「何を笑ってるんだ。そんな目で見るな。」
勝者の余裕に浸るでもなく、突然に逆恨みをぶつけられても、彼は反発して来ないどころか嬉しそうに認めるのだ。ただ憎いだけだった相手が、分からなくなる。いっそ憐れまれた方がまだ良かった。何故、自分が焦がれてやまない立ち位置を奪った相手に、羨望の眼差しを向けられねばならないのか。
感謝のことば(>>210)に、思考はますます混迷を極め、相手が喋っているのが日本語でないような錯覚を覚える。到底受け入れられず、ショッキングピンクに輝く髪を駄々っ子のように振って、腹の底から低く唸った。
「それでも、るくあはボクでなくキミを選んだ。
話がつまらなかろうが、薄情だろうが、
ボクよりキミの方が良かったんだ!」
所詮世の中顔なのか、と口走りかけて、ふいに脳内にるくあの声が響く。滔々と澱み無く流れる台詞に愛情は感じられない、そう彼の告解(>>208)と同じ温度で。
『あなたは、何も知らない。』(>>0:175)
死刑宣告に等しい、関係を断ち切り拒絶する彼女に、絶望の淵に叩き落された。
(235) 2023/11/19(Sun) 23時半頃