―― GW/桜森高校グラウンド ――
[あの日と同じ場所、同じ構図で撮ったのに、写真は随分と違う出来栄えになっていただろう。
二人と別れると、いつかの足跡をなぞるようにしてグラウンドを横切り、椿の低木の前まで来た。五月に入れば花は見当たらず、つるりと滑らかな濃緑が繁るだけ。そっと葉を撫ぜながら瞑目し、溜息をつく。
仄かに芽生えた恋心も、椿の花の盛りも、終わってしまった。もしも、二人の関係が続く未来があれば、タトゥーのモチーフは桜でなく椿だったかも知れない。永遠に枯れず、咲かせ続けるために。]
あ、そうだ。
[思い出したように宙返りしてみる。制服のスカートが翻り大変なことになったが、誰も見ていないのできっとセーフ。カメラがないことの方に違和感を感じてしまう。着地の際に空気を孕んで膨れたスカートの裾を、手早く整えた。]
(282) りしあ 2023/05/04(Thu) 18時半頃