― 安置室 ―
[ヨーランダはボーっとナユタの隣に新たに置かれた空の棺を眺めていた]
[いつケトゥートゥがこの部屋を出たのか覚えていない。きっと泣き疲れて寝てしまったのだろう。
顔に冷気を感じて目を開けると、やたらと独り言が大きい船員が毛布をめくってヨーランダの顔を覗き込んでいた。そうして一言
「お前死んだんだって?」]
[なんでも、『ヨーランダ』の処遇について会議が行われた結果 クルーであるヨーランダは業務中に急死、遺体の回収は不可能であるため空のカプセルという形で帰還させる ということになったらしい。
だからナユタの隣にヨーランダのカプセルが運ばれた(と、やたらとでかい声で独り言を言っていたのを聞いた)]
[あの日会った本物のヨーランダのことを思い出す。自分とは似ても似つかない、草臥れていたけど整った顔立ちの男だった。彼は死んだのだろう、遺されたヨーランダという概念もここに葬られた。今ここで、二人のヨーランダは死を迎えた]
(-437) tanuki 2021/11/19(Fri) 09時半頃