─ 安置室 ─
[そうして、アシモフが眠る方へと歩み寄って行く。キランディが親しんで来た死生観だと、死した魂は風になる。自らの翼で、空を往くのだ。だからいつだって其処に在るし、見えないだけで悲しむ必要は無い。 ……けれど、アシモフを始め、此処には翼の無い者達が多すぎる。]
……そうね。
アシモフちゃんくらいなら、何とかなるかも知れないわね。
[常よりかは幾分抑揚の少ない口調でそう呟くと、キランディは背中に手を回し、己の羽根を二枚抜いた。何分、翼自体が大きい。抜いた羽根も、それぞれアシモフの体長の倍はあるだろう。そのまま、花の傍へと供えた。]
アタシの羽根をあげるわ。
だから、自由に飛んで頂戴ね。
[風は気紛れだ。傍に居る時もあれば居ない時もある。それでいい。自分達の傍に居るかどうかはアシモフが決める事だ。]
(106) 2021/11/10(Wed) 14時頃