「あ゛あ゛ぁぁぁっつい!! んだけど!!」
だらだらとウィッグと額の合間から汗が絶え間なく噴き出てくる。ファンデーションもがっつりUVカット効果の高いものを選んできたが、SPF30代では焼け石に水だ。アイラインまで溶けだしてないか何度も確認して、ぶら下がった環状惑星型のピアスをピンと弾いた。
冷暖房の行き届いた室内での撮影ならいざ知らず、そもそも今日の服装は晩夏の炎天下では自殺行為だろう。肌色面積で安易に視聴数を稼ぐのは信条に反すると、スパンコールの星々が賑やかに光るハイネックシャツは、喉から襟元までピッチリ隠している。萌袖丈のアウターは鮮やかなベリーピンクのグラデーションにラインストーンのストライプ。ホットパンツからにゅっと伸びた素足は、膝下からデコラティブな厚底ブーツに覆われて、多分めっちゃ蒸れている。
――熱暴走しそうなほど、暑い。
時折潮風が通り抜けていくのがまだ救いだったが、それだってお肌にはあまりよろしくはない。
(73) 2023/11/15(Wed) 21時半頃