─乾恵一の家 応接間─
[下卑た嗤い声を立てながら、悪魔が戻って来る。小脇に抱えられた工具箱>>128を見て、康生のリクエストが最悪の形で聞き入れられてしまった事を悟った。]
寂しくはねーけど、ケイは俺のこと…………や。
聞くまでもねぇから、いいや。
[何処か諦めた様な言葉を零しつつ、康生は彼の思い出話に耳を傾ける。そして“いつも通り”に……ならなかった。
いや、康生は“いつも通り”に振舞おうとした筈だ。それが、途中で崩れた。]
そっか……よかった。
匡先輩との思い出は、ちゃんとケイの中に残ってんだな。
俺との思い出は歪んで、言ったこと忘れちまっても>>103
友達と思えなくなっても>>124、一番大事で綺麗なもんは
ケイの中に、しっかりそのまま残ってる。
それって……っ、いいこと…の、はずだよな……?
[懐かしげに語る彼へと向けていた微笑みが、歪む。目頭が熱くなり、声が震えて詰まる。 ──康生は泣いていた。
顔を殴られるよりも脚を砕かれるよりも、辛かったのだろう。彼にとって、自分の存在がその程度だと知った事が。]
(139) 2023/11/12(Sun) 19時頃