、また後で**]
(521) 2021/06/14(Mon) 00時頃
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―― 夜の食堂 ――
[ きっと芽衣は気づいてる。 さすがに気づかれてないんじゃないかなんて、 そんな生クリームより甘い可能性がないことくらい、 私にだってわかってた。>>501
複数人から指摘された私の癖に、 芽衣が気づいてないわけがない。 袖を濡らしながら、それでも頑なに捲らない私に、 何も言わないことこそが、気づいてるってことだろう。 私の嘘に一番付き合わされたのは、 きっと芽衣なんじゃないかな。 それでも私、素知らぬ顔をするの ]
(522) 2021/06/14(Mon) 00時頃
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[ 牛乳を入れすぎたせいで粉を足したら、>>502 当然焼き上がる生地はその分増えるよね。 夜食にしては多すぎる量を食べて、 芽衣の空腹が満たされても、 食べきることはできなくて、明日に回される>>504 ]
うん。 責任を持って食べようね。
[ 食べ物を粗末にしてはいけません ]
(523) 2021/06/14(Mon) 00時頃
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[ 母の話をぽつぽつとした。>>502 苺大福を昔作ってくれたことや、 夜食を作ってくれることなんかを話した。
私の好きな食べ物も知らない母。 完璧な主婦であろうとする母。 しつけに厳しい母。 でも、本当は私、薄々気づいてた。 母もまた、父に支配されてるってこと。 父に求められて、完璧な妻、完璧な母、 完璧な主婦であろうとせざるを得ないこと ]
……うん。立派なお母さんなの。
[ いいお母さんだね。 芽衣の言葉を、私は否定しなかった。 小さく小さく頷いた ]
(524) 2021/06/14(Mon) 00時頃
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[ お料理初心者によるクレープ大会は、 深夜にまで及んだ。>>503 片づけるまでがお料理です。 白い粉で薄化粧された台は、きちんと綺麗にします ]
大丈夫。
[ 何気ない調子で、芽衣が寒くない?って聞く。 それが本当は、冷たくない?って意味だって、 もちろん私は気づいてる。 何気ない調子で芽衣が聞くから、 私も何気ない調子でさらっと答えた。 これくらい、なんでもない。ほんとだよ。 むしろ腕まくりをして芽衣に手首を見られたら。 そんな想像をした時の方が背筋が凍るの ]
(525) 2021/06/14(Mon) 00時頃
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[ 後片付けを何とか終えて、 保健室に帰ってきたら既に芽衣は眠そうだった。>>505 おやすみを言い合って、ベッドに入ったら、 きっと芽衣の方が先に眠ってしまう。 隣のベッドから寝息が聞こえるようになったら、 私、小さな声で呟いた ]
また明日ね、芽衣。
[ きっと、私にも芽衣にも明日が来るって、 何の根拠もないのに、私、なんとなくわかってたの* ]
(526) 2021/06/14(Mon) 00時頃
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