3 ディアス家の人々
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[アリステア・スペンサーと名乗るこの従者は、素性わからぬ男であった。 無論、紹介状にはこれまでの経歴が詳細に記されている。 しかし、これまで仕えてきた家はどれも遠方にあるか途絶えた家であり、直接男の過去を知る者はほとんど存在していない。
経歴を検証しようもない男であったが、ディアス家の者はそれを全く気にする様子はなく、雇用も実に速やかに決定された。 直接男を使うウィリアムもまた、男が家に現れた当初は同じだっただろう。*]
(-0) 2021/01/07(Thu) 12時半頃
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― 戦地(回想) ―
[それは深い森の中だった。 しんと冷えた夜気が降り積み、厚く重なる木々の葉が星空を閉ざす。そんな夜だった。 夜の鳥たちが鳴き交わし、遠くで狼が長く吠える。 思いのほか賑やかな夜の懐で、人間たちが夜を過ごしていた。 作戦行動中の小隊が、短い休息を取っていたのだ。
森を抜ければ目標地点だ。 何事もなければ夜明け前に彼らは出発し、銃火の中に身を投じていただろう。 だが、その機会は永遠に訪れなかった。]
(-1) 2021/01/07(Thu) 14時半頃
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[先触れは沈黙だった。 鳥たちが嘴を閉ざし、獣たちが動きを止めた。 風さえも止んだ異様さに、見張りの兵が銃を構える。 その体が唐突に二つに裂けた。
人の目には黒い風としか見えぬなにかが野営地に飛び込み、そこにいた人間を刈りとっていく。 寝ている者も起きている者も、等しく不可避の爪牙に掛かった。 人間が、反撃などできようはずもない。 逃げることさえ不可能だろう。 悲鳴と怒号が一つずつ途切れていった末、最後の一人に爪が伸びたその時、夜を闇が塗りつぶした。]
(-2) 2021/01/07(Thu) 14時半頃
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巻き込んでしまったね。 すまない。
[闇は玲瓏な声で喋った。 人の形をした月の雫のように青白く美しい肢体を、闇そのものを織ったような衣で包んだ麗人であった。
だが、闇の袖に包まれ守られた人間が、それを認識したかはわからない。 魔性の爪が空気を裂いた衝撃波を受けたか、魔の瘴気に当てられたか。 彼の両目はその時既に、固く閉ざされていた。]
(-3) 2021/01/07(Thu) 14時半頃
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私はあれを追わねばならない。 だからおまえの側にいてやることはできないけれども、
[吐息。甘く落ちるそれは彼の目蓋に降る。]
心配いらない。 必ず助けは来るよ。
[小隊を壊滅させた気配は既に遠い。 人間を喰らって力を増し、夜の奥に消えたのだ。 追わねばならない。 だが、この稀なる縁を繋ぐ時間くらいはあるだろう。*]
(-4) 2021/01/07(Thu) 14時半頃
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― 戦地(回想) ―
[ 割り当てられた見張りの時間を終えて、毛布を引き上げて寝る態勢に入った矢先だった。 同僚の叫びがあがり、途切れ、重いものが倒れ込む音がした。
疲れてはいたが、若い身体は反射的に覚醒して転がり、木の幹で遮蔽をとる。
ひと呼吸のうちに、闇の中で声が弾けては、消えた。 生臭い匂い。
ひやりと冷たいものが背筋を伝う。]
(-5) 2021/01/07(Thu) 21時頃
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[ 動かずやり過ごせと戒める理性と、仲間を案じる焦燥と。 まだ生きている故の反応が漏れていたのか、未確認の襲撃者の影が迫る。]
──ッ
[ 薙ぎ払われた、と感じた。 肉体的接触があったわけではなかったが、当てられた。]
(-6) 2021/01/07(Thu) 21時頃
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[ 自分の身体が自分のものではないように鈍麻して傾ぐ。 けれど、大地に叩きつけられることはなかった。
何か滑らかで場違いな存在に包み込まれる。
注がれた言葉は、母国語としてではなく、意識に直に届くかのようだった。
謝罪──使命──慰撫──約束
混乱する。 状況のすべてが、不可解だ。 けれど、]
(-7) 2021/01/07(Thu) 21時頃
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…っ! 連れて行ってくれ。
[ 救援を待てと示唆する声を良しとせず、敵か味方かもわからぬ相手を掴む。
仲間の仇をこのまま放置して安閑と引き下がれるか。 彼我の力量の差は関係ない。
それはウィリアムを律する貴族の規範が言わせた願いだった。*]
(-8) 2021/01/07(Thu) 21時頃
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[魔に遭った人間が示す反応は、恐怖か混乱の二つに大別される。 だが、腕の中に囲ったこの人間は違った。 連れていけと求める言葉は、置き去りにされる恐怖ではなく、為すべきことを前にした使命感に根ざしている。
愛しいこと。唇だけでそう紡ぐ。 稀なる出会いはやはり、縁によって導かれたもの。 彼と出会うためにきっと、自分はここへ来たのだ。]
おまえを連れては行けないよ。 あれは人の手に余るもの。 そして、私が狩るべきものだからね。
けれど、おまえが私に力を貸すというのなら、受けよう。 おまえの命を、ほんの少し、私に分けてくれるかい?
[滑らかな声は、微かな喜色に濡れる。 糧は甘露だ。自ら差し出させたものならば、なおのこと。*]
(-9) 2021/01/07(Thu) 22時頃
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[ 交わされる言葉は、戦いを語りながら、どこか戦場らしからぬものだった。 たおやかな物言いで、非日常的な提案がなされる。]
命を?
[ それは分けられるものなのか。]
(-10) 2021/01/07(Thu) 22時半頃
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[ 頼られて、こんな取引をもちかけるのは、善からぬ者だと警鐘が鳴る。]
── 護りたまえ。
[ 是とも非とも答えずに、自ら立たんとした。*]
(-11) 2021/01/07(Thu) 22時半頃
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[彼の声に警戒の色が混ざる。 それも無理からぬこと。 今まで生きてきた世界からかけ離れた場所に、彼は踏み込んでしまったのだ。
それでもなおあからさまな拒絶はせず、ただ意思だけを見せる。 その振る舞いに、胸が震えた。]
(-12) 2021/01/07(Thu) 23時半頃
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[このまま攫ってしまいたい。 あるいはこの場で押し倒しても。
だが惜しいかな。時間が無い。]
貴きひとよ。名を聞いても? 私は、 という者だよ。
[確かにその時名乗った。 だが、彼は覚えていないだろう。 なぜならば、そのあと彼を闇で覆ってしまったからだ。]
(-13) 2021/01/07(Thu) 23時半頃
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おまえに印を残そう。 私がおまえを辿れるように。 この縁が途切れないように。
[囁きと共に彼を抱きすくめ、首筋に唇を落とす。 ふたつの皓牙を肌に埋め、溢れる熱を啜る。 ほんの、少しだけ。]
(-14) 2021/01/07(Thu) 23時半頃
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さあ、おやすみ。 今夜起きたことは忘れて。
目覚める頃には、おまえの仲間がここを通るよ。 だから安心して、おやすみ。
[牙の痕を拭い、指先で撫でれば血は止まる。 包み込む闇は、彼を深い眠りへと誘うだろう。 彼岸に待っているのは忘却の園。 次に会う時はまた、初めましてから始めよう。*]
(-15) 2021/01/07(Thu) 23時半頃
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[ 胡乱な相手ではあったが、名乗られて返さぬという無礼はあり得ない。]
ウィリアム ──… ディアス兵曹、だ。
[ つい、ファーストネームを口にしてから、訂正するように階級を名乗っておく。 この若さで下士官ということが、貴族の血筋の証明に他ならないことは気にしなかった。]
(-16) 2021/01/08(Fri) 00時頃
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[ 玲瓏たる、だが意味を把握しかねる囁きが続いて、 引き上げられるかに思われた身体は抱き竦められた。]
── くっ、
[ 痛みではなく、存在感に圧倒されて声が漏れた。 指先がとらえどころのない輪郭を伝い、
後は沈黙。**]
(-17) 2021/01/08(Fri) 00時頃
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― 回想 ―
[戦地での仕事を片付けたあと、彼の素性を追った。 ウィリアム・ディアス兵曹。 名と階級、それと少しの推察力があれば特定は容易い。
前触れもなく訪れて、彼を攫っていくこともできた。 けれども少し、そう、遊び心を覚えたのだ。]
軍より紹介を受けました。 アリステア・スペンサーと申します。
[人間の体を纏い、名と身分を用意し、各所に手を回して彼の前に従者として姿を表した。 彼に仕えながら、その心を絡め取るのも一興だろう。 彼の、気高い魂に、もっと触れたい。]
(-18) 2021/01/08(Fri) 11時半頃
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[とはいえ、もともと乏しい忍耐は長くは続かなかった。 側近くに仕え、介助のために彼に触れるたび、欲が募る。 忠実で規律ある従者として振る舞うのも、限度がある。
だから、それは、*その夜の出来事だった*]
(-19) 2021/01/08(Fri) 11時半頃
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― 回想 ―
[ 気がついた時は野戦病院だった。 後続の友軍に救助されたと聞いたが、どうやら不可解な状況であったらしく、対応は歯切れが悪かった。
目が見えないことについて、軍医は「強い閃光を直視しなかったか」とか「頭をぶつけなかったか」などと問診をしたが、ウィリアム自身、あの晩のことは曖昧糢糊として思い出せないでいる。 時間が跳んだように現実感がない。
最終的に、「眼球は傷ついていないが、失明は強いショックのせいかもしれない」という不確かな診断を受けただけだ。 小隊の仲間は全滅したと教えられたのは、もっと後のことだったけれど。
治療の手立てもないまま、とうてい前線には戻れぬ状況が続き、最終的に除隊を命じられた。 負傷原因が不明ながら勲章がついてきたのは家柄のせいだろう。]
(-20) 2021/01/08(Fri) 19時半頃
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[ 恩賞を軍に還付したのも、貴族としての自然な流れだったが、 その返礼のように、軍が従者という形で看護人を紹介してくれたのは、珍しいことだと思う。
若くて壮健な男なら、兵士に欲しいはずだ。 それがどうして回ってくる?
そんな推理から、アステリア・スペンサーに対しては、何か問題を抱えた人物なのだろうという先入観があった。 貴族の嗜みとして、表には出さないようにしたけれど、警戒はしていたのだ。*]
(-21) 2021/01/08(Fri) 19時半頃
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