31 私を■したあなたたちへ
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「 それは …… 随分と優しい解釈ですね。 」
話下手な元生徒へのフォロー。>>1:276 それが蜜星教諭の本心からのものなら、 俺が思うよりずっと純粋な人なのかもしれない。
「 残念ながら、下手くそですよ。 …… 俺の言葉は、誰も喜ばせられない。 」
告白してきた女の子達は、一様に顔歪めて。 中には涙を零す者もいた。 煙崎るくあにしてもそうだ。>>1:67>>1:68 最後に贈ったのは、一度吐いたら戻すことができない 聞くに堪えないものだった。
(35) 2023/11/19(Sun) 02時頃
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コーヒーカップもとい、惑星パーティによる洗礼は、 蜜星教諭の経験値を大幅に上げてくれると信じている。
元生徒に対してすら、 丁寧にお辞儀をして去って行く姿。 段々と小さくなっていく背中に。
「 蜜星先生! 」
ふと、思い至ったように声を張ると。 片方の手を振りながら叫んだ。
「 別に頑張らなくていいんですよ。 ここは遊園地なんだから。 」
(36) 2023/11/19(Sun) 02時頃
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「 どうか、気負わず楽しんで! 」*
(37) 2023/11/19(Sun) 02時頃
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クソエイムお兄さんからのメッセージは 確認のみに留めた。>>1:274
そのうち、が来ても来なくても 互いに困ることはないだろう。
負けたのはお兄さんなんだから。 お兄さんの個人情報を貰うのが道理かと思ったが。
…… 勘違いしないでほしい。 俺が同性愛者だとしても、好みはある。 深く言葉を交わしたわけではないが、 あれは対極に位置するタイプだろう。>>1:65
(38) 2023/11/19(Sun) 02時頃
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日の色が傾けば、ホテルとやらに移動する。 客室内も、なかなかギャラクシーな 趣向が凝らされていたが。
流石に疲れていたのだろう。 堪能するのもそこそこに、 スプリングの利いたベッドに倒れ込み ずぶずぶとシーツの中に沈めば、泥のように眠る。 それこそ夢も見ないくらいぐっすりと。
…… せっかくなら煙崎さんの夢でも 見られれば良かったのに。
それをほんの少しだけ、残念に思う。**
(39) 2023/11/19(Sun) 02時頃
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朝はもとから得意ではない。
そして大学生は、長期休暇の最中だ。 高校時代から成長していない自分は、 サークル活動にも熱心ではない。>>0:37
したがって、早起きをする理由もなく。 そのままのそのそと、ベッドに戻ろうとして。
「 あ〜 …… 。 」
見覚えのない室内を、 生気のない瞳で見渡せば。 数回頭を揺らし、意識をゆっくり覚醒させて。 ようやく昨日から続く非日常を思い出す。
(81) 2023/11/19(Sun) 13時半頃
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「 そういえば、そうだった。 …… 流石に起きるか。 」
あと、5分したら。
(82) 2023/11/19(Sun) 13時半頃
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どうにか身支度をませ、朝食の席へ。 見知った顔があれば、会釈をして。 朝は食欲がないので、スムージーだけ注文した。
席につき、待ち時間にアポロを確認する。 お兄さんからの連絡はないようだ。>>51 なら「そのうち」ではないのだろう。 こちらも自由に過ごすことにした。
寝ぼけ眼のまま。 流れで、新着のメッセージまで目を通す。
(83) 2023/11/19(Sun) 14時頃
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「 …… 落とし物。 」
小さく呟いた瞬間。 給仕ロボットがスムージーを運んできた。>>56 すぐに意識はそちらに奪われる。
他のモナリザにはない派手なリボンが目を引いた。 ロボット界にもファッションリーダーが 存在するのだろうか?
至極、生産性のない思考を巡らせていたら。 ロボットのつるりとした機体から生えた突起物に 何か引っかかっているのに気付いた。
薄汚れた、灰色の …… 。
(84) 2023/11/19(Sun) 14時頃
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「 ゴミかな …… 。 ん? ゴミ? 」
あっ。
繋がる記憶に、小さく声を上げて。 咄嗟に手を伸ばすと、それを指先で摘み取った。
(85) 2023/11/19(Sun) 14時頃
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『 これ? 』
短い文章には、くすんだ色合いの ほつれた糸の写真が添付されている。
(*10) 2023/11/19(Sun) 14時頃
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アポロで撮影した写真を、 個別ではなく全体メッセージで送信する。 発見情報なら全員に伝わった方が良いだろう。
ふぁあと欠伸を殺し、スムージーを飲み干すと。 そのまま緩慢な動作で席を立った。*
(86) 2023/11/19(Sun) 14時頃
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/* >根っこがとても真面目な良い子 てれてれ
(-18) 2023/11/19(Sun) 15時頃
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こんにちは。真面目な良い子です。
ホテルの廊下を歩いている最中。 二文字で終わらせた自分が申し訳ないほど、 熱量のこもった返信が届いた。 文章の向こうから伝わる圧。
よほど思い入れがあるのだろう。 自身の人生に欠けている存在を見出し、 意識の中に、若干の羨望を感じながら。
(134) 2023/11/19(Sun) 16時頃
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『 リボンの似合うモナリザが、 大事に預かっていてくれていたよ。 礼なら彼女(?)にどうぞ。
了解。 なら、フロントに預けておこう。 』
(*17) 2023/11/19(Sun) 16時頃
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今度は個別に返信を送る。
面識のない相手。 それが女性であれば、どうしても警戒心が勝る。
一目惚れされるのは避けたい。 いらぬ心配とは知らぬまま。>>1:54
落とし物は随分年季が入っているようだ。 壊さぬように意識しながら、 フロントへと運んでいる途中。
自己紹介写真と若干印象が異なるが、 十分に華やかな女性が、ぱたぱたと廊下を叩きながら 前方から駆けて来るのが見えた。*>>119
(135) 2023/11/19(Sun) 16時頃
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「 うっっわっっっ。 」
こちらを視認した途端。 ぎゅいん、加速度を増した姿は、 アクセルを踏み込んだような錯覚を抱く。 煌びやかな影は、予測より数秒早く 懐まで飛び込んできて。 …… そのまま通り過ぎ、やがて戻ってきた。
怒涛の一連に、 寝ぼけていた意識が完全に覚醒する。 この様子だと、送ったメッセージは読めていないだろう。
(141) 2023/11/19(Sun) 16時半頃
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「 はい、これ。 大切なものなんだろう。
無くさずにすんでよかった。 」
煌びやかなラメが縁取る眼差しは、 一心に、落とし物へと注がれて。 こちらの顔面事情など眼中になさそうだ。 それに幾分か安心した心持ちで。
彼女の呼吸が落ち着いた頃を見計らい。 爪の先まで整えられた手の平へ、目的の物を手渡す。
坂里だと認識しているのは。 アポロには顔写真を掲示している者が多いため、 消去法だと判断している。*
(142) 2023/11/19(Sun) 16時半頃
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宝物を取り戻し。 周囲に目を向ける余裕も取り戻したのか。 ようやく向けられた表情からは、 どこか歪な印象を受ける。
メイクの乱れに気付いたわけではない。>>119 あいにく、顔を飾るための知識は持ちえず、 そういうものなのだろうと安易に受け入れる側だ。
ならば原因は、浮かんだ表情の方。
「 不本意? 」
首を軽く傾げる。 自分の運んだ物が、誰の何かを知れば、 透かした表情を貫くのは難しかっただろうが。>>144
(161) 2023/11/19(Sun) 18時頃
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実際に取られた手段は、別の言葉。>>145
「 君が煙崎さんを? そうだな。 とりあえず、殺した理由を聞くかな。 殺意に結び付く感情の苗床を教えてほしい。
ちょうど彼女のことを。 知りたいと思っていたところなんだ。 」
…… 裏を返せば。>>1:88 告発も、断罪も。 下すのは己の役目ではない表明、暗に示した後。
(163) 2023/11/19(Sun) 18時頃
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「 ところで。 俺のことは殺さなくていいの?黒須さん。 」
(164) 2023/11/19(Sun) 18時頃
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根拠はなかった。 蜜星教諭の時と同様。 話下手の悪癖が出たに過ぎない。>>1:242
己の奥底に残る罪悪感と。>>35 彼女の言った「不本意」を、 たいそう意地が悪く解釈して。
最後に、いつしか煙崎るくあが、 『大切な存在だ』と言っていた名前。>>0:174
来ていないわけがないと、思考の末に添えたなら。 まるで化粧の裏の素顔を見通すように 柔らかく微笑んで見せた。**
(165) 2023/11/19(Sun) 18時頃
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手を振るその人のことを、俺は知らない。 仮に、彼が何をしたかを知っていても。>>105 こちらのスタンスに変わりはないだろう。>>163
相手が目上だという理由で。 ぺこり。素直に顔を下げて見送るだけ。
縁もゆかりも因縁もない相手。 ただ、恐ろしいほど整った人だとは思った。
(168) 2023/11/19(Sun) 18時半頃
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自分の顔は、あくまで異性受けが良いに留まる。 告白されるということは、 同じ生き物だと認識されていること。
だが先程の彼の美しすぎる、老若男女を魅了する相貌は、 時に畏怖すら感じさせるだろう。 己の容貌ですら、嫌気がさすというのに。
そんな「天賦」を授けられて。 果たしてまっとうに生きていられるんだろうか?
(169) 2023/11/19(Sun) 18時半頃
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「 …… お気の毒に。 」
向けた言葉はただ一言。
去り行く背を見送ることはせず。 そのまま、ふっと睫毛を伏せた。**
(170) 2023/11/19(Sun) 18時半頃
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つくづく思い知る。 俺の話は、女性を喜ばせることに向いていない。 目の前で、狂ったような怨嗟が響く。
…… 正直なところ、めちゃくちゃ怖かった。 でも声帯を抜けて響く声は、不思議と凪いでいた。
それは、施された煌びやかなアイメイクが、 彼女が慟哭する度に、角度を変えて輝くのが。
狂気ではなく。 別の色で濡れているように見えたからかもしれない。
(205) 2023/11/19(Sun) 22時頃
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ボクのことを知っている。>>196
残念ながら、こちらの手札は、 相手の苗字と対象を称する一文しかない。 頷くには烏滸がましいくらい、僅かな量。
ただ、負け犬と。 続く自嘲を否定するに十分な程度でもある。
つまらない。 剥き出しの敵意と共に吐き捨てられれば 思わず驚いて、視線を向けてしまった。
(206) 2023/11/19(Sun) 22時頃
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更にくすりと、吹き出してしまえば、 相手の苛立ちを増長させただろうか。
「 うん。本当にそうなんだよ。 どうも過分な評価をされがちなんだけど。
俺はつまらない話しかできないんだ。 」
嘲るつもりはなかった。むしろその逆で。 向けられたそれが、 あまりにも正しい評価だったから。>>1:241 咄嗟に喜色を含んでしまった。
そんな調子だから、きっとこの先も。 俺は彼女を怒らせることしかできないだろう。 それを承知で、言葉を続ける。
(207) 2023/11/19(Sun) 22時頃
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「 そうだね。君の言う通り。 俺は薄情な彼氏だから。
彼女の死に嘆き悲しむことも。 犯人を憎むこともしなかったよ。 」
煙崎るくあの死、以来。 初めて他者に託す本音は、
(208) 2023/11/19(Sun) 22時頃
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淡々と響く声が、彼女の鼓膜を どんな音で揺らしたかはわからないが。
「 君は、俺ができないことをしてくれた。 」
その言葉は、紛れもない称賛だった。
…… うらやましいと。 羨望を帯びた瞳が揺れる。 そのまま、黒須の姿を真っすぐに映すと。
(209) 2023/11/19(Sun) 22時頃
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