― 船内エンジンルーム ―
[ギアやらタービンやら燃料タンクの敷き詰められた、隙間のないエンジンルーム。推進力を確保するために唸り、回転し、ぶつかり合うそれらの隙間から、グローブに包まれた両手が生える]
よっこい……
せっ!
[地球人の拳ふたつ分ほどの隙間。シャボン玉のような軟性ヘルメットを器用に押し込んで通り抜ける男の頭部はぐにゃりと歪み、通り抜けるや元の形へと復元される。いや、頭部どころか髪の毛一本から足の爪先まで、その形は流体のように変化した。
ふと、見上げた視界に小さく白いクルーの姿が映り込む。役目を終えて冷え切ったパイプの上を、颯爽と駆けていく。]
……ったく、いいご身分だなぁ。アシ公。
[嫌味たらしい言葉も声色に非難の色はなく。今しがた通り抜けたばかりのパイプの上に腰掛けて、工具を引き上げる。着陸までに一通り、探索器具と機体のチェックを終わらるのが保安技師であるナユタの役目だった]
(6) 2021/11/05(Fri) 01時頃