……こいつは、大分形違うけどさ。
ヤマアラシって本来、針飛ばして来る生き物じゃない。
針の付いた背中向けて、後ろ向きに突進して来るんだ。
だからこいつも、トゲ無くなりそうになったら、逃げるのやめて突っ込んで来るかも。
[棘を打ち尽くさせると聞いて、康生は漸くアドバイスらしいアドバイスをした。壊れた家屋は、視界に入りそうになる度に目を伏せた。見たくも考えたくも無いのだろう。胸元へ手が当てられる。康生は、破壊される家屋や犠牲になった人々に胸を痛めている。けれど、汗だく──と言うよりは血塗れで懸命に操縦する彼に、これ以上の負担を強いる事も出来ないから口を噤む事を選んだのだろう。]
[もしかしたらもう、街の被害に心を痛める様なパイロットは他に居ないのかも知れなかった。全く痛めないとまでは行かずとも、皆もう高校生だ。街を壊さずに勝つ事は出来ないと、割り切れているのだろう。康生は恐らく、そうではなかった。*]
(270) 2023/08/18(Fri) 10時半頃