─ 三日目・朝 安置室前 ─
[コポコポと、何処か懐かしさを感じる音。>>98
この音が、アリババの生きている証の音なのだなと、後ろ頭を撫でる手にぼんやりと考える。
どうかこの音が絶えることがありませんように。この扉の向こうへ、夜の旅へ、行ってしまいませんように。
意識が生者に向き出せば、涙もずいぶん収まってくる。
移動を提案されるなら、ついていくだろう。足元が不安なので、服の裾を掴ませてもらったりはするかもしれない。
抱き上げられての移動は、むしろそっちを見られたほうが気恥ずかしい気がする。ケトゥートゥは小柄ではあるけれど、ジルやハロほど小さくはないし。]
……ジル……?
[ふとした拍子に、そのジルがこちらを窺っている>>102のに気がついて、手を伸ばす。おいで、をするように。
ケトゥートゥはジルのオレンジの灯りを見ているより、ジルを直接抱き締めるほうが好きだった。ランタンの灯は不思議で、綺麗で、落ち着くと言われると確かにそうなのだけれど。
落ち込むときは大抵、誰かが喪われてしまったときで。そういうときは、他のいのちを感じたくなるのだ。**]
(118) 2021/11/12(Fri) 11時頃