─乾恵一の部屋─
[乾恵一は、康生に救いを求めた。そして期待通りの救いが得られない事を怖れ、壊そうとしている。康生は私の息子だから、当然壊して欲しい等と思う筈も無い。]
[だが仮に、私が全く関係の無い赤の他人であったなら。乾恵一はもっと早くに柊木康生を壊すか、若しくは離れておくべきだったと言っただろう。彼はどうしようもなく生を望んでいて、自分を生へと引き上げてくれる相手を求めていた。けれど柊木康生は、他者を生へと引き上げる事は出来ないのだ。天地がひっくり返ろうと、「一緒に生きて」なんて言う筈が無い。]
……そうだよ、ケイ。俺、持ってない。
持ってないから、言えねーんだ。
[康生の心臓は、四年も前に止まっているのだから。]
[椅子が康生の生を証明した所で、コックピットに在る以上、早晩消えるのは確定している。死の床の形をした椅子に座る康生は、誰より早く運命を理解し受容した。抗う事無く諦めた──否。潰えたら其処までだと、運命を突き付けられる前から受け入れていた。]
(219) 2023/11/13(Mon) 19時半頃