─乾恵一の自室にて─
ケイは、きっと俺より俺のことわかってるよ。
ケイが言ってほしい言葉、なんで俺が言えないのかもさ。
……わかってるから、壊れちまったのかもな。
[康生は、彼の救いにはなれない。「彼のしてほしいことをしたい」という子供の情緒と、「できないことはできない」という大人の判断力を持ち合わせているから。つまり、康生自身が壊れてバランスを崩しでもしない限り「できることしかできない」ままなのだ。]
俺は、思ってることしか言ってないよ。
……聞きたくないことしか言えねーんだろうな、もう。
[諦めた様に、康生は呟いた。何がどう逆鱗に触れたかは解らずとも、彼の苛立ちの原因が自分の言葉の中に有るのは理解したのだろう。こうして諦めが早いのも、康生の説明が下手な理由の一つかも知れなかった。説明しても解ってもらえない事が多過ぎたのが原因だとも言えるので、鶏と卵だが。]
(185) 2023/11/13(Mon) 03時半頃