「るくあが、妬ましい――?」
彼女の周囲にばかり嫉妬を抱いた自分からは、想像もつかない感情に目から鱗。それは、先程一方的に噛みついた坂理にも感じていたことだった。ぽかんと口を開けて阿呆面をたっぷり29秒は晒してから、込み上げてくる笑いに肩を震わせる。
「きっとそれが、卯木さんみたいな反応が、
るくあの求めたものなのかも知れません。
……薄情な美形のどこがいいんだって、
アイツの態度に不満だらけだったけど、
そうか――そういうことか。」
得心がいったと、何度も頷いて前髪を掻きあげる。自分が知らないふりを決め込んでいた、るくあの思い。想像に過ぎないが、当たらずとも遠からずなのでは、と卯木に感謝した。
「るくあの魅力が通用しない相手の方が、
信頼できる……安心して話せる。
そう考えても不思議じゃないですね。
卯木さんからボクは、
るくあの信奉者、――に見えますか?」
それが是なら、るくあが自分をフって遠ざけようとした原因の一端を解き明かせた気がした。『殺された』ことに対する推察は揺らげど、自分にとってはそれ以上の収穫だ。*
(12) 2023/11/21(Tue) 00時頃