[だから、話してほしかった。そうすることなく黙っていってしまったことを、ケトゥートゥは優しさだとは思えなかった。
許すか許さないかでいえば、許してはいるのだけれど、それでも少しくらいの文句は言ったっていいと思う。直接文句を言えるのはまだまだ先になるだろうから。
ケトゥートゥはまだまだ、夜の旅に向かうつもりはないから。]
……優しいのは、アリババの方だって、ケトゥートゥは思うヨ。
ライジがしたかったこと、いっぱいいっぱい、大事にしようとしてル。
[嘘の報告をするなんて、これまで一緒に過ごしてきた彼の様子からは、到底考え難いことのひとつだ。
それだけ、最後にライジが望んだことを、叶えてやりたいと思ったのだと思う。
普段とは違う弔いのしかた。他の死と同じには出来ない、したくないと願う気持ち。
それが特別なほど、きっと、苦しいきもちも強いのだろうなと、無言の裡に、自分の胸の底をなぞる。]
(113) sleepingxalice 2021/11/19(Fri) 01時頃