─乾恵一の部屋─
[彼に真正面から向き合う康生は、自身がナイフを向けている事に気付けないまま言葉を重ねた。]
それがガキなら、ガキでいいんだよ。
俺だって全然親離れできてねーし、一生できねーもん。
全然、ダメなことなんかじゃないんだ。
[七尾千映に言ったのと同じ内容だ。康生の中には私が居り、命を共有しているのだから、文字通り“一生”親離れなんて不可能だ。親離れや兄離れ出来ない相手を否定する事なんて、出来る訳がなかった。]
……違うだろ。
カガセンのこと、嫌いなんかじゃないだろ。ケイ……。
頼りにしてただろ、俺が熱出した時も。
[加賀先生が合宿所へと戻って来た時、真っ先に立ち上がり玄関に駆けて行ったのは彼だ。その姿を思い出したのだろう康生はそう訴えたが、彼がそれに答える事はなかった。]
[肌を暴かれる>>194。確かに普段の康生なら、もっとあっけらかんとしていただろう。だが、度重なる暴力と向けられた害意により、康生は少しずつだが確実に弱っていた。康生は無敵でも超人でもない。幾ら回復が早くとも、繰り返し殴られれば罅は広がり、いつか壊れる。既に、拡がる不安を取り繕えない段階まで来ているのだろう。]
(203) 2023/11/13(Mon) 14時頃