― 四日目:船内 ―
[コポンコポンと、気泡がひとつ、ふたつ。
それが自分の生きる音、心音も体温も無い生命体の、いのちの音。
透明な入れ物の中で揺れていた身体を持ち上げると、居場所を普段の物へ移し替える。
『袋』に入り、ボディバランスのチェック。何処かおかしい所は無いか入念に確認し最後に帽子をかぶると、顔の無い男は部屋を出る。
久しぶりに現場に居合わせて意識がぐらぐらしていたが、偶然とはいえ自分があの機体で外に居てよかった。あのまま放置して居れば、もっと被害が出ただろうから。
自分が居ただけで、ライジとキランディ、二人の命が救えた。
そのなかで、取りこぼしてしまった一つの命。
見送る際、気を付けての言葉にもっと念を押しておけば。>>3:83
自分のせいだとキランディは言っていた。>>10
違う、彼女のせいでは無い。もっと前、自分が何か別なアクションを起こして居れば未然に防げた事故だったのかも知れない。もっと別の何かが、何かがあれば。
キリのないIFを重ねている事に気付き、かぶりを振った。
きっと誰のせいでも無いんだ。]
(71) 2021/11/13(Sat) 23時頃