[目が覚めた後は看護師たちが色々と動いてくれました。
酸素マスクや点滴はともかく尿道カテーテルはより自分が長い間寝ていたのだと自覚させられましたが、目が覚めて二番目に嫌なことがそれでしたから早々に抜いてもらいました。
自力でトイレに行き、体も清めて、自分のことは自分でやるからと親を追い出して、やっと落ち着いて一人になれました。
そんな風に、研究室の仲間の事を考える余裕もなく、死んでしまった回谷に気持ちを割く余裕すら無い田端には、あの時間は貴重なものだったのかもしれません。
あの時間がなければ死に逝く彼女のことをあんなに考えることはなかったでしょうから。
今は、談話室に一人。]
……………………間違ってなきゃ、良いんだけど。
[懸念が一つありました。
けどその懸念は田端にはどうしようもないかもしれません。
それならそれで、仕方がないことかもしれないし、それを止めてやるほどの情熱も友情もありません。
特に今は、体も心も疲れていましたから。
テレビで事故のニュースを眺めながら、ぼんやりとソファに座っていました。]**
(14) nasca 2023/08/06(Sun) 06時半頃