「しっ……失礼ですが、
キラ様ことキランディ様
ご本人であらせられ、られますかっ!?」
カメラが回ってなくて良かった。緊張して何を口走っているのか、自分でも分からない。
ファンです? サインください? 握手してください? upしないので、写真撮ってもいいですか?
脳内でぐるぐる次の台詞を探したけれど、明らかにプライベートな恰好の芸能人を前に、どれも不躾に過ぎる。長い袖に隠れた手汗まみれの指を握って、開いて。
るくあが足繁く舞台に通い、出待ちするほど入れ込んでいるのを知ってはいたが、自身は生のキランディは一度も目にしたことはない。販促グッズにプリントされた眩いばかりのご尊顔を恍惚と、或いは相当の熱量でもって眺めるるくあを、端から見守っていただけだ。
「ボク、ボクは、キラ様に憧れて、
高校になってからメイク始めたんです。
ああ、……ああー!
尊すぎて言葉が出ない……。
るくあはほんっとに、
キラ様の大大大大ファンだったから、
貴方が来てくれたなんて、
生きてたらきっとすごく喜――っ。」
(158) 2023/11/16(Thu) 11時半頃