― 三日目・朝 安置室 ―
[そうっと、静かに中へ入る。
ハロとヨーランダが話しているところに、ちょっと顔を向けて。ああ、ハロはヨーランダと話をしに来たのかも、と思いながら、目線で挨拶して。
いつもどおり、造花は持たず。ギロチンの眠るところまで、歩いていく。
確かにそこに、ギロチンの身体が横たわっていた。
膨らんだり跳ねたりしないギロチンも、記憶の中より、随分小さく見える。
恐る恐る手を伸ばして、カプセルをそっと開けて、昨日、手櫛で梳いて整えてやった毛に触れる。後でまたそうしようと思っていたとおりに、撫でる。
さら、と流れる毛並みの奥に、昼間は熱を感じた。命を感じた。
今は、感じない。]
……ッ、……!!
[そう思った瞬間、ぶわっと、今までどこか足元の方で澱んで、滞っていたものたちが、一気に全身を駆けあがって、頭のてっぺんまでやってくる。
ああ。ああ。ああ。ギロチンは、ほんとうに、もう。
いつものように手を合わせるのも忘れて、いつも静かにしようと努めているのも投げやって、身を翻して、駆け出して、安置室から飛び出した。]
(71) 2021/11/12(Fri) 00時頃