― 前日夜・安置室 ―
[夜もかなり更けた頃になって、男は安置室を訪れた。ヨーランダはまだ起きていただろうか。
アシモフの隣の台座に横たわる毛玉は、なんだか一回り小さくなったような気がした。]
……大丈夫っつってたじゃねえか、おまえ。
[近くに寄ると、視線はやはり正面から亡骸を捉えることはできない。毛の先とかカプセルの隙間とか、その辺りをうろうろ彷徨い、そして近くにある造花の台>>3:12に目を留めた。]
おまえの星じゃ、"女王"様しか弔われないんだっけか。
けど……まあ、別にこれくらいいいよな。
[造花の山に手を伸ばす。よく口にしていた合成血液のような、真っ赤なひとつを選び取り、アシモフの台に置かれた花>>2:93>>2:95に倣ってそっと置いた。
ギロチンは不死の"女王"から分かれたものだと、以前聞いた。それは死んだら"女王"の一部に戻るということなんだろうか。そこまでは聞いていなかったが。
けれどここは『スペランツァ』だ。ここにいる皆は、それぞれのやり方でギロチンを弔ってくれるだろう。]
(63) 2021/11/11(Thu) 23時半頃